「馬長者はいても牛長者はいない」
「馬をなくして馬小屋を直す」

 済州島には馬にまつわる言葉が多い。それだけ馬が多いからなのだが、昔の記録を見ると、1073年と1258年に当時の耽羅(現在の済州島)から高麗に済州馬を献上したと書かれている。そして、1406年の朝鮮王朝時代には「馬の生産は国を豊かにする」として済州島に「済州国営牧場」が設けられたという。

 今もそうした痕跡は済州島のあちこちで見られる。そのうち西帰浦市加時里村の共同牧場は朝鮮王朝時代に最高の馬を飼育していた「甲馬場」があった所で、その命脈は現代まで続いている。また、ここには「チョランマル博物館」と「チョランマル体験公園」があり、済州馬についていろいろ知ることができる。「チョランマル」は済州産の小さな馬「済州馬」のことで、英語に訳せば「ポニー」となる。

済州馬はほかの馬とは違って体が小さく、脚や首が太くて頭が大きい。

 まずはチョランマル博物館へ。博物館の建物は外観からして特徴的で、済州島各地に広がる山をモチーフに建てられている。この博物館は韓国初の村立博物館で、馬の全てが集まっている。
 馬に関する展示は2階にある。ここには馬にまつわる出土品や遺物、文化・芸術作品約100点と、済州の馬追「マルテウリ」の生活がにじむ牧畜文化、チョランマルの生態や習性について展示されている。ちなみに、これらの展示品は村の人々がかつて実際に使っていたものだ。

チョランマル博物館の外観。

 展示スペースを見学した後はぜひ「マウム(馬音)カフェ」へ。このカフェはフェアトレード・カフェで、村で生産されたお茶なども販売されている。また「馬ふんクッキー」「にんじんパン」「馬てい菓子」「漢拏山溶岩パン」など面白い名前のパン・菓子類も味わえる。

 カフェでお茶を飲んだら3階の展望台へ。済州島に山が多いのは皆さんご存じだろう。展望台に登ると博物館周辺の山が一望できる。また、展望台の壁には前方に広がる山の雄姿が山の名前と共に描かれている。

 ここは美術評論家でもある明知大学ユ・ホンジュン教授が著書『私の文化遺産踏査記』で紹介している通り、同教授のお気に入りスポットだ。

2階にあるマウムカフェと、3階の展望台から見た風景。

 次は博物館を出て、チョランマル体験公園で「馬との触れ合い体験」はいかが? 体験プログラムはベーシックな「チョランマルに親しもうコース」(1時間-1時間30分)がオススメ。プログラム内容は馬の餌やりやブラシかけ、馬ふん拾い、鞍(くら)の装着、乗馬の順に行われる。このうち乗馬はフェンス飛び越えや草原トレッキングなどのコースもあり、オプション料金になっている。

 乗馬体験する馬はもちろんチョランマルだ。チョランマルは足から肩までの高さが113センチと体の前側が低く後側が高い。また、体の長さは122センチと、高さに比べて長めになっている。こうした特徴的な姿になったのは、済州島地域の強風や火山岩の多い地形に適応するためだと言われている。

チョランマル体験公園で乗馬体験。

 同公園では1泊することもできる。「ゲル」ゲストハウスがあるからだ。騎馬国モンゴルのテント「ゲル」は環境に優しい宿泊施設で、時間のゆとりを持って同公園や博物館で済州の馬文化に親しむのに便利だ。

 馬について学び、触れ合った後は済州島の馬肉を味わってみよう。馬肉は「済州島7大有名特産品」の一つで、済州島に来たら一度は食すべき食材だ。

ゲル・ゲストハウス内の様子。

 済州島では馬肉をユッケや鍋で食べるのが一般的。馬肉は脂肪がなく、焼いて食べるとパサパサになってしまうからだ。馬肉専門レストランは済州島のあちこちにある。馬肉ユッケは梨、ゴマなどを載せて独特のタレで和えて食べる。

 食べてみると淡泊だが口の中にタレの風味が広がり、後味さっぱり。鍋は一般的な韓国の牛鍋とよく似ているが、脂肪がない馬肉独特の食感とスープの味が絶妙にマッチしている。

 ちなみに馬肉は栄養満点で、疲労回復にいい。また、体の熱を取り、興奮を抑えるなど鎮静・消炎効果も期待できるという。血圧が高い人や心臓・肺・大腸が弱い人にもいい。朝鮮時代の医書『東医宝鑑』によると、馬肉は神経痛や関節炎、貧血、特に耳鳴りに効果があり、腰や背骨にもいいとされている。

淡泊でさっぱりした後味が絶品の馬肉ユッケ。

 済州島で体験する馬の全て。済州島旅行の計画をお持ちなら、チョランマル博物館、チョランマル体験公園、馬肉料理をぜひどうぞ!

※チョランマル博物館
-住所:済州島西帰浦市表善面ノクサン路381-15
-ホームページ:http://www.jorangmalpark.com/
-お問い合わせ:064-787-0960

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