少年は離婚した母親に連れられて人里離れた島で暮らしていた。少年は父親のことを愛していない母親を恨んでいる。少年の同級生の少女は、死の病にかかった母親が自分を置き去りにしてこの世を去ってしまうのではないかと怖がっている。 8月の祭りの真っ最中に浜で遺体が見つかる。少年はその遺体を見て不安になる。少年と少女が死と喪失感に直面し、途方に暮れた時、島を台風が襲う。

 『2つ目の窓』(9日韓国公開)の河瀬直美監督(45)=写真=が生まれて初めて喪失感を味わったのは、この少年・少女よりもっと幼いころだった。2歳の時、両親が「自分の人生を探しに行く」と言って彼女のもとを去ったため、母方の祖母の姉の養子となり育てられた。奈良県で育った河瀬監督は23歳の時にカメラで両親の足跡を追った。この40分間のドキュメンタリーが注目を集めたのがきっかけで、監督は私的な告白を込めた映画を作り続けるようになった。27歳の時に手がけた初の長編映画『萌の朱雀』(1997年)が第50回カンヌ国際映画祭でカメラ・ドール(新人監督賞)を獲得。同映画祭で最年少の受賞だった。

 思い出せないほど幼いころに経験した喪失感は河瀬監督の原動力であり、インスピレーションを与えた。『2つ目の窓』ではその喪失感が死と深く結び付いている。河瀬監督を娘のように育ててくれた祖母の姉(河瀬監督は「養母」と呼ぶ)が、この作品の撮影前に他界した。河瀬監督は電子メールによるインタビューで、今回の映画を「実際の人生で失われたことを再構築する作業。別れは残された人間に孤独と焦りをもたらす。しかし、その孤独は他人の痛みを理解する温かさに昇華される」と表現した。

 『2つ目の窓』をカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品した時の英題は「Still The Water」だ。河瀬監督は英題について「水を静かにする波間の瞬間的な静寂」、日本語の題名については「2人が1つになって一緒に窓を開けば素晴らしい世界に行ける」という意味だと説明した。

 少女は海を楽しみ、少年は海を恐れている。作品の終盤、2人は裸で一緒に海の中を泳ぎ、海は母親の手のひらのように2人を包む。「人間の生死はすべて水・石・草木といった自然と結び付いている。生と死、自然を受け入れ、新たな世界に向かって窓を開いた若い男女に、そして永遠に続く生命に賛歌を送りたい」。

▲映画『2つ目の窓』のワンシーン。写真提供=(株)Tcastコンテンツハブ

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