韓国映画界が久しぶりに盛り上がっている。ヨ・ジングのためだ。ヨ・ジングが映画『俺の心臓を撃て』(ムン・ジェヨン監督)を引っさげ観客の前に帰ってきた。9カ月ぶりだ。その間、かなり成長した。もう17歳となり、年上の女性ファンも「ジング・オッパ(年上の男性や恋人などに対する呼び方)」と呼びたがっているほどだ。女優たちからラブコールが相次いでいるのにはそれなりの理由がある。

 ヨ・ジングが今回出演した『俺の心臓を撃て』は、脚本家チョン・ユジョンの同名小説を映画化したもの。ヨ・ジングは精神的な傷を負い、現実から逃げている社会不適合者スミョン役を演じた。ヨ・ジングは自分の世界に閉じこもっているスミョンという人物が気になり、映画に出演することに。

 「映画は美しく面白い作品になったが、僕の演技が物足りない。前半に迷わなかったらもっとよくできたのに…」

 ヨ・ジングが残念がるのも分かる。スミョンは難しいキャラクターだった。精神病を患っている上、心に傷と悩みを抱えた、静かな人物だ。どうしても表現に限界がある。映画関係者も「快くスミョンを演じるという俳優がいなかった」と話していたほどだ。

 「スミョンの経験や感情は周囲で感じられないものなので、最初は小説に頼った。小説を参考にしているうちに、その枠の中に自分を閉じ込めて演じていた。『僕はうまくやっているのか』という疑問もわいた。監督ももそうだし、現場で『楽にやれ』と言われていたので、原作の負担を振り払うことができた。僕が感じたとおりにスミョンを表現することができた」

 原作に縛られていた不安感が、現実から抜け出せなかったスミョンを演じるのに役立ったことだろう。ヨ・ジングは「迷った」と言ったが、観客は気づかなかった。試行錯誤を重ねたが、スミョンのキャラクターに没頭した。10年間の経歴があったから可能だったことだ。

 ヨ・ジングは2005年に『サッド・ムービー』でデビュー、10年間にわたり多くの作品に出演してきた。子役ではなく成人の役を演じ始めたのは最近のこと。子役とは言っても、ドラマ『太陽を抱く月』(2012)、『ジャイアント』(2010)ではそれぞれキム・スヒョン、イ・ボムスら主人公を緊張させるほどの演技を見せた。そして映画『ファイ:悪魔に育てられた少年』(2013)で注目を集めた。

 子役たちは、自分がやりたいと言ったわけではないのに母親に手を引かれ撮影現場にやって来るケースが多いが、ヨ・ジングは10年以上俳優活動をしながら、一度も演技が嫌になったことがないという。

 「僕がテレビに出たくて始めたらしい。最初から演技を一生の仕事にしなければと考えていたわけではないが、いつからか、僕は演技に夢中になっていた。僕の性格上、飽きたと感じたら、すでに辞めていただろう。演じるのが難しいことはあっても、一度も嫌になったり、飽きたことはない」

 ヨ・ジングは愉快だった。わざと上品に振る舞うようなことはしなかった。子役や元子役たちは早くから社会を経験するためか、時に大げさなくらい大人びた態度を取ることがある。しかし、ヨ・ジングは演技に対しては真剣でも、演技以外のことでは同年代の若者たちと変わらない。

 『俺の心臓を撃て』の懇談会会場でもそんな面が見られた。映画にはヨ・ジングがたばこを吸う場面がある。原作でスミョンはヘビースモーカーだが、ヨ・ジングが喫煙する姿はぎこちない。経験がないからだ。未成年者であるヨ・ジングの喫煙演技は、取材陣の目を引いた。ある記者が喫煙シーンの演技はどうだったか尋ねると、ヨ・ジングは自分が至らなかったと思っているのか「来年はもっと練習する」と答え、笑いを誘った。

 ヨ・ジングは今年受験生となる。そのため、若者たちにメッセージを伝える『俺の心臓を撃て』がより胸に響いたという。

 「僕のセリフではないが『君は誰だ。ときどき気になっていたんだ。本当の君が誰なのか。隠れているやつではなく、適当に我慢するやつではなく、君の人生に相対するやつ。本当にいるのか』『君の時間はもう君のものだ』というものがある。スンミンがスミョンに言ったセリフだが、僕が言われているようだった。だからこの映画の撮影をしながら、特に楽しく、幸せだった気がする。映画を見る方たちも、僕と同じように感じてくれたらうれしい」

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