「平凡」の辞書的な意味は「これといった優れた特色もなく普通」。ドラマ『明朗少女成功期』(2002)、『童顔美女』(2011)、最近終了した『運命のように君を愛す』(2014)まで、チャン・ナラが熱演してきた作品のキャラクターは、男に愛されるやさしく平凡なヒロインが、苦難や逆境を乗り越えて立ち上がるという共通点を持っている。率直で個性の強い女性キャラクターが主流のこの時代に、古臭い平凡女とは。しかし「チャン・ナラ流の平凡女」は2014年になっても、世間の共感を得ることに成功した。

 第3者の立場から見た『運命のように君を愛す』のヒロイン、キム・ミヨンは、チャン・ナラからしても「どう演じたらいいのだろう」と思うくらい優しすぎて不思議なほどだったが、腹をくくってキャラクターを愛してからはかわいく見え、キム・ミヨンを理解し始めた。チャン・ナラが理解したキム・ミヨンを視聴者にもそのまま見せようという目標も、そのころ立てられた。

 「本当にありがたいのが、現場がとてもよかったこと。監督の表現を借りれば、今後50年はこういう現場に出会えないだろうという現場だった。穏やかで愛情あふれる現場が、キム・ミヨンというキャラクターを作り出し、おかげで私も自然とミヨンになれた」

 感情的に大変だったシーンは、ドラマ『明朗少女成功期』でも共演したチャン・ヒョクの気遣いのおかげで、スムーズに行われた。チャン・ナラは「夫婦を演じるのが難しいときがある。腕を組むのにぎこちないと、姿勢がまっすぐになるではないか。でも、話しながら自然に腕を組めば、寄り添うようになる。リアルに演じるには、そういう空気感が重要だが、チャン・ヒョクさんは全てを受け入れてくださったので演じやすかった」と話し、チャン・ヒョクとの息の合った演技を振り返った。

 時間に追われ、演技をすることだけで忙しかった10年ほど前、『明朗少女成功期』のときとは違い、今回の『運命のように君を愛す』でチャン・ナラとチャン・ヒョクは作品についてさまざまな意見を交わし、息を合わせていった。作品が終わってからは、義兄妹の契りを結ぶほど距離が近くなった。「私は(チャン・ヒョクを)主にヒョンニム(男性が目上の親しい男性に対する呼び方、兄貴の意。女性が夫の兄嫁や夫の姉を呼ぶ時も使う)と呼び、ヒョンニムは私を名前で呼んだり、義妹と呼ぶ。実は、今は会話をしているとぎこちないときがある。二人の性格が似ているので。今回共演してみて、私が持っていないものをヒョンニムが本当にたくさん持っていらしたので、私の方から義兄妹の契りを結ぼうと言った。具体的に言うのは難しいが、私と違うまなざしやキャラクターの解釈方法など、手に入れたいものが多かった」

 男の先輩を「オッパ(女性が実の兄、または年上の男の先輩など呼ぶときに使う)」や「先輩」ではなくヒョンニムと呼ぶチャン・ナラは「私と3日過ごせば分かると思う。つまらない。そのせいか、自分が演技ができることに感謝しているし、演技を続けられることに感謝しているとし、インタビュー中、自分を平凡な人間だと話した。周りから言われる「似ているキャラクターばかり演じてきたのだから、これからは変わらなければいけない」という強迫観念も、チャン・ナラ自身は以前も今も全く感じていない。むしろ、イメージチェンジに失敗したら長所が半減し、不利に作用するかもしれないと思っている。ただ「チャン・ナラがこの作品に出演するんだな。どうしたら楽しく見られるだろう」と静かに見守ってもらえれば、多くのものを見せられるという自信はあるという。

 「20代前半はすごく焦っていた。2作品しか出演していないが、毎回同じようなものばかりだと言われ、困惑した。今はこの先も演技を続けると思っているので、余裕が出てきた。今後は未婚のうちにその輝きを放つことができる役をやってみたい。ハ・ジウォン先輩のドラマ『チェオクの剣』が印象深かったので、茶母(タモ=本来は両家の雑用係だが、情報収集などもした女性)役や、コ・ヒョンジョン先輩のドラマ『H.I.T.-女性特別捜査官-』のようにエネルギッシュな役を。あとは『推奴~チュノ~』のデギル(チャン・ヒョク)のような役とか(笑)。もし結婚をしたら、結婚してから得る感情を有利に生かせる役を重点的にやりたいが、固執はしない。どこまでも突っ走り続けたい」

 「20代前半に難しく考えていたことを今は難しく考えないようにしているので、より幸せを感じられるようだ」というチャン・ナラから、精神的なゆとりが感じられた。デビュー13年目に入っても、相変わらずゆっくりと自分の道を歩んでおり、これからも見せられる姿が無限にあるというチャン・ナラの新しい魅力を、作品を通じて触れられることに期待したい。

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