すっかりソウル人になった慶尚南道晋州出身の少女が、忘れかけていた方言を再び口にした。悪口を言い、わめき散らすように怒鳴りながら、以前の姿を見せた。「これまで私のイメージはおとなしい人形だったと思う。それを壊したかった」。ドラマ『応答せよ1994』(tvN)のヒロイン、コ・アラが力強く語った。

 古くなったジャージに不揃いのショートヘア、横になってソースまみれの顔でチャジャン麺(韓国式ジャージャー麺)をほおばる女。慶尚南道昌原市馬山から上京した下宿屋の娘で、1994年に延世大学コンピューター工学科に入学したソン・ナジョンを演じるコ・アラの姿だ。今年5月に出演オファーが来たとき、迷うことなく「やる」と言った理由は、脚本家イ・ウジョンの一言だった。「初めて会った席で『コ・アラをどう壊そうか』とおっしゃった。私もイメージチェンジが必要だった」と話すコ・アラのイメージチェンジで、ドラマは11月16日、最高視聴率10%(ニールセンコリア調べ、全国世帯基準)を記録し、好調ぶりを見せた。

 もともとアナウンサー志望だったコ・アラは2003年、何事も経験だからと、友人の付き添いで受けた俳優オーディションに思いがけず合格し、同年11月、青春ドラマ『四捨五入』(KBS第2)で主人公となった。堂々とした中学生イ・オクリム役は、一気にコ・アラをスターにしたが、そこまでだった。その後、映画4作、ドラマ3作に出演したが、どれもパッとしなかった。人形のような顔が演技を邪魔しているという話まで出た。しかし、コ・アラは「理由は単純に、私の演技が未熟だったから」と話す。

 ギャップが必要なコ・アラにとって、今回のドラマは絶好の機会だった。かわいらしいイメージを脱ぎ捨て、十分に壊れようと決めた。「独特な方言を使うため、晋州の友人によく電話をかけたし、釜山に住む友人の家を2度訪れ『方言の特別講義』も受けた」というコ・アラ。方言で書かれた台本も、演技に大いに役立ったようで「『何と言ったの?』というセリフ一つでも、馬山と釜山では言葉が違っていた」と打ち明けた。劇中の田舎くさいヘアスタイルはコ・アラのアイディアだ。「当時は毛先をカミソリでカットして、レイヤーを入れたらしい。それが『カミソリカット』」

 ドラマの背景となった1994年、コ・アラは4歳だった。90年代半ばの感覚を理解するため、当時の新聞をスクラップしたりした。「(バスケットボールの)イ・サンミン選手の『追っかけ』をする役なのに、イ・サンミン選手のことを今回初めて知った。バスケットボール大会の映像を一通り見て、写真も印刷して持ち歩いていた」

 演技をする上で一番助けとなるのは歌だ。「ソテジワアイドゥルの『君へ』のような歌を聴くと、当時の状況にすぐに浸ることができる。撮影現場では、監督がそのシーンに合う曲をかけてくれる。当時の歌を聴くと、当時の感性が生まれる。不思議でしょ」と話した。

 コ・アラはソン・ナジョンを演じながら、中央大学演劇映画科に通っていた自分の経験を思い出したという。「大学の新入生がMT(メンバーシップトレーニング=親睦を深める集い)に行って遊んだシーン(第3話)が一番思い出に残っている。自分が新入生のとき、科のMT、同期のMTに行ったときの楽しかった思い出もよみがえった。『(パーティーゲームの)007ゲーム』をするシーンでは夢中になりすぎて、NGを3回も出してしまった。眠すぎて、撮影しながらかなり笑っていたと思う」

 今年2月に大学を卒業したコ・アラは、人形のようなイメージを持たれていたころとはおさらばした。「さまざまな顔を持つ女優になりたい」と語るコ・アラの変身が始まった。

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