▲恋愛相手を探す『ソムナムソムニョ』(左)、バーチャル結婚を素材にした『私たち結婚しました』(中央)、育児バラエティー「スーパーマンが帰ってきた」。恋愛、結婚、出産を諦めた三放世代に代理満足を与えるバラエティー番組だ。/写真提供=SBS・MBC・KBS

「日常バラエティー」を通じて代理満足する三放世代
「不況、就職難で大変な20・30代…テレビの中の理想的な生活を通じて欲求を満たす」

 不況でも芸能人は忙しい。最近、芸能人はバラエティー番組で一般人のように恋愛、結婚、料理、子育てに奔走している。不況のせいで恋愛や結婚、出産を先延ばしにしている若者たちに代わって、芸能人が彼らの欲求を満たしているようなものだ。

■恋愛の末に結婚し、子どもを育てるテレビ

 『私たち結婚しました』(MBC)では、芸能人がカップルとなり、まるで新婚夫婦のように生活する。芸能人がバーチャル結婚を通じて新婚生活を体験する姿を見せるのが全ての番組にもかかわらず、フォーマットは何ら変わらぬまま8年目に突入している。テレビ朝鮮では、パク・スホンとヤン・ジュニョクが脱北女性たちとバーチャル夫婦として登場する『愛情統一 南男北女』が人気を博し、出演者を変えシーズン2を準備している。SBSは今年4月から、20-40代の独身芸能人が登場し、一般人とデートをしながら結婚または恋愛相手を探す『ソムナムソムニョ』を放送中だ。

 昨年から人気の育児バラエティーは、今も勢いが止まらない。俳優ソン・イルグクの三つ子の息子など「キッズスター」を生み出したバラエティー番組『ハッピーサンデー』(KBS第2)の人気コーナー「スーパーマンが帰ってきた」は6カ月以上、地上波・ケーブルテレビを含めて視聴率1位。SBSも同じコンセプトの『オー! マイ・ベイビー』を放送中。最近の育児バラエティーは、中年の男性芸能人が思春期の娘と一緒に過ごす『パパをお願い』(SBS)や、芸能人の妊娠や出産過程まで描く『ママの誕生』(KBS第1)まで、幅が広がっている。

■「三放世代」代理満足の役割

 皮肉なのは、恋愛や結婚、育児を素材にしたバラエティー番組の主な視聴層が、いわゆる「三放世代」と呼ばれる20・30代前半という点だ。『私たち結婚しました』や『ソムナムソムニョ』は視聴率2-4%(ニールセンコリア調べ)程度だが、20・30代の固定層が厚いという評価を受けている。『愛情統一 南男北女』はIPTV(olleh TV調べ)で、月別の売り上げランキング30位以内にコンスタントに入っている。不況や就職難で恋愛、結婚、出産をあきらめるという意味から三放世代と呼ばれる若者層が、テレビの中のバーチャル結婚や育児を見ながら、代理満足しているという分析が出ている。

 今年4月、韓国放送広告振興公社(KOBACO)が調査した「テレビ番組(ドラマ、バラエティー、時事教養含む)熱中度」調査で、20代の視聴者が最も夢中で見ている番組は「スーパーマンが帰ってきた」だった。この番組の掲示板には「三つ子が自分の子どものようにかわいい」「子どもたちのキュートな姿を見て、癒されている」という内容の書き込みが相次いでいる。

 高麗大学社会学科のイ・ミョンジン教授は「慢性化した青年失業問題のせいで、青年層が現実で欲求を満たすのが難しい時代。バラエティー番組は理想の生活を見せるツールとして最適なため、現実に挫折した青年層がさらに夢中になる」と話した。高級な食材を調理して食べる姿を見せるグルメ番組、料理番組の流行や、『花より』シリーズのように海外に出掛ける旅行バラエティー番組の流行も、同じ流れの中にあるとみることができる。

 大衆文化評論家チョン・ソクヒ氏は「日本でも1990年代、長期不況にあえいでいたとき、育児やお見合い番組が相次いで登場した。結婚や育児の機会を事実上、剥奪された若い層であればあるほど、結婚・育児を素材にしたバラエティーが与える幻想に夢中になるという点で、切なさすら感じさせる現象」と述べた。

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