▲2年前、三つ子のパパになったとき「幸せな家庭を築かなければ」と決心したというソン・イルグクは「趣味がテーブルセッティングなので、外国に行くと、ナプキンの形を保持するナプキンリングを買い集めている」と話した。/イ・ジンハン記者

 俳優ソン・イルグクのインタビューに向かいながら、高句麗王の朱蒙(チュモン)やアクションヒーローのマッチョ男を想像した。ところが話を交わしてみると、バラエティー番組で見る、三つ子の優しいパパに近かった。ソン・イルグクは答える前、じっくりと考えてから熱心に説明し、結婚して家庭を築いたことについては「運が良かった」「大きなプレゼントをもらった」と語った。

 11月6日に公開された映画『めまい』(イ・ドング監督)で、ソン・イルグクはようやく授かった子どもを義母(キム・ヨンエ)の過ちで失う婿役を演じた。家族は徐々に狂気に満ちていく。今や主演ばかりのソン・イルグクにとって珍しい助演だ。臆病そうな普通の男の役を、体にぴったり合った服を着るように演じ切った。11月5日、ソウル市江南区のバーで会ったソン・イルグクは「40歳を過ぎて、ようやく演技に目覚めてきたようだ」と話した。

-助演というのは珍しいですね。

 「2010年ごろ、スランプが来ました。長らく主演を務めてきたので、格好つけていたんです。華やかな服を着て、腹筋を王の字に鍛えて。ところが、作品は上手くいかなかった。そんなとき、舞台に出演しました。安重根(アン・ジュングン)義士とその息子、安俊生(アン・ジュンセン)の1人2役を演じた『おれはお前だ』。俳優という仕事に対する考えや姿勢が変わりましたね。演技をしたいという欲も大きくなりました。実は舞台に2年出演しても、ドラマ1話当たりの出演料にもならない。でも、お金に変えられない大きなプレゼントをもらいました。今回の映画も同じです」

-どんなプレゼントですか。

 「舞台に上がる前、毎回キャスト全員で、無事終えられるよう祈っていたんです。そのたびに、僕は子どもを授かれるよう祈りました。うそのように、最後の地方公演を終えるころ、子どもができました。それも三つ子。今回の映画でも多くのことを学びました。撮影を終えてからも1カ月にわたりうつ病に悩まされていたキム・ヨンエ先輩を見ながら、役にのめり込むというのがどういうことか、真の俳優とは何かを考えるようになりました」

-久しぶりの作品ですね。

 「妻が三つ子の出産でとても苦労したので『1歳の誕生日を迎えるまで僕が育てる』と約束をしました。そうしたら、不思議と1年間、作品の話が入ってきませんでした。おかげで一生懸命子どもたちを育てることができました。その経験が、バラエティー番組『ハッピーサンデー』(KBS第2)の『スーパーマンが帰ってきた』コーナーでとても役に立ちました。本当に人生は分からないものですね。ハハハ」

-映画では、家族全員が徐々に狂っていきます。人生も家族も、本来そのようにもろいものでしょうか。

 「僕は子どもたちといると、常に祈っています。とても幸せすぎて、どこか怖いんです。小さな何かでも、一人の人生、一つの家族の運命が完全に変わるかもしれません。そのようなもろさを支えてくれるのは信頼と努力です。僕は愛も努力だと思います」

-家族に関する映画なので、いろいろ考えたと思いますが。

 「僕は本当に得たものが多く、自分にはもったいないくらいです。この借りをどのように返したらいいのか…。幸せな家庭を築かなければいけないと思いました。だから目標は妻を大事にすること、子どもたちに恥ずかしくない父親になること、自分の仕事を誠実にすることです。今朝も、子どもたちを床屋に連れていきました。母は正規職(セヌリ党の金乙東〈キム・ウルドン〉議員)、僕は非正規職なので、僕の方が時間があるんです。ハハハ」

-俳優としての目標は?

 「舞台や映画では、僕はまだまだ新人。初舞台のとき、通し稽古から最後の公演まで、全ての過程を撮影しました。家に帰ったら確認し、また演じた後、眠りについていました。朝目覚めたら、最初から最後までセリフを読んでいたので、妻がビックリしていました。今になって、ようやく俳優になれたような気がします」

 ソン・イルグクは三流チンピラ(『フライ・ハイ』)や、連続殺人鬼(『タトゥーイスト』)として出演した映画2作の公開も控えている。また、11月27日からはクァンリム・アートセンター(ソウル市江南区)BBCHホールで、『おれはお前だ』の舞台に再び立つ。その次は、ソン・イルグクにとって長年の夢だったミュージカルの世界へ。トルコッカンパニーのユン・ソクファ代表が準備している英国ウエスト・エンド・ミュージカル『トップ・ハット』に出演する。

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