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闇に包まれた水原が美しいワケ
水原は闇に包まれてこそ真価を発揮する街だ。昼に見た水原の姿がすべてだと思ったら大間違い。夜になると色を変える水原の夜景スポット。そのウットリするような景色を目に焼き付けようと、日が暮れて闇に包まれる時間帯に水原を訪れた。
水原の夜景を鑑賞するため夕暮れ時にやって来た「華城行宮」。昼間見た行宮はひっそり寂しい雰囲気だったが、夜見た行宮の印象は全く違っていた。堅く閉ざされた門のライトアップは周囲を明るく照らしていた。
華城行宮のほかに夜景スポットとして知られているのが「華虹門」や「西将台」などだ。華城の北側の水門である華虹門の美しさは、昼間もいいが、夜に頂点に達する。花崗岩でできたアーチ型の橋を越え、輝くライトはまるで7つの星のように見える。西将台も華城の展望台だけあって水原の夜景を一望できる。
次に「光教湖水公園」にやって来た。この地にはこのほど光教新都市が造成され、都会の新たな憩いのスペースとしてクローズアップされている。「ここからは歩いて入ってください」。タクシーの運転手さんはこれ以上、奥に入れないと言って駐車場入口に降ろしてくれた。前日に雪がたくさん降ったため、あたりは一面の雪景色だった。駐車場から遠川湖に至る道はずっと真っ白で、一歩一歩気を付けながら雪を踏みしめた。
遠川湖の方に歩いていって堤防に上がると、湖の全景が視界に飛び込んできた。湖に沿って続く水辺遊歩道(アーバンレビ)は時間帯によって青・白・オレンジ・紫などさまざまにライトの色が変わった。光教新都市から漏れてきたライトが水面(みなも)に映り、素晴らしい夜景を織りなしていた。
光教湖水公園の夜景がきれいだからといって、夜にしか来ないのももったいない。この公園は家族や友人、恋人と一緒に日常を抜け出し、ゆっくり休んだり充電したりできる場としても利用されている。特に、公園内のファミリーキャンプ場はキャンプ好きな人々が気軽に来られる距離なので、思い出を作るにはうってつけだ。
快適で居心地の良いキャンピングカーにはトイレ、洗面台、シャワーブースもあり、くつろいで宿泊できる。長時間運転して遠くのリゾート地まで行かなくても、近くで楽しめる都会の「癒しの場」だろう。
夜景でムードはバッチリ。次はおいしい食べ物があればOK。水原名物と言えば全国的に有名な「カルビ」だ。朝鮮時代に牛はむやみに食用にできなかったが、水原には華城が建設されたため、例外的に牛を飼って食用にすることが許可されていた。現在、水原カルビが有名になったのも、そうした背景から自然と牛肉を使った料理が発展したおかげだろう。ほかの地域とは「次元が違う」水原カルビの味を楽しもうと肉を注文した。
肉が出てくる前に、小皿類がテーブルいっぱいに並べられるのを見ると、まるで韓国料理の定食屋にでも来ているかのような気になる。水原カルビを食べた後もリッチな気分が続き、気持ちよくもてなしてもらったように感じるのは、このためだ。さらに、水原のカルビ屋ではたいていヤンニョム・ケジャン(生のワタリガニを辛いタレに漬けたもの)が付いてくるので、いっそう食欲をそそる。
ほかの料理に気を取られている間に、赤身と脂身がうまい具合に入っているカルビが鉄板に載せられた。水原カルビはカルビ肉の幅が10センチから13センチと大きい。しょうゆや化学調味料を使わず、塩で味付けするのが特徴だ。塩と砂糖を1:5の割合で入れ、ごま油、コショウ、ニンニク、ネギで生臭さを取る。そのためかむほどに焼けた肉の香ばしさが口に残り、また食べたくなる。
それぞれの店で特色は異なるが、水原カルビのほとんどが肉と骨を切り分けた後、スライスしてくしの目状に切れ目を入れる。カルビ一つで約50回の切れ目を入れることもある。これだけで2時間以上かかるというのだから、おいしいものを作るにはやはり時間と真心が必要なようだ。