歌手イ・スンチョルさんが日本への入国を許可されず、空港に4時間足止めされた後に帰国していたことが10日、分かりました。イ・スンチョルさん側は「今年8月、独島で公演を行ったことを日本政府が問題視して報復されたものだ」と主張しています。インターネットやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上では、この問題で再び日本政府に対する非難が高まっています。

 この出来事は9日に起こりました。所属事務所の説明によると、イ・スンチョルさんはこの日、日本に住んでいる知人の招待で妻パク・ヒョンジョンさんと一緒にアシアナ機に乗って東京・羽田空港に到着しました。問題は出入国審査台で発生しました。最初は日本の出入国管理局職員が何の説明もなくイ・スンチョルさんの入国を許可せず、待機させたと言います。待機時間が長いため、イ・スンチョルさんは理由を尋ねました。すると、「最近メディアに出たことのためだ」という答えが返ってきたそうです。所属事務所は、このメディア報道というのは今年8月、本紙をはじめ韓国メディアに大きく報道されたイ・スンチョルさんの独島公演を指すものだとしています。

 イ・スンチョルさんは光復節(日本の植民地支配からの解放を祝う日=8月15日)前日の今年8月14日、脱北者青年合唱団40人と共に独島で公演を行いました。イ・スンチョルさんは統一を祈る歌「その日に」を初めて歌いました。イ・スンチョルさんはこの時、独島で公演する理由について「独島と慰安婦問題は韓国と北朝鮮に共通の関心事の一つだと思って独島に来ました」と説明しました。独島の領有権をめぐって韓国と対立している日本政府がイ・スンチョルさんのこうした発言やパフォーマンス自体を問題視したというのです。

 イ・スンチョルさんは空港に足止めされた時、「公演をした私はともかく、関係のない妻をなぜ足止めするのか」と抗議しましたが、出入国管理局の職員からははっきりした説明がなかったと言います。また、イ・スンチョルさんは「訪問目的は個人的なものなのに、全く関係ない理由でこのように入国を拒否するのは不当な仕打ちだ」と強く抗議したそうです。

 抗議を続けると、出入国管理局職員の一人がやって来て、独島公演以外にもイ・スンチョルさんが以前、大麻を吸引して摘発されたことに言及したと言います。しかし、イ・スンチョルさんは大麻事件後も公演などのため日本を15回訪れています。これまで一度も入国を拒否されたことがないのに、今回問題になったのは理解できないというのがイ・スンチョルさんと所属事務所側の主張です。

 今年4月、コンサートのために日本を訪れた伝説的バンド「ビートルズ」のメンバー、ポール・マッカートニーさんの場合は、1980年に日本に入国しようとしてバッグから大麻が発見され、現地で逮捕されたことがあります。しかし、ポール・マッカートニーさんはその後も日本を訪れていますが、何の問題もありませんでした(原文ママ)。イ・スンチョルさんの所属事務所は「日本政府はイ・スンチョルの前科を事前に把握し、ターゲットにして入国を拒否したもの」と強く反発しています。

 イ・スンチョルさんのように独島問題で自身の考えを主張したり、関連活動をしたりして日本政府のターゲットとなった例はほかにもあります。2012年の光復節に泳いで独島に渡るイベントに参加した俳優ソン・イルグクさんのようなケースです。当時は李明博(イ・ミョンバク)大統領の独島上陸などで韓日両国間の確執が高まっていた時期でした。外務省の山口壮副大臣がテレビに出演し、「(ソン・イルグクさんは)これから日本に来るのは難しくなるだろう」と発言、物議を醸しました。

 この発言について、ソン・イルグクさんはSNS上で「ただ、私の息子たちの名前を呼ぶだけです。テハン、ミングク、マンセ!」(ソン・イルグクさんの息子は三つ子で、3人の名を続けて読むと大韓民国万歳と同じ発音になる)という文を掲載、間接的に抗議の意を表明しました。イ・スンチョルさんも10日、自身が日本で入国拒否されたことを簡易投稿サイト「ツイッター」で知らせ、「私もソン・イルグクさんのかわいい三つ子の名前を呼びます! テハン、ミングク、マンセ!」と書き込みました。

 「独島は我が領土」を歌った歌手チョン・グァンテさんも1996年、SBSの特集番組制作のため日本のビザを申請しましたが、チョンさんだけがビザ発給を拒否されたことがあります。韓国の芸能人が独島問題で公の場で主張することに対し、日本政府はそれだけ神経をとがらせているということでしょう。

 さらに2011年、独島問題で韓日両国関係の緊張が高まった時、韓国のアイドルグループBEASTやCNBLUEなどが日本に公演のため向かいましたが、入国を拒否されて空港に8時間足止めされ、そのまま帰国したこともありました。独島の領有権を主張していた日本の自民党議員たちが韓国に来て、独島に上陸を試みた時、韓国政府が安全上の理由で金浦空港で入国を許可しなかったことがありましたが、その後、日本政府も報復的な見地から韓国のアイドルグループの入国を不許可にしたのです。

 このように、日本政府は独島と関連した敏感な問題が浮き彫りになるたび、韓国の有名人の入国を不許可とする行動を繰り返してきました。イ・スンチョルさんの所属事務所は「今回の入国拒否は報復措置。イ・スンチョルが日本に再び入国できないことになっても、不当な措置に積極的に対処し、闘っていくという意思を持っている」とコメントしました。

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