バラエティー番組『ハッピーサンデー』(KBS第2)の「男の資格」コーナーでは今「ファミリー合唱団」企画が好評だ。

 その中でも最も注目を浴びている参加者は、2008年10月に自殺した女優チェ・ジンシルさんの息子ファニ君と娘ジュニちゃんだ。10月2日はチェ・ジンシルさんの4回目の命日だった。チェさんの母親のチョン・オクスクさんに会って話を聞いたところ、その数日後に子どもたちの運動会があると教えてもらったので、応援のため2人が通う小学校に行ってみた。

 その小学校の運動会はよく晴れた10月の土曜日に行われた。校庭はあまり広くないが、そろいの体操着を着た子どもたちは、うれしそうな顔で運動会に参加していた。子どもたちも保護者も幸せそうな表情だ。小学校の運動会から発せられる心地よいエネルギーは今も昔も変わらない。ファニ君とジュニちゃんも体操着を着て、運動会本番に備え体をほぐしていた。友達と話したり、家族がどこにいるのか探したりしながら楽しく過ごしている。保護者席には祖母のチョン・オクスクさんと家族たちが座り、2人を温かく見守っていた。

■父親のチョ・ソンミン登場、両手に弁当

 小学生がいる家庭はどこもそうだろうが、2人にとって運動会は毎年秋に行われる家族の一大イベントだ。2人の父親で元プロ野球選手のチョ・ソンミンもこの日ばかりは学校に来て、子どもたちと楽しいひとときを過ごす。チョ・ソンミンは今年は姿が見えず、何か事情があるのかと思っていたら、運動会が始まって少したってから姿を現した。長身で選手時代と変わらぬ体格・容姿のため、校庭に着いた途端、視線がそちらに集まった。どこにいても自分の子どもはすぐに分かるのが親だというが、チョ・ソンミンも学校に着くなり子どもたちがどこにいるのかすぐに気付いた様子だった。子どもたちは別々の場所にいたが、父親に気付くと駆け寄り、うれしそうに言葉を交わしていた。サングラスにカジュアルパンツ姿で登場したチョ・ソンミンの両手には弁当箱が。子どもと食べるために持ってきたのだという。頻繁に行き来はできないが、チョ・ソンミンは父親としての役割を忠実に果たしていた。少し遅れて来てきまりが悪かったのか「父親参加の綱引きの順番が今年は変わってしまった」と悔しそうにしていた。

 まだ完全解決には至っていない大人同士の微妙な関係も、子どもたちの運動会と比べれば大したことではない。チョ・ソンミンは一歩下がって一人で子どもたちの姿を見守っていたが、子どもが競技に参加するときは一生懸命応援し、ダンスをするときはスマートフォンを取り出して動画を撮影するなど、温かい視線を注いでいた。ファニ君とジュニちゃんもそんな父親と頻繁に目を合わせていた。昼休みになるとチョ・ソンミンは違和感なく2人の家族がいる保護者席に来た。そして両手いっぱいに下げてきた弁当を広げ、一緒に食べた。前もって来ることを知らせていたわけではなかったが、この家族の運動会はごく自然だった。学校行事に大人たちが集まったことがうれしいのか、子どもたちも幸せそうな表情だった。弁当を食べ、運動会が終わるまでチョ・ソンミンはその場にいた。少し来るのが遅れ、父親参加の綱引きや徒競走には出られなかったが、子どもたちをいとおしそうに見つめていた。

■疲れるけど楽しい「合唱団」収録時間

 「収録が終わるとヘトヘトになるんです。指揮者のクム・ナンセ先生がかなり厳しく教えてくださっているようです。今回の収録では朝早く出て夜遅く帰ってくるんですよ。ファニは家に戻るなり、お風呂にも入らず寝てしまいます。ジュニも完全に夢の中。かわいそうな気もするし、子どもたちの心の状態が心配でもあったので『番組には出ませんっておばあちゃんが言ってあげようか?』と言うと、ジュニがとても悔しがって『絶対出るから』って。疲れても楽しいようです(笑)」

 テレビで見るそのままだ。学校と家を行き来する日常が続く小学校6年生と3年生にとって「男の資格」コーナーの「ファミリー合唱団」企画は、新たな活力を与えてくれた。2人は収録日を心待ちにしており、家族にとっても一緒に語り合える新たなイベントができた。

 「皆さんよくしてくださるので、子どもたちも参加できて幸せそうです。(お笑いタレントの)イ・ギョンギュさんはラーメンをごちそうしてくださったり、いろいろな話を聞かせてくださったり。(歌手の)キム・テウォンさんは以前、(チェ・ジンシルさんの実弟で歌手のチェ・)ジニョンに歌を作ってくださったのですが、子どもたちに『おじさんだと思ってくれていいよ』とおっしゃったそうで、ありがたいですね」

 チョンさんは初収録のとき以外は現場に行っていない。体力的なこともあるが、現場に行けば娘と息子のことを思い出してしまうからだ。誰にでも打ち解けられる性格を持つジュニちゃんのことを信じているのもある。ジュニちゃんは兄ファニ君よりしっかりしている。人見知りのファニ君より外向的・積極的な性格で、おばあちゃんと一緒でなくても愛想がいい。大人の方に先に近付き、雰囲気を良くすることができる。身長は156センチもあり、3年生の中で一番背が高い。

 ファニ君とジュニちゃんの出演について、ほとんどの人は喜んでくれた。チェ・ジンシルさんに対する愛情がそれだけ深いからだろう。また、子どもたちが立派に成長していることも確かめられるのでいいという声がほとんどだ。純粋な目で楽しそうに笑う子どもの姿に、多くの視聴者が同じような安堵(あんど)を感じ、感動している。

■インターナショナルスクール入学を準備中のファニ君

 子どもを本格的に番組に出演させるつもりなのか尋ねると、それは違うという。チョンさんは「子どもたちは今、勉強に専念しなければならない時期」と話した。特に中学校入学を控えているファニ君の進路に関してはいろいろ悩んでいる。

 「中学校に上がる時期ですが、普通の学校では自信がありません。思春期の子どもは敏感な時期でしょう。留学するべきか、どんな学校に通わせるべきか、いろいろ調べました。周囲には留学させた人も多かったのですが、私が一緒に行くことはできないし、一人での留学は心配で心配で…それも駄目だと思いました。あちこち相談したところ、インターナショナルスクールが良さそうだと。そこなら子どもと別々に暮らさなくてもいいので、本格的な準備に入りました。でもまだ分かりません。その時期になったら分かるでしょう」

 ファニ君は毎日、放課後に個人レッスンの先生と英語を勉強している。インターナショナルスクールに入るには一定のレベルの英語力が必要となるため、その準備に入ったのだ。一生懸命勉強し、試験に合格しなければならないため、チョンさんは全力でサポートしている。70歳を超えた祖母が孫たちと一緒にあちこち駆け回るのはかなりつらいが、できるだけ多くのアドバイスをもらい、手助けしようとしている。本当にいろいろ調べて勉強したのだろう。インターナショナルスクールやフリースクールに関する情報に非常に詳しかった。

 「周囲に子どもをフリースクールに通わせている方がいるのですが、いいらしいですよ。カリキュラムもいいそうですし。一度ファニの進路をよく見て、それからジュニやわたしも行動を共にするようになると思います」

 ファニ君の学校が決まったら、ジュニちゃんの学校も調べ、引っ越しをする予定だ。今はチェ・ジンシルさんが残していったソウル市瑞草区蚕院洞のビラ(低層高級マンション)に住んでいる。

■ジュニちゃんは絵など多方面に才能

 母チェ・ジンシルさんの子どものころにそっくりだといわれているジュニちゃんは、容姿だけでなく芸能方面の才能も受け継いでいる。人前で演技をしたり歌ったりするのが好きなジュニちゃんは、才能豊かだったチェ・ジンシルさんの子どものころにやはりよく似ているそうだ。絵を描くのが好きなのもその一つ。小さいころから絵を描くのが上手だったため、ジュニちゃんの作品は家のあちこちに張ってある。

 「ジュニは毎週土曜日に絵を描きます。気分も落ち着くから描きなさいと言っているんですが、本当に上手です。絵はファニも一緒に描きますが、2人が絵を描くのを見ていると本当にかわいいですね」

 ジュニちゃんには絵の素質がある。絵を描く時間が一番好きだそうだ。今まで描いた絵を集めると、だんだん実力が上がっているのが目に見えて分かるという。

 ジュニちゃんは家事を手伝ってくれるのかと聞くと「背が高いからそう見えるかもしれませんが、やっと満9歳になったところ」という答えが返ってきた。状況によるが、同い年の女の子が普通、家事を手伝えないことを知らない人はいない。

 「歌って踊るのも好きですよ。女の子なので見た目にもすごく関心を持っています。どこでそんな話を聞いてくるのか、体に良い食べ物やダイエットに役立つことを一生懸命話してくれますね(笑)」

■子どもたちの笑い声、そして心強いおばあちゃん

 チェ・ジンシルさんがこの世を去って4年がたった。そして頼りにしていた弟のチェ・ジニョンさんも姉と同じように逝ってしまった。これまで一番つらかったのは恐らく2人の母親のチョンさんだっただろう。幼い孫2人を一人で育てなければならないというつらい日々。頼りにできる所はどこにもない。朝目覚めた瞬間から眠りにつくまで、孫のために常に動かなければならないのだ。

 「年を取っているのに何ができるのだろうとも思いますが、2人を学校に通わせるだけで本当に忙しくて…。最近はファニは家庭教師の先生が家に来てくださるので少し楽になりましたが、塾に通っていたころは私が子どもたちの送り迎えをしました。学校に行って塾に行って…だからわたしも本当に忙しくて大変でした」

 それでも自分以外の誰にもできないと分かっているから、黙々とこなそうと頑張っている。子どもたちが残していったものも、整理しなければならないことが山ほどある。そのうちの一つが、チェ・ジニョンさんが住んでいた家。ずっと空き家になっていたが、そこを修理して再び人のぬくもりが宿るようにした。

 かなり長い時間にわたり語ったチョンさんだが、最後に遠い昔を懐かしむように娘とのエピソードを聞かせてくれた。一番幸せだったときの思い出の一つは、娘の海外ロケに同行したことだ。10年以上前の話をついこの間の話のように楽しく聞かせてくれたチョンさんがとても印象的だった。今のようにしっかりと頑張って暮らしていれば、ファニ君とジュニちゃんが立派に成長し、祖母を支えて母親よりももっといろいろな国へ連れて行ってくれる日が来るだろうと思った。

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