10年も前の話ではない。「アイドルが俳優になる」と言えば、真っ先に「足演技」という言葉が思い浮ぶ時期があった。「足演技」とは、足で演技するくらい演技が下手だという意味。韓国映画のバブルが最高潮に達していたころは話題性や商品性を前面に押し出し、アイドルを主人公にした映画作品が作られ始めた。熱い人気を呼んだアイドルも、映画に出演した結果は惨たんたるものだった。そして「人気があるとは言え、演技力もないのに主役の座を奪った」と冷たい視線が投げ掛けられた。

 だが、今は全く違う。アイドルが多数出演するドラマが徐々に評判を呼ぶようになり、今ではアイドル主演映画・ドラマもかなり多い。さらに「適材適所」で与えられた役をアイドルたちは見事にこなし、その影響力も強まっている。しっかりとした演技力も伴うようになり、評価も一転した。今や「アイドルの『足演技』時代」は終焉(しゅうえん)に近づいている。

 ZE:Aのシワンは信頼できる主役クラスの俳優として注目を浴びている、代表的なアイドル俳優だ。2012年のドラマ『太陽を抱く月』で演技の世界に足を踏み入れて以来、ドラマ・シチュエーションコメディー・映画と八面六臂(ろっぴ)の活躍をしている。観客1000万人を動員した映画『弁護人』では拷問される大学生を演じ、深い印象を残した。現在放送中のドラマ『未生』では主人公のチャン・グレ役を演じ、魅力ある演技で世のサラリーマンたちの気持ちを代弁している。

 今月13日に公開された映画『カート』には、今一番ホットな人気を呼んでいるアイドルグループEXOのD.O.ことト・ギョンスが出演している。9月に放送が終了したドラマ『大丈夫、愛さ』でドラマデビュー、『カート』ではヨム・ジョンアの息子でコンビニエンスストアでアルバイトをしている高校生を演じている。華やかなアイドル活動のときとは全く違う一面を見せて好評だ。

 JYJユチョン(パク・ユチョン)は現在、20代を代表する俳優の一人と言われている。2010年のドラマ『トキメキ☆成均館スキャンダル』を皮切りに、時代劇・ラブストーリー・アクションとジャンルを問わず主演としてストーリーを引っ張るだけでなく、今夏には『海霧』でボロボロの身なりにボサボサ頭の最年少船員役を演じ、スクリーンデビューを果たした。評論家たちは韓国映画評論家協会賞の新人男優賞を贈ってその演技を称賛した。

 キム・ギドク監督の『俳優は俳優だ』で覇気あふれるスクリーンデビューを飾ったMBLAQのジュン(イ・ジュン)はドラマ『カプトン』でサイコパス(精神病質者)を演じ評判を呼ぶなど、アイドルとは思えないくらい大胆な演技歴を歩んでいる。アニメ『ソウル駅』、映画『客』などジュンが出演した作品が多数公開を控えている中、今月5日にスタートした『Mr. Back』では地上波ドラマのメーンキャストの座をつかんだ。

 ほかにも、最近活躍しているアイドル俳優たちは片手で数えるには足りないほどだ。東方神起ユンホは先月終了したドラマ『夜警日誌』で「演技力に難あり」というレッテルを見事に打ち消す好演を見せ、2PMチャンソンは映画『レッドカーペット』でピンク映画制作会社の社員に変身した。少女時代のスヨンはドラマ『私の生涯の春の日』でラブストーリーに挑戦、このドラマは水木ドラマ枠で視聴率トップに立った。ドラマ『バラ色の恋人たち』ではSecretソナが妊娠した女子大生役を演じ、ストーリー上、外せない存在となっている。昨年『監視者たち』で映画デビューした2PMジュノは新作映画『侠女:剣の記憶』の公開が近い。BIGBANGのT.O.Pことチェ・スンヒョンは映画初出演作『戦火の中へ』で新人賞を手にしたのに続き、今年の秋夕(中秋節、今年は9月8日)に公開された『タチャ~神の手~』で堂々と「数字が稼げる俳優」の仲間入りを果たした。

 ある映画プロデューサーは「アイドルがキャスティングされると、作品の重すぎるイメージがぬぐわれ、アイドルたちも俳優としての真価を証明することが多い。非正規雇用問題をテーマにした映画『カート』のD.O.や青少年観覧不可映画『海霧』のユチョンがその代表例だ」と評価した。別のドラマ関係者は「20代の俳優不足はアイドルたちが解消してくれている感じがする。アイドルはオーディションからして強い。カメラの前で自然に振る舞える上、演技力も専業の俳優顔負けだ。出演すること自体も話題になる」と語った。

 レッスン生暮らしで鍛えられたアイドルたちは素質と度胸、そして日々成長する演技力でスクリーンやテレビドラマの主流になろうとしている。作品の話題作りに貢献し、興行にも一役買っているアイドル俳優たちの時代は当分続きそうだ。

ホーム TOP