▲『家族同士どうして』の最終回で、主人公の家族たちが歌い踊るシーン。/写真提供=プレイス

 父親はチェ・ベクホの歌「道の上で」を歌った。「長い夢だったのか/あのはるかなる歳月は…/答えのない道を私一人寂しく歩いて来た」。歌を聞いていた家族たちの目からは涙があふれた。

 2月15日が最終回だったKBS第2の週末ドラマ『家族同士どうして』(視聴率43.1%、ニールセン・コリア調べ)は、父親という名の旧世代にあらためてスポットを当てたのが成功したと評価されている。いつも家族のことばかり考えてきた63歳の父親が、自分たちのことばかり考える子どもたちを相手取り「親不孝訴訟」を起こす。後に、父親が胃がんと闘っていることを知った子どもたちは「ざんげ」する。父親は七つの願い事を伝え、静かに目を閉じる。その最後の願いは「家族のど自慢」だった。

■父親にスポットを当てたドラマ

 男手一つで子どもを育てる「父子家庭」は、女性家族部(省に相当)の発表によると、1995年の17万2000世帯から2013年には38万5000世帯へと2倍に増えた。それでも父親はまだ近づきがたい存在だ。ドラマは家父長的な存在ではなく、30年間豆腐店を切り盛りしながら3兄弟を育ててきた母親のような父親像を描いている。保守的な印象が強い慶尚北道大邱・亀尾地域で最終回に最も高い地域視聴率(46.8%)をマーク、視聴者掲示板に「生前の父を思い出し、はばかりなく泣いてしまった」などの書き込みが数多く寄せられた。

 妻を亡くした男チャ・スンボンを演じた俳優ユ・ドングンは「ドラマ撮影中はずっと自分の父のことを思い出していた。父が元気だったころにどうして一度くらい酌をしなかったのだろうかとか、そうした小さな思いが次から次へと頭に浮かんできた」と語った。泣いたのは年配者たちだけではない。最終回の世代別視聴率で最も高かったのは主人公チャ・スンボンの子世代であり、自分自身も子を持つ40代女性(14%)や40代男性(11%)だった。

■極端な展開なくても視聴率は稼げる

 不倫や記憶喪失、どんでん返しや過激なストーリー展開ではなく、「優しいドラマ」を目指した作品だった。初回20%でスタートした視聴率は2月8日に43.3%でピークに達した。ストーリーは脚本家カン・ウンギョンの体験によるものだ。肺がんの宣告を受けてホスピスに入ったもののユーモアを失わなかった作家の父が、チャ・スンボンのモデルになった。

 大衆文化評論家のキム・ホンシク氏は「ほとんどの週末ドラマは極端なストーリー展開を武器に半強制的な視聴をあおる傾向が強かった。今回のドラマはそうした展開や要素がなく、人生と家族を振り返るという、あまり起伏のないストーリーで40%を上回った。週末ドラマの何たるかをあらためて問い直した作品だ」と語った。

■脚本執筆遅延なく深まった作品性

 このドラマの台本はほぼ2週間前に配られた。ドラマ制作現場で今や常識のようになってしまった「紙切れ数枚の台本」(脚本執筆が間に合わず、撮影直前に数ページずつ配られる台本)や徹夜撮影はなかった。ユ・ドングンは「台本を早くもらえたので、共演者たちの演技をじっくり見る余裕ができた。演技解釈や流れがとてもつかみやすかった」と語った。

 こうした撮影環境もあり、演技力には折り紙付きの共演者たちが「化学反応」を起こした。ドタバタやコミカルなラブシーンでドラマにメリハリをつけたキム・サンギョン&キム・ヒョンジュ、キム・ヨンゴン&ナ・ヨンヒ、キム・ジョンミン&キム・ジョンラン、キム・イル&キョン・ミリのカップルたちやヤン・ヒギョンだけでなく、パク・ヒョンシク、ナム・ジヒョン、ソ・ガンジュン、ユン・パクら新進俳優たちも名優たちの競演の中で大活躍した。カメラ監督らスタッフ陣は映像の密度を検討する時間が取れた。チーフプロデューサーのチョン・ソンヒョは「結局、良いドラマとは台本・出演者・演出の三拍子がうまくかみ合ってこそ生まれるもの」と語った。

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