女優にとって、年齢を重ねていくことは男性俳優とはまた違う壁だ。ある瞬間、万人の恋人から誰かの妻、母親と呼ばれるようになる。女優をうまく活用した作品が少ないためだ。

 チェ・ジウ(40)にもその壁はある瞬間やってきた。「ジウ姫」の愛称で、韓流スターとして君臨していた彼女は、ある瞬間から誰かの母親や妻役を演じるようになった。抵抗心がなかったはずがない。それでも、流れゆく歳月を止められる人はいない。チェ・ジウはその代わり、愛する母親になった。

 チェ・ジウはドラマ『2度目の二十歳』(tvN)で、大学生の息子を持つ母親として登場したが、またも新しい恋と出会った。そんな彼女が、映画では古めかしい愛を交わす。オムニバス映画『Like for Likes』(2月17日公開)に、40歳を前に困難な状況に陥った客室乗務員として出演。会社では上司にへつらう後輩たちに苦しめられ、その会社をやめて事業を始めようとしたが詐欺に遭い、住む家もなくなり、不本意ながら自分の家の借家人とルームシェアをすることになる。

 条件の良い年下の医師に夢中になるが、あれこれ世話を焼いてくれる借家人が嫌いではない。チェ・ジウは『Like for Likes』で、相手役のキム・ジュヒョクと現実的なラブストーリーを展開する。相変わらずラブストーリーではあるが、ファンタジーではなく、現実的な物語だ。チェ・ジウはそのように壁を乗り越えている。

-映画『アクトレス』を除くと、10年ぶりの映画出演となるが。
 ドラマにだけ出演しようというわけではなかったけれど、気が付くとそうなっていた。久しぶりに映画に出演したので、楽しかった。単独主演映画なら、負担にもなりうるが、オムニバスだったので、負担も少なかった。何よりシナリオが面白かった。ロマンチック・コメディーが好きでもあるし。ドラマでは濃厚なラブストーリーにたくさん出演してきたので、映画では違う姿も見せたかった。

-これまでドラマでは、女神のようなイメージが強かったが、『Like for Likes』では飾らない気さくな姿が印象的だ。
 映画での姿は、実際の自分と近い。そのように自然に役になりきれるよう相手役のキム・ジュヒョクさんがすごく助けてくれた。オムニバスなので、ずっと撮影しているわけではなく、とびとびに撮影したが、キム・ジュヒョクさんが現場の雰囲気を盛り上げてくれた。キム・ジュヒョクさんが毎回アドリブを入れてきたが、それをわたしが自然に受け入れられる雰囲気だった。例えば、ジュヒョクさんがキスをしようとして、「明日しよう」と言うシーンは、アドリブだったけれど、それを襲い掛かるようにわたしからキスをした。そのようなシーンが多かった。

-年を重ねるにつれ、ある瞬間から誰かの母親や妻といった役が多くなるが、抵抗感はなかったか。
 抵抗感はもちろんある。それは男性俳優も女優も同じこと。ただし、女優はより外見を磨く努力をしなければいけないという点が違いというか。かつては、皮膚科に行っていなかったが、最近は行くようになったし、より気を使わなければいけない。

 70歳になっても、ラブストーリーに出演したいのが人の心というもの。でも、年齢とともに生じる変化を自然に受け入れることが重要だと思っている。

-『Like for Likes』の仮題は、『ハッピー・フェイスブック』だった。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて恋愛をし、関心を持たせるようにする物語だが、実際にチェ・ジウさんはSNSをしていない。
 それは世代や人によって違うと思う。ユ・アインはSNSをコミュニケーションツールとして考えているが、キム・ジュヒョクさんはSNSを人生の浪費だと思っている。わたしはその中間ぐらい。見るだけ。マメな性格ではないので、写真を撮るのもうまくできないし、何か波紋を広げないか怖くもある。最近はSNSにアップしたことが記事になったりもするので。

-映画では年下男の心をつかむため、自分を飾る。そういう意味では俳優、特に女優の人生とも似ている気もするが。
 心構えの問題だと思う。以前はキレイな姿だけを見せ、良い人でなければいけないという思いが確かにあった。そのような時代的雰囲気もあったし。だから、でしゃばるのはやめようとも思った。しようか、しまいか迷ったら、ただじっとしていようという選択をした。ところが、ある瞬間から楽になった。人に接することも、撮影現場でも、年を重ねることも、自分で自然に受け入れるようになった気がする。今は皮膚科にも行かなければいけないが、それもまた楽しく受け入れている。

--所属事務所YGエンターテインメントとの契約期間が終わるが、更新をするのか。
 一度縁を結んだら、長く付き合うほう。マネジャーも10年以上一緒に仕事をしているし、スタイリストとも20年目になる。

-次の作品はまたラブストーリーになるのか。
 母親役、そして不倫をする役のオファーもきている(笑)。状況がわたしを作っていると思う。わたしがどのように変化していくのか、自分でも楽しみだ。

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