女優ソン・イェジンと言えば「清純かれんなラブストーリーの代表」だったのに、今回は海賊の女頭目役でスクリーンに帰ってきた。8月6日公開の映画『海賊:海に行った山賊』(以下、『海賊』)で、ソン・イェジンは流れる一筋の涙の代わりに剣を腰に下げ、海に身を投げる。

 男性ファンの心の奥に「初恋の女性」のイメージとして残っているソン・イェジンも、今や30代になった。その美ぼうは衰え知らずだが、精神的にはたくましくなった。『海賊』の封切りを前に、ソン・イェジンに演技と映画、そして結婚についてインタビューした。

 『海賊』はほとんどのシーンにコンピューターグラフィックス(CG)が使用されている作品だ。撮影中は徹底的して想像に頼るしかなかった。クジラがいなくても目の前にいるかのように、水車がなくてもそこにあるかのように。完成版を初めて見たソン・イェジンに満足度を聞くと、「へへへ」と子どものように笑った。

 「映画の撮影で100%満足したことは正直言ってありません。もちろん、それは個人的な欲もあるし、演技に関する部分もあるでしょう。今回の映画はまず、脚本が持つユニークさや新鮮さがありました。CGが非常に多くの部分を占めるので、私の出番よりもそれ以外の部分の方が映画の完成度を左右する作品です。幸いなことに、そうした点がよく生かされていると思います。文章で読んだら面白いのに、実際にはうまく表現できないかもしれない所も、面白くきちんと描かれていてよかったです」

 ソン・イェジンのアクションは実に驚くべきものだった。これまでの作品でも少しはアクション・シーンがあったが、このように多彩で本格的なアクションは初めてだ。ソン・イェジン本人も、自分がアクションをすることになるとはにわかには信じがたかったという。

 「実は私がこれまで避けてきたジャンルの一つがアクションでした。これまで出演してきた映画にも少しはアクション・シーンがありますが、本格的には経験していないので、アクションは決して簡単にやってはいけないと思っていました。一生懸命やってみたいとは思っていたんですが、女性の動きではカッコよく見えないような気もして…。役に入り込んで演技する方が好きでしたね。それでも『海賊』のヨウォル役をやることに決めたのは、女海賊役は初めてだったし、痛快なストーリーで作品の素材自体が面白かったからです。『この次はいつ、またカッコいい女性の役が来るんだろう』とも思いましたし…。このチャンスを逃したら後悔しそうな気がしました」

 これまで多くの恋愛映画やロマンチック・コメディー映画で活躍してきたソン・イェジン。「清純」という修飾語が当たり前のようについて回る女優だ。アクション挑戦にプレッシャーがあるのも当然だが、ソン・イェジンは「私はいつまで清純でいられるんでしょうか」と語った。30代、それも半ばに差し掛かっているソン・イェジンは、これまでの清純かれんなイメージを脱ぎ去ろうとしている。

 「いつまで清純でいられるでしょうか。40歳までは無理でしょう。それに、最近はラブストーリーが本当に少ないんです。しかも、ラブストーリーに出たとしても、以前のような初々しさはもう、うまく表現できないと思います。ロマンチック・コメディーに出ても、現実的で年相応の役じゃないかなって」

 数年前まで「芸能人の友達はいません」と言っていたソン・イェジンだが、最近ではコン・ヒョジン、オム・ジウォン、ソン・ユナら多くの女優と親しくしている。それに、今は後輩たちの悩みの聞き役になることもある。先日は少女時代ユナが演技に関する悩みを相談してきたそうだ。歳月がもたらした意義深い変化だ。

 「10代で仕事を始めたこともあって内気な性格だったし、全てにおいて慎重でした。いつも閉じ込められているような気がしました。学生時代も大勢の人たちと広く付き合うというより、少数の人たちと深くかかわるタイプでした。時間がたつにつれ、だんだん怖がらなくなっていったのだと思います。以前は『私がこんな話をしたら、あの人はどう思うのかな』と心配していましたね。今は、自分がいつもよく見えるとは限らないということが分かりました」

 今年満32歳になった。普通の女性なら自然と結婚を考える年齢だ。自身も「結婚するなら時期的には今だけど」と言いながら、演技に対する意欲の方が先に立つ。演技をすればするほど欲が出るというソン・イェジン。そんな欲ならファンは大歓迎だ。

 「結婚はあまり遅くはしたくないと思っていました。遅くとも34歳くらいにはしたかったんですが、もうすぐですね(笑)。演技をすればするほど欲が少しずつ出てきます。結婚をしても演技はできますが、それでも結婚前にしかお見せできないものがあると思います。またカッコいいアクションもしたいし、女性がストーリーを引っ張っていく映画がやりたいという気持ちも…。コン・ヒョジンさんと、米国映画『テルマ&ルイーズ』のような作品がやりたいね、と話したこともあります。2人は違うタイプに見えるけれど、実はウマが合います。自分たちで作らなければならないのかも…?」

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