カン・ドンウォンが映画『群盗:民乱の時代』(ユン・ジョンビン監督、以下『群盗』)で帰ってきた。悪の中枢というキャラクターに欲を見せた。率先して悪事を働き、弱者を崖から突き落とすチョ・ユンは、カン・ドンウォンが今まで演じてきた役の中で最も悪質だ。同作は間違いなく「カン・ドンウォンの時代」を新たに切り開くターニングポイントだ。

 「映画『デュエリスト』のときとは次元が違うアクション。今回は剣の使い方をしっかり習い、4、5カ月ほど苦労した。最も凶悪な人物を演じたが、観客の同情を誘おうと努力した。そのため、ユン・ジョンビン監督とも感情のディテールについて話し合いを重ねた」

 カン・ドンウォンは同作で、非嫡出子としての苦しみを抱える人物として登場する。何をしても認めてくれない父親のもとで、悪に染まっていった。貪官汚吏たちの味方となり、民の衣食住、そしてその未来を奪うことを主導した。「悪役の典型」だったチョ・ユンは、内面と相反するビジュアルで魅力的なキャラクターとなった。妓生(キーセン=芸妓)の美しさも霞ませるほどの顔、襟一つ乱れることなく動く素早さ。チョ・ユンは、カン・ドンウォンだからこそ可能な表現力の全てを盛り込んだ人物だ。

 「監督が『チョ・ユンは最大限格好よくなければいけない』とよく言っていた。娯楽映画『群盗』で『粋』を担当した人物だ(笑)。一番話題になったのは、夜に智異山のふもとでならず者たちと対峙(たいじ)するシーン。内容上、キャラクター上、ビジュアル上、一番気を遣った部分。『カン・ドンウォン以外に誰がやるんだ』という冗談が出るくらい、格好よく仕上がるよう期待して撮影した」

 同作で最も力を入れたというこのシーンは、実際に劇場で女性客からため息がもれる「ビジュアルシーン」。映画『オオカミの誘惑』で、ヒロインの傘の中に飛び込んでくるシーンで女性客を胸キュンさせたカン・ドンウォンが、10年ぶりに披露した新たな名シーンだ。「白髪魔女シーン」と呼ばれ、すでに口コミで広がっている。

 「『オオカミの誘惑』のときは、僕がスクリーンに映ると、観客の何人かが歓声を上げていたと聞いている(笑)。『群盗』でもそのような光景が見られそうだという。僕はよく分からないが(笑)。単純にビジュアルだけでなく、チョ・ユンを総合的に考えて見てもらえたらうれしい。新しい次元のキャラクター、悪役として印象に残りたい」

 カン・ドンウォンの言葉通り、『群盗』はカン・ドンウォンの俳優生活で、一線を引く作品。同作が娯楽映画なのか、社会的なメッセージを込めた作品なのか、公開前からその「本質」についてさまざまな声があったが、俳優の立場から、特にカン・ドンウォンの立場からすると、以前にはない新しい人物に出会ったということに大きな意味があるように見える。その上、カン・ドンウォンは同作を通じて、俳優という枠を超え、一人の人間として新しい経験をしたので、カン・ドンウォンの人生においても、同作は最新情報に更新するパソコンのキーボード「F5」キーを押したような作品であることに違いない。

 「皆さん、心配していた。除隊後初めての現場だったし、ユン・ジョンビン監督やハ・ジョンウ先輩など、皆さんが『悪いやつら』で出会い、すでに親しくなっていたので。『疎外感を感じたらどうしよう』と思ったが、心配無用だった(笑)。ハ・ジョンウさん、マ・ドンソクさん、チョ・ジヌンさん、イ・ソンミンさん、イ・ギョンヨンさんは本当に素晴らしい先輩たちで、たくましい。男が使う言葉、男がする行動、そういう部分もたくさん学んだし、ユン・ジョンビン監督の通訳が必要なぐらい独特な表現の会話が多くて、楽しくもあり、学ぶべきことも多かった」

 カン・ドンウォンはすでに親しくなっていたキャストの中で「若い孤島」だったが、その中に溶け込んでいく過程は興味深いものだった。映画を1本撮っているといってもいいくらい、現場も新鮮な世界だった。「彼らにとって、僕はよい観客だった」と表現するほど、カン・ドンウォンは同作で共演者を観察したし、その中で交流し、成長していった。

 「以前の自分を思うと、僕は本当に消極的だった。失敗するのが嫌だったし、その失敗の影響も大きいため責任を取らなければいけないことも多くて。正直に言うと、レッドカーペットを歩くのは今も精神的にきつい。それでも今は、社会性がだいぶ培われてきた。ハ・ジョンウ先輩をはじめ、多くの方が導いでくださったおかげ(笑)」

 同作は、朝鮮王朝後期を舞台にした時代劇で、アクション活劇を標榜する。『悪いやつら』などを演出したユン・ジョンビン監督が手掛け、同作で主役を務めたハ・ジョンウがカン・ドンウォンと共演した。カン・ドンウォンのビジュアル、ハ・ジョンウの演技力に加え、イ・ギョンヨン、イ・ソンミン、チョ・ジヌン、マ・ドンソクら脇を固める俳優たちの相乗効果が楽しめるのが、『群盗』の見どころだ。7月23日から公開中。

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