▲10月10日、ソウル・高尺スカイドームで行われたアイドルグループEXO(小さい写真)の公演に、10-20代女性およそ2万2000人が詰め掛けた。近所の住民は「20年以上暮らしているが、この町にこんなに多くの女性が集まったのは初めて」と話し驚いていた。EXOはこの日1日だけで20億ウォンを売り上げた。/スポーツ朝鮮

 アイドル歌手のコンサートは一種の「株主総会」だ。ファンはここで、自分の愛とお金を投資した歌手への忠誠を確認し、歌手はこれまで積み重ねてきた成果を総動員したショーを繰り広げる。10月10日、ソウル市九老区の高尺スカイドームで、人気アイドルグループEXOのコンサートが開催された。事実上、ファンミーティングのようなこのコンサートは、韓国のアイドル産業と文化の現状を推し量れる場だった。

■アイドルを通じてコミュニケーションを図る10代

 「ここで戦争でも起きたのか」

 10年前から高尺スカイドームの近くに住んでいるというキム・ガンホ氏(45)が、近くの大手スーパーの女子トイレに行列ができているのを見て尋ねた。そのうち数人の女性は男子トイレに駆け込んだ。高尺スカイドーム一帯に10-20代の女性2万2000人が一挙に押し寄せ、周りのコンビニ、軽食店などが特需を味わった。

 EXOのコンサートは、韓国初のドーム球場である高尺スカイドームで行われた初イベントだった。収容人数2万人以上の同所を埋め尽くすことができるアイドルは、EXOやBIGBANGくらいだ。チケットは前売り開始1秒で完売となり、闇チケット価格は最高50万ウォン(約5万円)まで跳ね上がり、プレミアが付いた。EXOの所属事務所SMエンターテインメント(以下、SM)は闇チケットを防ぐため、チケット料金を5万5000ウォン(約5500円)に統一し座席を無作為に割り当てたが、根絶するのは難しかった。会場を訪れたキム・ソミンさん(16)は「ファンの間で、公演に行った回数によってランクが分かれる」と話した。

 会場を訪れたファンは、来られなかったファンにソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じてコンサートの状況をリアルタイムで中継する。この日もEXOのトークやセットリストなどがツイッターのリアルタイムの検索ワードランキングにランクインした。音楽評論家のキム作家は「アイドルのファンは、今や10-20代にとってスマートフォン(多機能携帯電話端末)と同様に不可欠なサブカルチャー。同じアイドルを好きな人同士、そのアイドルを通じてコミュニケーションを図り、アイデンティティーを形成する」と話した。EXOのファンの間で知られる、別名「EXO用語辞典」には約80のワードがある。ファン同士、これをどのくらい知っているかで「ファン心」を試す。

■デビューに5-6億ウォン、人気が出なければ赤字10億ウォン以上

 このようなファン層がアイドル産業を支える。この日の公演開始前、高尺スカイドーム周辺にはペンライトを売る人がいなかった。SMが会場で公式ペンライトを販売したからだ。イ・ヒミンさん(18)は「公演で違うものを振っていたら裏切り者」と話した。観客約2万2000人の多くがこのペンライトを購入した。それだけでなく、SMが制作したEXOのポストカードなど、関連グッズ1万5000点が完売。チケット収入まで合わせると、SMはこの日の公演だけでおよそ20億ウォン(約2億円)を売り上げた。

 成功したアイドルは全てがお金になる。商品を売るだけではない。メンバーと握手することができる握手会は、アルバムを購入した人だけが応募できるし、ファンミーティングもチケットを購入しなければならない。企画会社は制作段階からさまざまな収益を念頭に置く。アイドル一人をデビューさせるのに大金を要するからだ。ハナ金融投資のイ・ギフン研究員は最近、報告書で「デビューに少なくとも5-6億ウォン(約5000-6000万円)=練習期間3年、メンバー5人基準=掛かる」と分析。興国証券のチェ・ヨンジェ研究員も、5人組アイドルがデビューし、6週間活動する費用だけでおよそ2億ウォン(約2000万円)要すると分析した。

 イ・ギフン研究員は「男性アイドルの方がファン層の規模が大きく、アルバム購入や公演観覧につながるので、(ガールズグループより)収益率がいい。特にSMは、どんなレッスン生でも『SM化』させるトレーニングシステムでコンスタントに新しい男性アイドルをデビューさせ、安定的なロードマップを描いている」と評価した。

ホーム TOP