ロッテリアでアルバイトをしていた19歳のときにスカウトされ、芸能界デビューを果たしたナム・サンミが、もう30代になった。シャイだったナム・サンミは、夢を追いかけて路上で歌を歌い、人生はつらいと酒を飲み、悪酔いもできる女性になった。

 映画『スロービデオ』(10月3日公開)でナム・サンミは、灰色の現実からミュージカル女優という夢を追う女性を演じた。そんな彼女を見詰め、見守ってくれる男はとても優れた動体視力のため、一人で部屋に閉じ込められていたヨ・ジャンブ(チャ・テヒョン)だけ。ナム・サンミとチャ・テヒョンは劇中、防犯カメラを通じてあいさつし、次第に互いを知りながら愛をはぐくむ。ナム・サンミの今が映画に込められている。

-『スロービデオ』の出演オファーはいつ受けたのか。

 「昨年10月初めごろ、ドラマ『結婚の女神』(SBS)の撮影が終盤に差し掛かっていたときでした。『結婚の女神』では感情の起伏が激しかったので、心身ともにとても疲れていました。そのため、もともとはドラマが終わったら、友達と二人で旅行に出掛ける予定でした。その友達は旅行のため仕事まで辞めたんです。ところが『スロービデオ』のシナリオを受け取り、出演しない理由が見つからなくて。キム・ヨンタク監督にチャ・テヒョン、オ・ダルス、コ・チャンソク各先輩。内容もとても温かいものでした。この映画に出演したら、私自身が癒されるだろうと思いました」

-なぜ休まず仕事をするのに癒されると思ったのか。

 「『スロービデオ』は50-60代になったとき、ひっそりと寂しい時期が来たとき、色褪せた写真を見たら、30代の私の姿が収められているような映画だと思いました。30歳のナム・サンミ、笑って泣いて恋をするナム・サンミ。もちろん役と実際の私は違いますが、それでも今のナム・サンミがうまく表現できると思いました。私の明るさも取り戻したかったし」

-劇中、オーディションに遅れると路上で歌を歌い、防犯カメラの前でダンスを踊り、酒を飲んで悪酔いもする。大変な思いをしながら夢を追うが、厳しい現実に直面し、挫折する人間でもあるが。

 「全て吹っ切ってこの役を演じました。酒を飲んで激しく悪酔いするシーンもあったのですが、編集でカットになりました。非公開試写会で、女優がキレイに映っていないという意見が多かったため編集されたとか。私は相手の目を見て芝居をするタイプなんですが、相手役のチャ・テヒョン先輩は常にサングラスをかけている設定。今回は目を見て芝居をすることができませんでしたが、それでも楽しかったです。思う存分にできたので」

-チャ・テヒョンは、バラエティー番組『ハッピーサンデー』(KBS第2)の人気コーナー「1泊2日」での軽くふざけたようなイメージとはまた違ったと思うが。

 「チャ・テヒョン先輩は万人のベーシックな理想のタイプ。基本的に好感を与える人。番組では24時間冗談ばかり言っていて、ピノキオのような人というイメージだったのですが、現場では完全に違っていました。現場にいる全てのスタッフが集中するようなオーラを持っています。また、奥さまやお子さまたちへの振る舞いを見て、本当に絶大な信頼を寄せるようになりました。この男なら、という信頼を与えてくれます」

-19歳でロッテリアの少女としてデビューしてから11年以上女優生活を送っている。デビュー当時と変わったことがあるとするなら?

 「演技へのマインドは変わっていません。ただし、女優としての地位や進むべき道、責任感、作品への姿勢などが変わりました。温室の草花のように育ったとは思いません。仕事をしながら、よりたくましくなったと思います。女性たちは年を重ねるにつれ、声が大きくなっていくとか。19歳のナム・サンミと30歳のナム・サンミはその点が変わったと思います」

-プライベートでは恋愛面で、交際も別れも公表した。心の痛みもあったと思うが、毅然として見える。

 「気心の知れた友人とエジプトを旅行したとき、カカオトークで連絡を受けました。破局記事が出たとのことでした。私たちはすでに気持ちを整理していましたが、記事を通じて世間に知られたので、結果的には破局通告のようになりました。そうですね、生きていくのには毅然とした姿勢が必要だと思います。そうかといって、その毅然さを仕事には利用しません。エジプト旅行も、その友人とゲストハウスの電話番号だけを握りしめて行きました。オーストラリア旅行もそのようにふらりと出掛けましたね」

-『スロービデオ』を終え、イ・ジュンギとドラマ『犬とオオカミの時間』(MBC)以来7年ぶりに『朝鮮銃使い』(KBS第2)で共演したが。

 「二人とも30歳を過ぎたからか、同僚愛が生まれました。もともとイ・ジュンギさんは細やかな気配りをする人なんですが、今は人間くささも漂わせていて、互いに深い話まですることができました」

-『結婚の女神』から『スロービデオ』『朝鮮銃使い』まで休まず走ってきたが。

 「しばらくは休むつもりです。充電をしてこそ、また違うものが表現できると思います。安住しながら安住せず、静かに動きたいです。今築き上げているものが、いつかバタフライ効果のように台風を起こせたらと願っています」

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