周りの人たちにキム・ナムギルについて聞くと「おばさんみたい」「おしゃべり」という証言が共通して出てくる。このようにユニークな人が、どうして今まで寡黙な役ばかり演じてきたのかと思う。だからだろうか。8月6日公開の映画『海賊:海に行った山賊』(以下、『海賊』)のチャン・サジョンは、キム・ナムギルを知っている人にとっては最もキム・ナムギルらしく、世間一般の人たちにとっては最も新鮮なキム・ナムギルと感じられる。

 「『海賊』で見せた姿は全く違和感がなかった。演技では初めてだが、僕は常に楽しく撮影してきたので。僕はそれを隠したことはないし(笑)。むしろ、そういう部分が長所に見えることがあると思う。今までそのようなイメージがなかったので、新鮮さというのだろうか。でも、その一方で、映画に集中するのを邪魔しないかという心配もした。誰かにとっては、キム・ナムギルのコミカルな姿が不自然でぎこちなく見えるかもしれないから」

 映画『モダンボーイ』でクロマキー撮影を経験したが、これほど多くのシーンがCGで制作された映画は初めてだった。特に、映画のまた別の主人公である巨大なクジラが目の前にいない状況で演技をするのは容易ではなかった。

 「CGが多いので、俳優たちがそれぞれ想像をしながら演技をするのだが、問題はその想像が互いに違うときもあるということ。例えば、クジラが水面に上がる際、視線が俳優によって違う。ある人は上を見ているのに、ある人は前を見ていたり。CG処理されていない編集版を見たが、何もないので本当に笑った。ここにクジラが合成されたらどんな感じなのか、すごく気になった。実はCG処理されていないバージョンの方が面白い(笑)」

 激しい撮影だった上、アクションシーンが多かったため、ヒヤリとする瞬間もあった。キム・ナムギルは撮影中、落馬して腰椎を骨折。アクションに怖さを感じるようになったというキム・ナムギルの言葉は決しておおげさではなかった。

 「馬から落ちて、第2、3腰椎を骨折した。病院からは、2カ月ほど休まなければいけないと言われたが、そうすることができない状況だった。恨めしく悲しかった。そこまでしなければいけないのか、と。そう思う一方で、早くスタッフの心配を和らげなければという思いもあり。全快していない状態でアクションをこなさなければいけないので、それが大変だった」

 「問題は、アクションへの恐怖心が出始めたということ。もともと骨惜しみするのが嫌だし、アクションにも自信があったが、誰かが代役を使おうと言ったとき『一度そうしてみようか』という考えがよぎることも。それぐらい心理的な圧迫感や体力的な負担があって大変だった。それと同時に、やはり俳優は健康第一だということを改めて感じた」

 キム・ナムギルは劇中、チャン・サジョンに扮し、ヨウォル(ソ・イェジン)にしきりに色目を使い、キュートな見栄を張る。女性にアプローチする姿も似ているのか聞いてみた。

 「気楽に付き合っている異性の友人には見栄も張るし、よくいたずらもする。でも、逆に好きな人にはそうできないと思う。だから、以前からよく知っていた人が恋人になったときは、ぎこちなくなるときがある。僕が真剣な話をすると、むしろ相手が『うわぁ、突然どうしたの』と違和感を抱いたり。そういう面はチャン・サジョンと似ていると思う。だから最近恋愛ができないのかな」

 『海賊』の撮影中、俳優を辞めようか悩んだ時期もあった。しかし、その波を乗り越えたため、今は次の段階に進む財産になった。まだ演技を完全に楽しめるわけではないが、面白さを見つけているという点で、『海賊』はありがたい作品でもある。

 「『海賊』は個人的に本当に大変だったが、先輩たちが引っ張ってくださったおかげで、やり切ることができた。そういう経験を生かし、次の映画『無頼漢』で演技の面白さを感じている。今は、演技で全てを見せるというよりは、面白さを見つけている。『無頼漢』ではさらによい姿をお見せできると思う。その次、またその次の作品では、より進化した姿をお見せできると思うので、個人的にも楽しみだ」

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