「優しい女」と「悪い女」のどっちかしかいないのはお断り。ただ、優しくないだけ。同時間帯視聴率1位に立った新水木ドラマ『優しくない女たち』(KBS第2)のことだ。世間の荒波に傷付いた祖母・母・娘の3代(キム・ヘジャ、ト・ジウォン、チェ・シラ、イ・ハナ)は「優しかったら面白くない」という現実のセオリーを前向きに受け入れている。

 反省はない。恨みつらみは我慢しない。この女たちには憎むべき明確な対象がある。キム・ヘジャは夫を奪った不倫女チャン・ミヒを自分の家に半強制的に泊め、心理的プレッシャーを与える。チェ・シラは自分を泥棒に仕立てて退学させた高校の担任教師ソ・イスクを探し出し、恥をかかせる。

 巧妙な伏線も、いくつも張ってある。数十年前にチャン・ミヒと一緒に電車に乗って行方不明になったキム・ヘジャの夫(イ・スンジェ)が記憶喪失になって保護所で発見されたというミステリーや、レイフ・ギャレット、ザ・ビーチ・ボーイズ、ガンズ・アンド・ローゼズといった1980年代の米国人気歌手の曲が郷愁をそそるという演出もある。

 ストーリーの急展開はなく、視聴者が引きつけられるかどうかは俳優の演技にかかっている。美しく見られるのをすっかりあきらめたかのようなチリチリパーマで、賭博場に警察が入ってくると無造作に金をポケットに押し込み、窓の外に飛び降りるチェ・シラは圧巻だ。泣きながらボロボロのサンダルを引きずり、いじめている生徒たちに出くわすと「悪魔の申し子め」と怒鳴ったり、娘が大学の講師をクビになると教授室に押しかけ「一度だけ許して」と土下座したりと、つかみ所のないキャラクターは妙に胸に響くものがある。

 そしてもう一人、キム・ヘジャもすごい。著名な料理研究家(つい、キム・ヘジャが宣伝しているコンビニ弁当を思い出してしまう)だが、夫の浮気でひどく傷付いており、内心何を考えているか分からない人物(キム・ヘジャ主演映画『母なる証明』を思い出してしまう)だ。一生の仇(かたき)と思っていたチャン・ミヒに初めて会い、かろうじて保ってきた尊厳を瞬時にして崩壊させる。みぞおちにキックを食らわし「醜い私の顔を見せるのがせめてもの償いと思うと心が楽になる」と言うチャン・ミヒに「じゃあ何でBBクリームを塗るのよ」と皮肉を言う様子は、長寿ドラマ『田園日記』に出ていた、あの人のいいキム・ヘジャではない。

 独特の発音と声量で「(BBクリームなんて)塗ってないわよ」とほおに手を当てるチャン・ミヒも同じだ。30年以上一貫した演技をしてきたチャン・ミヒは、今回も彼女ならではの演技でムカつく一面と清楚な一面を見せる。

 5話までを見ると、タイトルと登場人物のあんばいが成功しているように見えるが、最後には「優しくない女たち」が一つの修飾語に終わってしまうようで不吉な予感もする。悪役を容赦なくたたいて「悪い奴ら」になるかもしれないし、頭の中が一日中ほとんど復讐(ふくしゅう)でいっぱいになる朝のドラマのようになるかもしれないからだ。結局、地上波ドラマらしくドタバタがあった後、和解に向かってひた走っていくのは見え見えだ。

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