3カ月炭水化物抜きで暮らした俳優。そうやって体を作った。そうしなければ、主人公チ・ドンチョルのあらゆる行動の訳を観客に理解してもらえないと思った。コン・ユが作った「彫像のような上半身」はただ筋肉隆々なだけではない。その肉体こそがチ・ドンチョルという人物の生き様を見事に物語っているのだ。

 映画『容疑者』で生まれて初めてアクションに挑んだコン・ユがインタビューに応じた。いの一番に発した言葉は「僕の体はCG(コンピューターグラフィックス)じゃありません」。そして真っ先に吐露した感情は「無念さ」だった。

 「映画を見た皆さんがおっしゃるには、僕の体はCGだそうです。そうじゃありませんよ。本当にガッカリです。観客の皆さんに自慢しようと思って体作りをしたわけではありません。あの上半身ヌードのシーンはチ・ドンチョルがこれから取る行動全ての正当性そのものなんです」

 チ・ドンチョルは北朝鮮の特殊部隊出身だ。合格率3%未満という過酷な訓練で勝ち残った数少ない秘密要員だ。だが、祖国から捨てられたチ・ドンチョルは韓国に亡命する。妻と娘を殺したリ・グァンジョ(キム・ソンギュン)への復讐(ふくしゅう)を誓い、追いつ追われつのアクションを展開する。

 「チ・ドンチョルは言葉よりも行動で示す人間です。『オレは腹が立った』と言うのではなく、死ぬまで追って追って追い詰めるんです。その強烈で毒々しい人物像を表現するのは体しかないと思いました。だから、非現実的で怪物のように見えるよう体を作りました」

 チ・ドンチョルは言葉よりも行動で示す人物だけに、コン・ユも体にポイントを絞った。映画を見終わった人々に「コン・ユは筋肉でも演技ができる」と好評なのはそういうことだ。

 「この映画は露出シーンが多いわけではありません。絶対に必要な場面だからあるんです。チ・ドンチョルの壮絶な姿を見せたいときだけ。肩の脱臼シーンは本当に呼吸困難になりそうな状況で、過呼吸になりながら演じました。意識がもうろうとすることもよくありました。それでもカットが出たらすぐにトレーナーと腕立て伏せをしました。ロープにぶら下がっているチ・ドンチョルが肩を脱臼しながらも脱出するシーンで、かすかに見える筋肉の細かい動きを一つも逃したくなかったんです」

 コン・ユの言う通り、『容疑者』のセミヌードシーンは「サービスカット」ではない。ウォン・シンヨン監督が上半身裸の場面でコン・ユにした注文は「このシーンをスクリーンで見たら、観客の息が止まってしまうくらいに」というもの。それは、コン・ユの体にうっとりするからではなく、とてつもない苦痛を乗り越え、生きようともがく凄絶さに息をのむほどに、ということだ。

 「体で語り、演技するというのが主眼だったため、チ・ドンチョルのセリフが少ないのも事実です。映画を見た方やスタッフがよく言うのは『チ・ドンチョルはセリフがなくて動き回っているが、一瞬見え隠れする目や動きが哀れで悲しい』ということ。見る人にもよると思いますが、僕も観客の皆さんがそのように見てくださったらうれしいですね」

◆コン・ユ、グラビアギャラリー

ホーム TOP