▲結婚について聞いたとき、イ・ジョンジェは「結婚を考えていないわけではないけれど…。一人でいる時間が長くなってきたようだ。最近は一人でいるのが楽だし、それを楽しんでいる」と話した。/写真提供=NEW

 映画『ビッグマッチ』(11月26日公開)は、観客の頭ではなく、運動神経を刺激する。主演俳優イ・ジョンジェ(41)は112分間にわたり、休む間もなく拳や足を突き出し、走り、体を投げ打つ。一人称視点のアクションゲームのように緻密に構成された画面のおかげで、観客も一緒に全力疾走している感じを受ける「娯楽アクション総合ギフトセット」(チェ・ホ監督)だ。このような映画に対し、叙事やキャラクターについてあれこれ言うのは野暮ったい。ファストフードのハンバーガーには、迅速で手際の良い快感という美徳があり、『ビッグマッチ』はそんな牛肉のパティをおいしそうに焼き上げた。

 11月24日、ソウル市鍾路区三清洞のカフェで会ったイ・ジョンジェは「最初に出演のオファーをもらったときは、僕より10歳ぐらい若い俳優が演じる役だと止める人もいた。でも、これ以上年を取る前に必ずやらなければと思った」と言って笑った。イ・ジョンジェが演じた役は、拉致された兄(イ・ソンミン)を助けようと、都市全体を舞台に不可能な戦いを続ける格闘技選手チェ・イクホ。謎の設計者エース(シン・ハギュン)は、モニターの後ろに隠れる富豪たちのため、イクホを将棋の駒として担ぎ上げ、巨額の賭博を繰り広げる。兄を殺すという強迫に、イクホはゲームのキャラクターのように操作されながら、徐々に危険な死地へと吸い込まれていく。

 イ・ジョンジェは「建物の屋根から飛び降りたり、ジャンプでバスを飛び越えたりする高難度のスタントを除き、アクションシーンの80%ぐらいは自分でこなした」と話した。イ・ジョンジェのアクションは、そのままこの映画の面白さとなる。手狭な警察署のオフィスでは、手錠をかけられたまま刑事15人をまく。グラウンドでは、盾や棍棒を持った戦闘警察(機動隊)62人と対峙(たいじ)し、逃げる。違法賭博場の建物の狭い廊下では、刃物を持ったチンピラと数十対1の戦いもいとわない。

 イ・ジョンジェは以前から、演じる役が厳しい状況に直面したとき、観客の共感を高める独特な俳優だった。映画『太陽はない』『オー! ブラザーズ』に出演後、犯罪組織に潜入した刑事役を演じた『新しき世界』まで、イ・ジョンジェが構築したキャラクターは不条理な状況に置かれたとき、さらに深い「同情を誘う哀愁」を見せた。

 イ・ジョンジェは今回も「笑えるシーンではなぜか悲しくて切なく、痛々しいときはむしろちょっと笑える、そんな二面性を見せたかった」と話した。「殴られて痛がる演技は、チェ・ミンシクさんが本当に世界最高。『新しき世界』の刑事役も、『鳴梁』の李舜臣(イ・スンシン)役もアクションをしているのに、心がジーンとするじゃないですか。僕も常に、どうにもならない人間の弱さ、人生の悔しさのようなものを読み取ろうと努力している。そのようなものがにじみ出る表情豊かな演技をしたい」

 出演した映画『10人の泥棒たち』『新しき世界』『観相師-かんそうし-』が連続ヒットした今が、イ・ジョンジェにとっては俳優としての新たな黄金期。しかし、40代に入ると俳優も岐路に立つ。イ・ジョンジェもそれをよく分かっている。「望む道と進む道が違うときがある。40歳を過ぎたので、自分ならではの道とカラーを探し、構築すべき時期だということをよく分かっている」

 世間は、帝王の気品や野生的な暴力性を全身から漂わせていた『観相師』の首陽大君を見て、スターではなく俳優イ・ジョンジェを改めて見直したと言った。実際に会ったイ・ジョンジェは、もともと天性の俳優だった。インタビューを終えるころ、イ・ジョンジェが言う「自分ならではの道とカラー」がどのようなものなのか気になった。

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