20歳の春、キム・ウビンはモデル学科の新入生だった。恋をするどころかオーディションを受ける準備で毎日忙しかった。身長が179センチに達した中学1年のときから抱いてきた夢だから、余計に切実だった。どの雑誌を見ても出ている人気モデルのキム・ヨングァンやイ・スヒョクのポーズをまね、彼らのショーを見て決意を固めた。「僕もあんなカッコいいモデルになるんだ」と。

 俳優キム・ウビン(25)は映画『二十歳』(イ・ビョンホン監督)の主人公チホとは違っていた。早々に目標を立て、それにまい進してきた青春時代だったと言うべきか。3月27日、ソウル市鍾路区で会ったこの若手俳優は品行方正で落ち着いていた。そこで意地悪な質問をしてみた。「『ケツに××こすりつけたい』というセリフ、板に付いてましたね?」と。

 「(ため息ついて)答えが出てこないセリフでした。普通は(撮影)現場に行くとき5-6パターンくらいの言い方を考えていくんですが、あのセリフは10パターンくらい用意しました。ちょっと変態風とか、ちょっと純粋っぽくとか、ちょっといたずらっぽくとか。カメラを回しておいて監督に全部見てもらいました。いいのを選んでくださいって。それで決まったのがあの恥知らずパターンでした」

 『二十歳』は、人気だけはあるチホ(キム・ウビン)、生活力だけはあるドンウ(2PMジュノ)、勉強だけはできるギョンジェ(カン・ハヌル)という高校時代の同級生3人組が、20歳のときにどう生きているかというコメディーだ。15歳観覧可だが、性的なセリフを考えると青少年観覧不可に近い。キム・ウビンは「大げさな表現、普段使わない言葉が多くて苦労しましたが、これまでの出演作の中で、オーダーメードのように一番気持ちが楽でした」と語った。

 「台本をメールでもらってスマートフォン(多機能携帯電話端末)で読んで、すぐに電話しました。『チホ役、やります』って。逃したら後悔すると思いました。チホは僕が経験した20歳とは違って、荒れ狂う馬みたいでしたが共感できたし、観客にその感情を伝えたかったんです」

 映画は封切りから5日目で観客100万人を動員した。これまでに出演した『チング 永遠の絆(きずな)』や『技術者たち』とは比べものにならないほど快調な滑り出しだ。「これまでの強い印象とは違う役なのでヒヤヒヤしましたが『笑い通しだった』『キム・ウビンがぶっ壊れた』といった評価を見て安心しました。おととい、(同じくモデル出身の人気俳優)チャ・スンウォン先輩が電話をくれました。自分のことのようにすごく喜んでくださって。『作品選びも良かった。新たな姿が見られてうれしかった』と言ってくださいました」

 「基本はあるが正解はない」というのがモデルと俳優の共通点であり、魅力だという。「モデルは『前に歩かなければならない』『姿勢を正しくしなければならない』というのが基本ですが、悩んだり努力したりして結果として出来上がったものが変わることもあるし、正解は存在しません。モデルは映像ではなく写真に収まるもので、瞬時に感情のピークを表現しなければならないので、そこは俳優より少し難しいかもしれません」

 キム・ウビンは映画『二十歳』の中で限りなく軽い。「同じ青春物だが、以前チョン・ウソンやイ・ジョンジェが主演したB級チンピラ映画とは違い、日常の中にあってはるかに現実的」(映画評論家カン・ユジョン氏)と評価されているように、キム・ウビンは軽さを独自のスタイルとして完成させた。本人は「20歳が持つ純粋で、ちょっと分かりにくくて、堂々とした気持ちを引き出そうと苦労しました」と語った。

 青春時代は過ぎ去っていく。キム・ウビンもいつか30代、そして40代になるだろう。「もっといろいろ経験していれば」と後悔し「映画人生が100なら、今はまだ3までしか来ていない」という俳優に、20年後のことを考えたことがあるか聞いてみた。「そのときも俳優だったらいいですね。今のように想像して心配し、安住していなければと思います。自分が出ている映画やドラマは決まり悪くてあまり見られません。そのころに『二十歳』をまた見たら、どれだけ変な感じがすることでしょうか」

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