最近はさまざまな分野の才能を持つアイドルが登場し、その活動範囲を本業の歌手だけでなく、演技にまで広げる「演技ドル」(演技のできるアイドル)も次第に増えている。

 トップ俳優は「出ればヒット間違いなし」として高いギャラに厳しい出演条件を提示する。しかも、次回作の撮影スケジュールが常に決まっており、キャスティングが難しい。それに、制作会社側は今、これまでの主演級俳優たちに飽きてしまった視聴者に新鮮なイメージを与えたいと考えている。そうした中、歌手として人気と知名度はあるが、演技力が不確かなため比較的安いギャラでキャスティングできるアイドルは、本当にありがたい新人俳優といえるだろう。

 現在ドラマや映画で活動している演技派俳優たちのほとんどは短くて5年、長くて10年以上も脇役をこなしてから数回、助演クラスで出演し、その後主演の座をつかむのが普通だ。しかし、アイドル出身の俳優はデビューしてから主演するまでほとんどが2年以下だ。

 演技派俳優と「演技ドル」がデビューしてから主演するまでの期間を具体的に比べてみた。

 まず、韓国映画界の「四天王」ならぬ「五天王」と呼ばれているチェ・ミンシク、ハン・ソッキュ、ソン・ガンホ、ソル・ギョング、キム・ユンソクについて見てみよう。

 ハン・ソッキュは大学卒業後、俳優になりたくて複数の劇団で面接を受けたが落ち続け、舞台俳優としてはスタートを切れなかった。27歳だった1991年にMBCの公募採用タレントでデビュー、94年に『ソウルの月』で主演した。無名時代から主演俳優になるまで3年かかったが、ほかの4人に比べれば最も無名時代が短い。

 ソル・ギョングは94年に舞台俳優としてデビュー、5年後の99年に韓国の巨匠イ・チャンドン監督に出会い、映画『ペパーミント・キャンディー』で演技派のトップ俳優として認められた。

 ソン・ガンホは91年に舞台デビュー、6年後の97年に映画『ナンバー・スリー』で主演し、数々の映画祭で演技賞を総なめにした。

 チェ・ミンシクは20歳の82年に舞台デビューし、12年後の94年にドラマ『ソウルの月』で主演した。

 キム・ユンソクは88年に舞台『欲望という名の電車』でデビュー、2006年の映画『タチャ イカサマ師』で主演ではなく助演で注目されるまで、なんと18年という長い年月がかかった。

 そのほかも見ると、キム・ミョンミンは8年、パク・シフは7年という長い時間を無名で過ごしている。

 では、次に韓国映画界やテレビ界の大きな流れとなっている「演技ドル」に目を向けてみよう。

 JYJのユチョンは2010年のドラマ『トキメキ☆成均館スキャンダル』で俳優デビューと同時に主演を務めた。その後『ミス・リプリー』『屋根部屋のプリンス』『ポゴシッタ』=原題=などで文句の付けようのない完ぺきな演技を見せ、どれも次々とヒットさせているため、アイドルというよりも俳優という呼び名の方がふさわしいともいわれている。

 少女時代のユナは、07年のドラマ『9回裏2アウト』で男性主人公に片思いする小さな役でデビュー。08年、高視聴率をマークした『君は僕の運命』でヒロインのチャン・セビョクを演じ、デビューから10カ月で新人賞を受賞した。そして12年『ラブレイン』で韓流スターのチャン・グンソクの相手役を演じ、見事にストーリーをリードする真の主演級女優に飛躍した。

 AFTERSCHOOLのユイは09年の時代劇ドラマ『善徳女王』で、主人公の敵役・美室(ミシル)の少女期を演じ女優デビュー。2年後の11年、『烏鵲橋(オジャッキョ)の兄弟たち』でチュウォン演じるファン・テヒに恋をするペク・チャウン役で主演級女優の仲間入りを果たした。今年はチャ・テヒョンと共に『チョン・ウチ』に出演、前にもまして優れた演技力を見せ、主演級女優としての実力を発揮した。

 JYJのジェジュンは09年のテレシネマ『天国への郵便配達人』でいきなり主演デビュー、ハン・ヒョジュと共演した。その後、ドラマ『Dr.JIN』『ボスを守れ』で安定した演技力を見せ、映画『コードネーム:ジャッカル』でソン・ジヒョの相手役を務めるなど、俳優としても活発に活動している。

 miss Aのスジは11年のドラマ『ドリームハイ』でデビュー、12年7月にドラマ『ビッグ~愛は奇跡<ミラクル>~』でコン・ユ演じる主人公に片思いするチャン・マリ役に抜てきされ、デビュー6カ月にして主演級女優になった。その後、映画『建築学概論』ではヒロイン役ハン・ガインの少女期を演じてブレーク、今や韓国映画界のオファー対象順位ナンバーワン女優といわれている、現在はイ・スンギとのドラマ『九家の書』の撮影を控えている。

 演技派俳優たちが長い年月をかけてつかんだ主演の座を、「演技ドル」たちは短期間で手にしたからといって、その演技力が演技派俳優たちと全く同質とはいえないだろう。

 演技派俳優よりも演技力が落ちる点は「演技ドル」が解決すべき課題の一つであり、俳優としての準備ができていないアイドルが歌手としての人気を背景にドラマ出演するなら、ヒットが見込める作品も不発に終わる可能性が高くなる。

 今後も「演技ドル」の活躍は続くと思われる。懸念と期待を同時に背負っているだけに、役作りや作品のために努力し、安定した演技力を見せてくれれば、彼らに対する視聴者の声援も途絶えることはないだろう。

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