慶尚南道密陽市と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、映画『シークレット・サンシャイン』のロケ地ということだろう。それほど映画の影響が大きかった。もちろん、密陽を旅する人の多くが映画のロケ地を訪ねる。しかし、密陽の見どころはそれだけではない。密陽は3大アリラン(韓国民謡)の一つである「密陽アリラン」発祥の地で、全国的に知られる表忠寺、3大楼閣の一つである「嶺南楼」がある。

 訪れた都市を最も手軽に理解する手段の一つが「シティーツアー」。もちろん、密陽にもある。シティーツアーバスに乗って、密陽の主な観光スポットをめぐってみよう。

密陽シティーツアーバスに乗れば、主な観光スポットを3000ウォン(約300円)でめぐることができる。

 密陽シティーツアーバスは毎週土曜日午前10時、密陽駅の「密陽総合観光案内所」前から出発する。参考までに、同バスを利用するためには、密陽の観光サイトで予約しなければならない。現地で乗車券を購入することも可能だが、座席(40席)が埋まってしまったら乗れないので、前もって予約するのがよい。また、シティーツアーバスは季節ごとに「春春」(4月4日から6月27日まで)、「真夏の休息」(7月4日から8月29日まで)、「文化の秋」(9月5日から19日まで、10月17日から31日まで)、「豊かな秋」(10月3日、10月10日)のコースに分かれている。

 案内所前でガイドに名前を伝え、チェックが終わると、参加者には首飾りが配られる。これは、入場料が必要な場所で、フリーパスとしての役割を果たす。なお、後で返却しなければならないため、なくさないようにしよう。

密陽シティーツアーバスでは人数チェック後、首飾り(写真右上)が配られる。

 密陽駅を出発したバスは、最初の観光地である表忠寺に向かう。ここは、密陽中心部から離れているため、20分ほどかかる。文化観光解説士の案内に耳を傾けていると、ほどなくして到着する。

■表忠寺

 表忠寺に到着すると、担当者が出てきて案内してくれる。説明によると、表忠寺の名前は、「国への忠誠を示す」という意味だという。ここは、新羅時代と高麗時代に王のそばで国事について助言していた僧侶を輩出した場所で、高僧・一然が「三国遺事」を書いたといわれる。

 そのほかにも、表忠寺・大雄殿には宝珠(貴重な珠)など独特な造形物がある。これは、一般的な寺刹では見られないもので、4大国師が表忠寺にいたことを示すものだ。

新羅時代と高麗時代、王のそばで国事について助言していた僧侶を輩出した場所で、一然が「三国遺事」を書いたといわれる表忠寺。

■蜜陽市立博物館

 次に向かうのは密陽市立博物館。ここは、慶尚南道で最も古い博物館で、密陽地域の歴史や文化を幅広く展示している。博物館1階では密陽の歴史と文化、そして嶺南楼、ホバクソ渓谷などの名所を紹介する歴史館が訪問客を迎える。
 2階では、さまざまな木版の制作や印刷過程を詳しく見ることができる。特に、2階の展示室の端にある拓本体験スペースは訪問客たちに人気だ。そのほか、密陽の独立運動家を展示した独立運動館も見どころの一つだ。

密陽市立博物館では、密陽の歴史はもちろん、文化、拓本体験などを楽しめる。また、恐竜の展示も見られる。

■密陽官衙

 3番目の観光スポットは密陽官衙。ここは邑事務所(役場)、市庁などとして使用されていた場所で、2010年に復元された。官衙内部では政庁や別間、樹齢300年を超えるエンジュの木2本が観光客を迎える。

 官衙中央にある政庁には使道のマネキンが座っており、両脇に置かれたいすに座って記念写真を撮ることが可能。また、そこからは密陽市内の風景を眺めることができる。

密陽官衙で使道の両脇に座ると、密陽市内の風景が目に入ってくる。

■嶺南楼

 最後に訪れるのは嶺南楼。ここは晋州の矗石楼、平壌の浮碧楼とともに、3大楼閣に挙げられる。嶺南楼に上がると、密陽江を眺めることができる。残念ながら、現在は復元中のため、嶺南楼に上がることはできない。工事が終了するのは10月末の予定。

 なお、シティーツアーは10月に特別なコースを設けている。それは、ナツメ狩り体験。密陽はナツメとリンゴが有名だ。10月はナツメのシーズンなので、シティーツアーを楽しみながらナツメ狩りも体験でき、家族連れにピッタリと言えるだろう。

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