スターインタビュー
インタビュー:代えのきかない俳優チャ・テヒョン
チャ・テヒョンは独特の魅力を持つ俳優だ。チャ・テヒョンが主人公を演じると、あり得ない状況も理にかなっているかのように納得させられてしまう。チャ・テヒョンが気功波を放ち、ばかになり、そして孫を持っても納得させられる。
チャ・テヒョンは今回、動体視力が優れた男になった。通り過ぎる全てのものをはっきり見ることができる男。だから野球をしたら、ボールがスロービデオのように飛んできて、すごく活躍できそうな男。しかし、動体視力が良すぎて、走るとめまいがして倒れてしまうため、野球はできない。チャ・テヒョンは新作映画『スロービデオ』(10月2日公開)で、世の中がスロービデオのように見える男ヨ・ジャンブ役を演じている。
-キム・ヨンタク監督とは『ハロー!? ゴースト』に続き2作目となった。また一緒にやろうと約束でもしていたのか。
「そういう約束をしたことは一度もない。普通はまずシナリオを読んで話をするのだが、ある日キム・ヨンタク監督が訪ねてきた。家の近所でお酒を飲んだのだが、こういう映画をつくるという話を聞き、よさそうだったのでシナリオがほしいと言った。ただし、別れるとき、シナリオがイマイチだったらやらないと言った。ところが、すごく良いわけではなかったが、良かった(笑)。素材もそうだし、コメディーが強調されるというより、穏やかな感じだったので良かった。妻も『どうせやるんじゃない』と言っていたが、メディア試写会で作品を見て『本当に面白かった』と言っていた」
-コメディー色があまり強くなかったので良かったということだが、これまでコミカルな姿をたくさん見せてきたからか。
「必ずしもそうではない。その時々によって違う。現在、バラエティー番組『ハッピーサンデー』(KBS第2)の『1泊2日』にも出演しているし、前回コメディー色が強い『風と共に去りぬ!?』にも出演したので、今回は違うことをしたかった。『過速スキャンダル』も、実はもともとはコメディー色が強くはなかった。だから次の作品にコメディー色の強い『風と共に去りぬ!?』を選択した。もし、この作品を兄が制作していなかったら、出演しなかったと思うが(笑)」
-それでは、シナリオがとても良くて出演した映画は?
「『ハロー!? ゴースト』しかなかったと思う。最初はなぜこのようなシナリオを僕にくれたのだろう、と思いながら読んでいたのだが、最後にはワンワン泣いていた。だから電話をかけて、やると告げた。主役を演じるようになってからは、物語も重要だが、周りの人たちがうまくいけばいいなと思う気持ちからやることも。『スロービデオ』は『ハロー!? ゴースト』の監督だった上、『パボ(馬鹿)』のプロデューサーが手掛ける映画だった。『パボ』は本当に好きな映画だが、興行成績は振るわなかった。だから今回は一緒にうまくいけばいいなという思いもあった」
-『スロービデオ』を見た多くの人が、チャ・テヒョンでなければできない役だと言っていた。
「年を取るにつれて、代わりのいない俳優と言われることが一番うれしくなってきた。チャン・ドンゴン、ヒョンビンたちとの集まりがあるが、メンバーたちを見ると、僕はどんな俳優なんだろうとよく考える。そして、僕は本当に特殊だなと思う。僕のように、『1泊2日』のようなバラエティー番組にこれほど長く出演する俳優もいないし」
-チャ・テヒョンが演じると、あり得ないことでも理にかなうように思えるので。
「若いころから、よくそう言われていた。ドラマ『ハッピートゥギャザー』でご一緒したオ・ジョンロク監督が『お前が言うと、不思議と理にかなっていて、憎らしくない』と言っていた。なので、ドラマ『チョンウチ』、映画『覆面ダルホ~演歌の花道~』にも出演した(笑)。誰も見たことのない演技をするときが一番楽で、一番面白い。すでに誰かがやっていたり、見慣れたキャラクターだと、比較する楽しみはあるが、見たことのない、やったことのないものは、好きなように演じればいい面白さがある。今回も不自然なセリフをぎこちなくならないようにした。走ったら倒れる男というのをどのように演じればいいか悩んだが、偶然テレビ番組『世の中にこんなことが』を見ていたらそのような男性が出てきたので、その人を参考にした」
-プライベートでは初恋の人と結婚したが、『スロービデオ』のように初恋の人とロマンスを演じる上で何か役に立ったか。
「高校1年のとき出会った人と結婚したが、初恋の人と結婚したのは正解だった。でも、それが演技の役に立つことはない。初恋の人と結婚した後に、なぜそうしたのかと後悔する男の役なら分からないけれど(笑)。むしろ、子どもが生まれてから『ハロー!? ゴースト』のような演技をしたとき役に立ったと思う」
-似たような役が多いので、違う役をやってみたらどうかとよく言われるのでは。
「できることなら、僕が一番得意なことをして多くの人が喜んでくれるなら、それが一番いいと思う。それがつまらないと言われれば、何かほかのことをしなければいけないが。今のところはまだ、僕には皆さんが期待する何かがあると思っている。自分の欲でイメージチェンジをしようとすると、その何かを壊しそう。悪役のオファーも入ってはくるが、すごく典型的。善良に見えるのに、実は連続殺人犯のような役。観客は僕が出ればそうだと思うはずだが、それは違うと思う」
-『猟奇的な彼女』のキョヌ、『パボ』のスンリョン、そして『スロービデオ』のジャンブが、今まで演じてきたキャラクターの中で一番記憶に残ると言っていたが。
「キョヌは仕方がない。今も人々にとっては呪文を唱えるキョヌであり、馬に乗るキョヌなので。スンリョンは、作品はヒットしなかったが、僕が使ってほしいと思っていたシーンがそのまま使われたので、すごく良かった。『スロービデオ』のジャンブは不憫な部分もあり独特だが、今まで演じていない役だったので良かった」
-チャン・ドンゴン、ヒョンビンらとの集まりや、チャン・ヒョク、キム・ジョングクなど同年代の集まりのメンバーと、『オーシャンズ11』のような映画をやってみたいと思わないか。
「あちらの集まりは、僕があまりにも違うので入れてもらえそうにない(笑)。僕の兄が、僕とチャン・ヒョク、キム・ジョングクと何かを作ろうとずっと構想はしている。そういう構想をしているのは兄だけではないか。個人的には、キム・ジョングクが演技をするのは見られないと思う(笑)」
-次回作『猟奇的な彼女2』は9月末いクランクインするが。
「批判されるのを覚悟で臨む。チョン・ジヒョンがいない『猟奇的な彼女』なので。でも、今回は相手役を演じるガールズグループf(x)のビクトリアが好きな方たちも多いので、それを克服するのが宿題だと思う」