いつからかキム・ガンウ(35)に「国民の義兄」という修飾語が付き始めた。ハン・ヘジンの姉と結婚したのが一つ目の理由。しかし、2002年にデビューしてから10年間、忙しく俳優活動をしながらも、固定したイメージを作らなかったのが、本当の理由だろう。

 最新作の映画『サイコメトリー』(クォン・ホヨン監督)は誰かの義兄、夫ではなく、俳優キム・ガンウに会える作品。彼は熱血刑事ヤン・クンドンに扮し、最初から最後まで物語を引っ張る。

 「完璧ではない刑事という設定でした。でも、ここで僕が少し欲を出しました。完璧な刑事が犯人を捕まえる話は面白くないじゃないですか。天然で人間的な刑事が、うまくいかないのに必死で犯人を捕まえようと努力すれば、観客が自分の側になってくれるのではないかと思ったんですよ」

 犯罪スリラーらしく、同作でのキム・ガンウはローラーコースターのように激しくドラマチックな感情をさらけ出す。熱血刑事らしく、激しい格闘や争いもいとわなかった。キム・ガンウは「いつもの倍、大変だった」と語った。

 「海外にはヒーロー物や超能力物が多いので観客に伝わりやすい反面、韓国では少し違うと思いました。マンガチックだ、現実性がないと感じられるじゃないですか。それを相殺させる方法がリアクションしかないんです。だから、(事件の唯一の目撃者である超能力者役の)キム・ボムとのシーンでは、もっと感情を出しました。動線も現場で生まれるような感じにしたので、すごく大変でした。髪もつかんで、本気でケンカしたんです」

 同作が俳優キム・ガンウを再確認できる場だとしたら、最近出演し、話題になったトークショー『ヒーリングキャンプ~楽しいじゃないですか~』は人間キム・ガンウを見られる場だった。司会の義妹ハン・ヘジンと共演し、妻への愛、普段の姿を淡々と打ち明ける彼の姿に、頼もしく奥深い男の魅力を感じた人が多かった。キム・ガンウは「男たちからは、心ならずも公共の敵になった」と恥ずかしそうにした。

 「普段も口数が少ないんですよ。今回も番組に出演するのがすごく不安でした。家族(ハン・ヘジン)が出ている番組なのに、視聴率でも落ちたらどうしますか。プライベートな話をするのがいいことなのかとも思ったし。得るものがあったとしたら、(視聴者が)僕をもっと気楽に見てくださるきっかけになったということだと思います。あの人も同じように生きてるんだなと」

 キム・ガンウは「俳優のように生きることが一番嫌だ」と言うことを躊躇しない俳優。「俺が俳優だ」と特別な存在のごとく、孤高に生きていくのを警戒しているという。わき目もふらず、こつこつと一生懸命、作品にだけ専念してきた俳優キム・ガンウの信念だ。いろいろな作品で多才なキャラクターを演じてきたが、彼の心をつかんだのは全て現実にいそうな人物たち。キム・ガンウは「すごくカッコよくて、優れていると惹かれない。あれぐらいはしそうだ、ああいう痛みがあるだろうなと思う人物がいい」と話した。

 人間キム・ガンウについて、自分ではどんな人間だと思っているのかと聞くと、「僕もよく分からない」という答えが返ってきた。

 「人見知りする方だからか、どっしりと落ち着いていて、静かだと思っている人が多いんですよ。でも、見た目とは少し違う面があります。若いころはかっとすることもあったし、血の気が多かったんですが、だんだん穏やかになったんです。自分を閉じ込めておくのが、ときどきイラっとすることもありますが、それも全て自分のせいです。誰かに“どんな性格か”と聞かれても、分からないですね。ずっとこのように波があるので。ある日は“ハイ”だったのに、ある日は“ダウン”して、それには別に理由なんてないんです。
でも、俳優は自分の性格を型にはめてしまうと、演技ができないと思いますよ。僕も自分をよく分かっていないから、楽なんだと思います。僕は頭で浅く演じることはできないので」

 キム・ガンウに今後10年の計画を聞いてみた。

 「かっこよく年齢を重ねたいですね。30代になるまで、幼く見えるというのがいつもコンプレックスでした。キャラクターの幅が制限されるので。これからは、普通のおじさんにはなりたくないです。コーヒーでも飲みながら話をしたい、セクシュアルな部分も失わない40代になっていけたらいいですね。ラブストーリーもできる40代に。あ、そういえば、最近しわが増えてきました(笑)」

ホーム TOP