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自然と文化を楽しめる散歩コース /鎮海
道を歩くこと。それは、ただ単にある空間から別の空間への移動ではなく、何かを学ぶ過程になり得る。サンティアゴ巡礼の道や済州オルレキル(トレッキングコース)など、有名な所ばかりではない。近所の裏路地には幼いころ遊んだ思い出を、裏山の散策路では自然がくれる余裕を感じることができる。
今回は、慶尚南道昌原市鎮海区で散歩するのにピッタリのコースを紹介しよう。自然を体験できる農業テーマパーク、詩人・金達鎮(キム・ダルジン)の資料が保管されている文学館、1980年代の風景が再現された所沙洞などがあり、多くのカップルや家族連れが訪れる。特にここは、昌原市が指定した四つの文学探訪コースのうち一つで、ささいな風景のあちこちに有益な歴史や情報が染み込んでいる。
散歩のスタートは農業技術センターから。「農業技術センターに見どころなどあるのか」と思う人もいるだろう。しかし、ここは平日、週末を問わず、多くの子どもたちが見学に訪れている。
今年9月には農業テーマパークができた。農業テーマパークでつる植物のトンネルを通り過ぎると、およそ300坪(約990平方メートル)の植物園が広がっている。よく見掛ける植物も、ここでは異色の風景をなしている。植物園の中央には天井につくほどのサボテンがあり、カボチャの花数十個が咲き乱れ、まるでシャンデリアのようだ。植物園のあちこちにマンゴーの木があり、よく実ったマンゴーを取って食べたくなる。
農業技術センターのハイライトは昌原農業文化広報館。五つの展示室におよそ230点の農業関連展示物があり、昌原の特産物や各時期の農作業について手軽に楽しく学ぶことができる。特に桜展示室には、軍港祭が開催される鎮海エリアの特徴を生かし、高さ2メートルの人工の桜の木があり、多くの見物客がここで写真を撮っている。
農業技術センターからピョンバル村を通り、1時間ほど歩くと、次の目的地である所沙洞にたどり着く。ここは、昌原文化探訪第4コースに含まれており、詩人・金達鎮が生まれ育ったところだ。町の中央には金達鎮文学館があり、金達鎮の人生を垣間見ることができる。
文学館の入り口には金達鎮の銅像と庭園があり、地域の住民たちがどれほど金達鎮を誇らしく思っているか感じられる。文学館には金達鎮の一代記や著書、写真などが展示されている。
文学館の前には金達鎮の生家がある。ここには母屋や居間などわら屋が数棟あり、その横にはたくさんの甕が並んでいる。生家のあちこちには子どもたちが描いた金達鎮の肖像画や詩画が展示されており、まるで今も金達鎮が生きていて孫たちの絵を壁に飾っているかのようだ。庭にある樹齢100年以上の柿の木が、この家の歴史を実感させる。
文学館を出て、路地の角を曲がると、昔の商店を再現した通りがある。ここには幼いころ皆で集まって聞いたラジオや昔の映画のポスターなどがあふれている。路地の入り口に書かれている外来語表記も懐かしい。
この通りに分かれ道はなく、真っ直ぐな一本道に沿って歩いていくと、さまざまな骨董品が集められた金氏博物館が目に入ってくる。館内には古い蓄音機やテレビなど、数十年前の品物がたくさんあり、10年ほど前の公衆電話くらいなら新しく感じるほどだ。