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ニューエイジ・ミュージックが韓国で売れるワケ
韓国内のCD売り上げ16種100万枚、2003年と10年には芸術の殿堂コンサートホールで有料観客の客席占有率1位…。
ピアニストの倉本裕基(61)は韓国で最も人気のあるニューエイジ・ミュージックのピアニストだ。1999年の初来韓公演以来、毎年韓国を訪れている。ソウルだけでなく地方都市も回るが、チケットはほぼ完売する。来月も「ソウル芸術の殿堂」をはじめ、光州・全州・金泉・春川・河南と6公演が予定されている。韓国を頻繁に訪れるため韓国語が話せるようになり、ステージでも韓国語であいさつする。公演企画会社では「2005年の映画『甘い人生』や06年のドラマ『朱蒙-チュモン-』の挿入曲になったことで観客が爆発的に増えた」と話す。
バイオリニストの都留教博がリーダーを務めるトリオ「アコースティックカフェ」、韓国だけで100万枚以上売れたアルバム「DECEMBER」のピアニストであるジョージ・ウィンストン、カナダのピアニストのスティーブ・バラカット、米国の作曲家・ピアニストのブライアン・クライン…。
ほぼ毎年、来韓公演を成功させるニューエイジ・ミュージックの演奏家たちだ。倉本裕基をはじめ、韓国で特に歓迎されるスターたちがほとんど。韓国ではピアニストのイルマが代表的なニューエイジ・ミュージシャンとされている。韓国人がこうした音楽に夢中になるのはなぜだろうか。
ニューエイジ・ミュージックとは1960年代、西欧でクラシックやポップスといった垣根を越えて瞑想(めいそう)・ストレス解消・癒やしのために作曲された音楽だ。韓国人は特に、西欧のニューエイジ界のスターであるヤニーではなく、韓国に先駆けてニューエイジの人気が出た日本の影響を受けて、感情に訴え掛けるメロディーのピアノ曲が流行している。そのほとんどがテレビドラマやCM・ラジオ・映画を通じてよく耳にするものだ。最近では「ヒーリング(癒やし系)音楽」とも表現される。11日に「ソウル芸術の殿堂」のステージに立ったニューエイジ・ピアニストの渡辺雄一、「アコースティックカフェ」リーダー都留教博らの公演タイトルは「2013ヒーリング・ミュージック・フェスティバル」だった。
公演企画会社クレディアのユン・ヘジンさんは「クラシックは難しく感じる人も多い。だからといって歌謡曲やポップスを聞くのではなく、リッチな気分を求めている人がニューエイジのコンサートによく来る。甘いメロディーで聞きやすく、カップルが多い」と話す。倉本裕基のアルバムを出しているレーベル「C&Lミュージック」のリュ・ジンヒョン部長は「90年代後半のアジア通貨危機以降、難しい音楽ではなく心が癒やされる音楽が好まれるようになった。倉本裕基はその代表的な演奏家だ。ドラマ、CM、ラジオのインターバルシグナル(放送開始前に流れる識別音声)やBGMにもよく使われた」と語った。
しかし、「倉本裕基は韓国での人気とは対照的に、日本では公演活動をほとんどせず、注目度も高くない」と話す公演・CD業界関係者もいる。「ニューエイジ・ミュージックは音楽的に評価が低い『ムード音楽』『BGM』にすぎない」との指摘があるのも事実だ。ジャズ評論家のキム・ヒョンジュン氏は「韓国で流行しているニューエイジ・ミュージックはその実体があまりよく分からない。韓国人は感情に訴え掛ける音楽に弱い方で、最近20年間に聞かれる音楽の傾向がソフトになっているので、こうした音楽が流行しているのだろう」と分析している。