水を得た魚のようだ。才能のある俳優でも、キャラクターがぴったりハマっていないと、サイズが合わない服を着ているように違和感がありぎこちない。映画『きょうの恋愛』のイ・スンギは、オーダーメードの服を着ているようだ。まさに「イ・スンギ=ジュンス」。ドラマ『僕の彼女は九尾狐<クミホ>』(2010年)以来、5年ぶりにロマンチック・コメディーへの出演を決めたのは、単純に面白いラブストーリーにひかれたからだという。

 「重めの作品は性格上、あまり合わないと思います。面白いものが好きなんですよ。ここ2-3年はコメディー要素が含まれた作品をやりたいと思っていたんですが、そんな中、『きょうの恋愛』の台本を手にすることになったです」

 イ・スンギが演じたのは、優しくて誠実な小学校教師ジュンス役。好感の持てるルックスで安定した職業、「ただの女友だち」ヒョヌ(ムン・チェウォン)を兄のように、または父親のように細やかに温かく見守る。ヒョヌの酒癖も全て受け入れ、家の掃除や片づけも代わりに行う。世界のどこにもいない優しい、ある意味愚かな男だ。このような男はほかにいないが、ヒョヌは「決定的にあなたには興奮できない」と言い、ジュンスを挫折させる。

 「『駆け引き』上手で堂々としているような悪い男たちがモテる世の中じゃないですか。女性をよく知らなくても、喜ばせようと気遣い、真の愛を求める男たちも多いはずなのに、そのような人たちが魅力的にアピールできる機会が少ないと思います。ジュンスは後者です。ジュンスを演じながら、多少愚かでも、愛というのはそういうものだと思いながら、楽しく撮影しました」

 イ・スンギの話を聞き、その恋愛観も気になった。イメージはとにかく優しそうだが、実際は男らしい一面があった。

 「ジュンスのように、知らないうちに意図せず相手を傷つけたことはあっても、計算づくで駆け引きをしたり、探ったりするタイプではありません。より多く愛している方がウィナーだと思い、そうしてきました」

 物語の後半で、ジュンスとヒョヌがエレベーターのドアを挟み感情を爆発させるシーンが登場する。エレベーターのドアが閉まり、クローズアップされるジュンスの顔は、印象的なシーンの一つだ。

 「今回の映画で一番気に入っているシーンです。個人的には『笑えるけれど切ない』シーンだと思っているんですが、自虐的に吐き出した言葉をヒョヌが聞き、そのせいで戸惑い、どうしていいのか分からなくなる、そんな複雑な感情が入り混じったシーンでした。撮影時はこれほどインパクトのあるシーンになるとは思わなかったんですが、かなり役になり切っていたんでしょう」

 イ・スンギは高校2年生だった2004年、デビュー曲「俺の女だから」で年上女性ファンの心をわしづかみにし、年下男人気の中心に立った。デビューのときから音楽だけでなくテレビ番組などでも活躍し、10年間トップの座を守ってきた。イ・スンギが出演したバラエティー番組『ハッピーサンデー』(KBS第2)の人気コーナー「1泊2日」は、一時視聴率が40%を超えた。ドラマ『華麗なる遺産』も40%を突破。まさに「視聴率男」といえる。『きょうの恋愛』は、デビューから約10年目にして初めて挑戦しスクリーンデビュー作。初映画ということで、いろいろと思うところがあったはずだ。失敗を知らなかっただけに、特に興行成績においては。

 「そのようなこと(興行成績)では悩みません。もし、興行成績を担保に映画に出演するのなら、この作品には出演しなかったでしょう。ロマンチック・コメディーというジャンル自体、パイが大きくないじゃないですか」

 イ・スンギは『きょうの恋愛』が観客動員数500万人を突破したら、高所恐怖症を乗り越え、ファンらとジャイロドロップ(絶叫マシーン)に乗るという公約を掲げた。ロマンチック・コメディーで500万人なら、体感指数は1000万人と変わらない。イ・スンギ効果が映画でも通じるのか、見守りたいところだ。

 イ・スンギの今年の願いも気になった。「1年単位で願いや計画を立てることはしません。毎月(笑)。だから今月は、『きょうの恋愛』がヒットし、怖くてもスカッとジャイロドロップに乗ることができたらうれしいです。イ・スンギは今まで成績が悪くなかったけれど、映画は大丈夫だろうか、という視線が向けられることへの悩みや不安を解消することはできないと思います。今回の映画を通じて証明することができれば、今後も映画に出られるのではないでしょうか」

ホーム TOP