チョー・ヨンピル

 十分予見されていたことだが、やはり驚異的とも言える旋風が巻き起こった。デビュー45周年を迎えた「歌王」チョー・ヨンピルが10年ぶりとなる19枚目のオリジナル・アルバム「Hello」をリリースした23日、その歌は世代を越えて熱狂的な反響を呼び、CD・音楽配信市場を制した。

 直筆サイン入りCDを手に入れようと早朝からファンが集まり、300メートルもの行列ができたソウル市内の永豊文庫鍾路店をはじめ、全国のCDショップでは一日中、ファンの足が途切れることがなかった。同日正午に配信が開始されるや、ほぼ全ての音楽配信サイトでニューアルバム収録曲がリアルタイム・ランキング1位から10位までにランクインし、予約分のCD 2万枚も発売から3時間弱で引き取られたことから、追加プレスに入った。同日夜、ソウル・オリンピック・ホールで行われた新曲発表ショーケース・ライブを前に記者会見したチョー・ヨンピルは思春期の少年のように顔をキラキラさせ、胸の高まりを抑え切れんばかりに「歌詞の通り心がBounce(弾む)するね」と語った。

■「自分自身から脱皮したかった」

 「2003年に18枚目のアルバムをレコーディングしていたとき、プライベートで悲しい出来事(妻アン・ジンヒョンさんとの死別)があり、その後はずっとアルバムを出す気持ちになれなずにいた。何度もアルバムリリースを検討して曲も作ったが、個人的に納得がいかず、一昨年にようやく再開した。同じ枠の中にずっといるような気がしていたため、脱皮して自分の枠から出てみようという思いを持って始めた」

 チョー・ヨンピルは「自分を捨てる」という決心をしっかりと実践、今回のアルバム・コンセプトを「深さ」ではなく「心地よさ」と定めた。これまで曲を自作するのに費やしたエネルギーを、今回は他人が書いた良曲を探すのに注いだ。しかし、問題は「チョー・ヨンピル」という名前の重みだった。アルバム・プロデューサーのパク・ヨンチャン氏は「多くの作曲家が『チョー・ヨンピル』の名を恐れて大変だった」と話す。「それならチョー・ヨンピルのことを知らない人に依頼してみよう」と考えた制作スタッフたちは海外に目を向けた。そうして集まった500曲以上を、チョー・ヨンピルは数十回繰り返し聞いて選んだ。マーティ・ドッドソン、カール・ウトブルト、アレクサンダー・ホルムグレン(「Bounce」共同作曲者)、マリア・マーカス、ニクラス・ルンディン、スコット・クリペイン(「Hello」共同作曲者)など、欧米圏の作曲家たちが主軸の「グローバル・ラインナップ」はこうした経緯で出来上がった。

■「PSYはわれわれの誇り」

 1980年代に日本でヒットを飛ばして韓流ブームの礎を築いたと評価されているチョー・ヨンピルだが「PSYはわれわれの誇り。本当に素晴らしいし、本当にすごい。このようなことが韓国で起こるなんて誰が思っただろう。なぜPSYと一緒なの?って(笑)。同じ時期に1位と2位になれてうれしい」と語った。

 同日午後8時から行われたショーケース・ライブではリナ・パーク、紫雨林、Guckkasten、IDIOTAPEらゲストシンガーによるトリビュート・ステージが繰り広げられた。そして最後に登場したチョー・ヨンピルは新曲「Bounce」「Hello」「ある日、帰路で」の3曲を歌った。さらに「ファンの皆さんのためにアルバムを1枚出すという気持ちでレコーディングした。うまくいってもいかなくても、とにかく気持ちがいい」と笑顔で語り掛けた。チョー・ヨンピルは5月31日から6月2日まで、ソウル・オリンピック体操競技場での公演を皮切りに全国ツアーに出る。

■帰ってきた「歌王」、アルバム売れ行きも絶好調

 発売日当日、「歌王」旋風の発生地は全国主要都市のCDショップだった。ソウル市内の永豊文庫鍾路店では午前10時30分、年齢も性別も関係なく直筆サイン入りCDを手に入れようという人々で長蛇の列ができた。蔚山から午前0時発の深夜バスに乗ってソウルに来たという会社員ヤン・ソクウさん(53)は「会社では『ヤン・ヨンピル』と呼ばれているほど大ファン。有給休暇を取って来た」と語った。車いすと車でこの日の朝7時に到着したというユン・ヒョンウさん(48)は「CDのパッケージを開けたらジーンとした。ポリオ(小児まひ)で外出もままならないが、チョー・ヨンピルさんの歌のおかげで人生を悲観したり、心がゆがんだりしないで生きて来られた」と語った。

 ニューアルバムのリード曲「Hello」は同日午後、韓国国内九つの音楽配信サイトでリアルタイムチャート1位を総なめにした。このうち「Bugs」では、午後4時30分現在でリアルタイムチャート1位「Hello」を筆頭に10位までの全てがチョー・ヨンピルの新曲になった。

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