「同じような設定で飽きた」

 ドラマから「ファンタジー」が消えた。

 昨年までは時間をさかのぼる「タイムスリップ」、呪いをかける「黒魔術」、魂が入れ替わるなど、さまざまなファンタジー要素がドラマにあふれていた。しかし、現在放映中あるいは今年放送が決まっているドラマでは、こうしたファンタジー要素が大幅に減っている。

 昨年上半期(1-6月)のドラマでファンタジー要素があったのはテレビ朝鮮『プロポーズ大作戦』、MBC『太陽を抱く月』『Dr.JIN』、SBS『屋根部屋のプリンス』、KBS『ビッグ~愛は奇跡<ミラクル>~』、tvN『イニョン王妃の男』など6作品に達した。下半期(7-12月)もSBS『シンイ-信義-』、MBC『アラン使道伝(サトデン)』、KBS『ウララ夫婦』などがファンタジー要素のある設定になっていた。

 ところが、今年上半期のドラマでファンタジー要素がある作品はMBC『九家の書』(4月スタート予定)とtvN『ナイン』(3月スタート予定)の2作品しかない。昨年放映が始まり7日に終了するKBS『チョン・ウチ』とSBS『大風水』は道術や武術などにファンタジー要素が加わっていたが、視聴率でも話題性でもあまり注目されなかった。

 ファンタジー要素が下火になっている原因について、地上波テレビ局のドラマプロデューサーは「複数の作品で同じようなパターンが繰り返されたりアレンジされたりしていたので、視聴者が食傷気味になっているのだろう」と語った。だが、政治的・社会的状況の変化を原因に挙げる人もいる。ドラマ評論家のコン・ヒジョン氏は「大統領選挙が終わり、新政権の方向性が決まった今年は、漠然とした希望を抱くよりも現実を認識して果敢に限界を越えていこうとする人が多いため、人間の欲望をリアルに描くドラマも増えてきた」と評した。

 ク・ボングンSBSドラマ本部長は「昨年は多くの人がファンタジーを夢見て苦しい生活を乗り切ろうとしたが、時間がたっても変わらない厳しい現実に疲れ、幻想を抱かなくなっている。これに伴い、ドラマもファンタジー要素を捨て冷酷な現実を見せるようになった」と語った。ユン・ソクチン忠南大学教授は「最近のドラマにはファンタジーという『白日夢』から覚めて厳しい現実を直視する登場人物が多い。だが、過酷な現実にひるまず生きながらも耐えず挫折を感じる人が増えれば、再び現実逃避の手段としてファンタジードラマが人気になるだろう」と分析した。

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