スターインタビュー
<インタビュー>映画「私の男」でタブーに挑んだ浅野忠信
【釜山聯合ニュース】知的な雰囲気を漂わせながら、隣家のおじさんのような親しみやすさも兼ね備えている俳優、浅野忠信さん(40)。日本だけでなくハリウッドなどでも活躍する日本のベテラン俳優だ。
侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の「珈琲時光」(2003年)では古書店を経営する物静かな男を、「モンゴル」(2007年)では優れた戦士を演じるなど、多彩な役で注目を集めた。
そんな彼が、今回は社会的タブーを扱った映画に挑戦した。直木賞受賞作を原作に熊切和嘉監督がメガホンを取った「私の男」だ。
映画は喪失感を抱えた一人の男の歩みを追っている。
浅野さん演じる淳悟は、北海道の南西沖で発生した津波で家族を失った遠縁の娘、花(二階堂ふみ)を20代半ばで引き取る。
二人は父親と娘として暮らしているうち、禁断の関係に陥る。やがて二人の秘密が周囲にばれると、淳悟と花は北海道を去り東京で暮らすようになる。
同作は釜山国際映画祭の「アジア映画の窓」部門に出品された。
12年ぶりに映画祭を訪れた浅野さんは3日、釜山でインタビューに応じた。社会的タブーを扱った同作でどのように感情を表現したのかとの質問に、タブーの問題は深く考えなかったと言い、「愛というのはどこででも生まれる」との持論を示した。
映画は、東日本大震災とそれに伴う津波がもたらした日本の状況を暗喩している。雰囲気は暗く、感情の谷は深い。
浅野さんは、震災が起こったときには日本にいなかったが、その状況を理解することはできるとし、「津波を経験してから(日本人には)トラウマができた。そうしたトラウマは十分考えてみることのできる問題だろう」と語った。
浅野さんは役者にとどまらず、さまざまな分野で活躍している。パンクバンドを率いるミュージシャンであり、画家でもある。監督として映画を撮ったこともある。
主に音楽と映画の分野で活動しているが、音楽で得たことを映画で生かし、映画で得たことを音楽で生かせることがメリットだという。
韓国映画への出演の可能性もほのめかした。浅野さんは「きのうキム・ギドク監督と会って『近いうちに一緒にやろう』と話した。韓国映画に出演する日が思ったより早く来るかもしれない」と言って笑った。