イ・ミンギ(29)は華やかな20代を過ごした。バイクで疾走していた疾風怒濤の時代を経て、バンド活動、モデル活動もし、芸能人としてもスターダムにのし上がった。『おいしいマン』のような低予算映画から、制作費100億ウォン(約8億4700万円)が投じられた『クイック』、観客動員数1000万人を突破した『TSUNAMI-ツナミ-』、ホラーの要素をミックスさせたロマンチック・コメディー『不気味な恋愛』まで、さまざまな映画で多彩な姿を披露し、俳優としても幸せな時間を過ごした。

 それでもイ・ミンギは俳優として、盤石の地位を築いたというには、やや物足りない。映画『おいしいマン』で20代前半の孤独や心の痛みを表現したイ・ミンギはその後、なぜか才能を浪費しているようだった。

 イ・ミンギの才能を惜しむ人たちにとって、新作『恋愛の温度』はうってつけの映画だ。同作は、銀行でこっそりと社内恋愛をしていたカップルが別れた後、またヨリを戻す過程を描く映画。ケラケラ笑って共感しながらも、胸がチクッとする作品だ。イ・ミンギは別れた彼女をだんだん怒らせるが、再び恋に落ち、そのせいでつらい思いをする男を自然に演じきった。イ・ミンギは自分の長所をやっとつかんだように見える。

-『恋愛の温度』は普通のロマンチック・コメディーとはタイプの違うラブストトーリーですが。

 「感情のやりとりも良かったし、形式も良かった。理解もできるし、共感もできました」

-恋人と別れてから、またヨリを戻す物語。どんな点に理解・共感できたんですか。

 「僕は付き合っていた人と別れて、またヨリを戻したという経験はないです。ただし、この映画は男女間の話だけでなく、友人でも兄弟でも、人と人が関わったときに必ず味わう感情を描いていると思います。そういう感情に共感しました」

-演技がすごく自然。やっと自分の長所を見つけたような印象を受けましたが。

 「この映画は無理に何かを加える必要などなかったんです。物語に十分共感していたので、監督とも感情の程度を調整しよう、ということぐらいしか話をしていないです。僕はもう少しぶっきらぼうに演じようと思っていたんですが、監督はもう少し繊細に演じることを望んでいました。そうですね、他の映画ではそこにハマるように演じなければならないので、大げさに見えていたかもしれません。僕の長所は何かというと、計算しないことぐらいかな、よく分からない。一生懸命やっていたら、その道に立っていたように思います」

-バイクにも乗り、バンド活動もして、モデルに芸能人まで、同世代ならうらやましがる20代を過ごしました。それでも、まだ俳優としては満たされていない感じですが。

 「その当時は分からなかったんですが、振り返ってみると、自分は他人とは違うと考えていたようです。でも、昨年、自分のことをじっくり考える機会があり、僕は自分が思っているほど、賢くもないし、イケてる男でもないと思いました」

-何か嫌なことでもあったんですか。

 「個人的に良くないことがありました。人間関係の問題で。最初は相手のせいだと思っていたんですが、後になって、自分の未熟な部分が見えてきたんです。それで、昨年はすごく憂鬱(ゆううつ)でした」

-『恋愛の温度』で演じていた役の感情とも重なったのでは。

 「撮影期間とその出来事が重なってはいましたが、影響を受けたかどうかは分かりません。撮影中は、映画にだけ集中していたので」

-相手役のキム・ミニとの息がぴったりでした。キム・ミニの方が3歳年上ですが、どのように感情を合わせたんですか?

 「まず撮影中は、言葉遣いをタメ口にしました。だから、打ち上げでヌナ(お姉さんの意)と呼んだとき、すごく不自然でした」

-二人のシーンの中で、ロングテイクで撮っていた酒を飲むシーンがとても自然でした。

 「撮っているときはロングテイクだって知りませんでした。この映画はコンテ通りに撮ったのではなく、自然に演技をしているところをカメラが捉えるという形で撮りました」

-それで、二人の息が自然だったということですね。ベッドシーンも印象的でした。

 「ベッドシーンは実は長く撮ったんです。映画であんなにカットされるとは思わなかった。監督がOKサインを出さなかったので、その分長くなったんです。でも、監督は二人の幸せな様子は、できるだけ短くしたかったようです。他の幸せなシーンも全部カットされていたので」

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