韓国をはじめアジアの国々は概ね四季がはっきりしている。季節ごとに特色があり見所もさまざまだが、その中でも秋を感じるなら登山をお勧めしたい。秋になると山が色とりどりに染まるからだ。

 韓国の秋はこの時期、5色に色付いた紅葉が絶景を織りなしている。今回紹介する場所も紅葉が美しい山だが、ここにはさらに特別な見所がある。紅葉に負けず劣らず輝く、ススキが群生する慶尚南道密陽の「嶺南アルプス」だ。

山の中腹に広がるススキ平原

 ススキはヨシに似た植物だが、よく見ると異なる。ススキは山や野原のように乾いた所に生え、高さおよそ1.5メートルまで伸びる。また、上にいくほどとがっていて、穂先にはやわらかい毛で覆われた花が咲く。

 ススキの種には白い毛が生えていて、山の風に乗って遠くまで飛んでいく。新しいススキは早春に芽を出し、伸び始める。穂は秋まで伸び続け、冬が来る前に華やかな花をつける。地上部分は寒い冬になると枯れてしまうが、根は生きており、翌年再び生えてくる。

真っ青な秋の空の下、ススキが満開だった。

 この時期見事な景色を織りなすススキ平原は、嶺南アルプスに行けば見ることができる。嶺南アルプスとは、慶尚南道東部地域にある標高1000メートル以上の山々のこと。欧州のアルプスのように景色が美しいことからこの名が付けられた。

 風に揺れるススキはまるで波のようだ。とりわけ真っ青な秋の空をバックに揺れるススキは、海を連想させる。また、夕暮れ時になると、夕焼けがススキを染める。秋風と夕焼けが織りなす「金色の光とススキの波」は、昼間とは全く違った景色を見せてくれる。

 ススキ平原を後にして登山道を歩いていくと、滝が見えてくる。滝が層を作っている「層層滝」と、竜のように長い「黒竜滝」。苦労して山道を登ってきて途中で出会う滝と、渓谷の水で汗を流したときの爽やかさは、言葉で言い表せないほどだ。

途中にある黒竜滝(左)と層層滝(右)。

 嶺南アルプスの登山道は誰でも楽しめるようにさまざまなコースがある。初心者でも楽に登れる傾斜の緩いコースのほか、海抜1241メートルの頂上まで登る長距離コースもある。短いコースなら2時間、長いコースは6時間以上要するため、スケジュールに合わせて選べばよいだろう。
 嶺南アルプスへの行き方は、バスと列車の2通り。バスは、密陽の市外バスターミナルで乗り換えると山の入り口まで行ける。列車なら三浪津駅で降りてバスを利用すればよい。

頂上に近づくにつれ、見事な風景が広がってくる。

〈関連情報〉
■嶺南アルプス
・住所:慶尚南道密陽市丹場面九川里28-5
・電話:82(韓国の国番号)-52-229-7644
・ホームページ:http://www.yeongnamalps.kr/EN/

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