KBS大河ドラマの主演に、5年前にも主演したチェ・スジョンが決まったという話を聞いたテレビ関係者の間から漏れた言葉だ。KBSがこの十数年間に放映した大河ドラマを見ると、2000-02年『太祖王健(ワンゴン)』の王健(ワンゴン)役、04-05年『海神-HESHIN-』の張保皐(チャン・ボゴ)役、06-07年『大祚榮 テ・ジョヨン』の大祚榮(テ・ジョヨン)役と、タイトルロールをいずれもチェ・スジョンが演じている。その後10-11年の『百済の王 クンチョゴワン(近肖古王)』でカム・ウソン、11-12年4月の『広開土太王』でイ・テゴンが主演したが、8日から始まった全80話の『大王の夢』では再びチェ・スジョンが主演している。今回は三国を統一した新羅の第29代「武烈王」こと金春秋(キム・チュンジュ)役だ。

 チェ・スジョンが誰もが認める「時代劇トップ俳優」なのは事実だ。しかし、KBS公式サイトの掲示板などには「チェ・スジョンの安定した演技が楽しみ」という意見とともに「渤海国を興し(大祚榮)、海上を掌握し(張保皐)、後三国を統一して高麗を建国(王建)したチェ・スジョンが、今度は三国を統一(金春秋)する」「高宗(コジョン=第23代高麗王)、純宗(スンジョン=第34代高麗王)、チェ・スジョン」と、KBSの「チェ・スジョンのローテーション起用」を皮肉るコメントも少なくない。今年初めにはタレントのチェ・ヒョジョンがKBS旧正月お笑い特番に出演した際「大祚栄なのか、太祖王健なのか、張保皐なのか、視聴者も混乱する。チェ・スジョンは今後50年間、時代劇出演禁止」と話した。KBSがこうした世間の見方を知らないはずはないが、なぜ再びチェ・スジョンを起用したのだろうか。

■なぜまたチェ・スジョン?

 まずはとにかく「時代劇でチェ・スジョンの演技が安定しているから」という見方が多い。ある地上波テレビ局幹部は「チェ・スジョンはせりふ回しや発声が正確で、歴史的な流れを重視するKBSの時代劇にピッタリの演技スタイルを持っている。かつて時代劇に数多く出演したユ・ドングンの系譜を引き継ぐ俳優だ」と話す。ドラマ制作会社代表は「長いときは2年近くも撮影が続く現場では、何百人ものスタッフを率いるリーダーシップが必要だが、時代劇の経験が豊富なチェ・スジョンはその求心力を持っている」と評した。6日の『大王の夢』制作発表会でシン・チャンソク・プロデューサーが「時代劇でのチェ・スジョンの存在感は、韓国サッカー界に例えれば朴智星(パク・チソン)のようなもの」と語ったのもこのためだ。

 さらに、チェ・スジョンが出演したKBSの時代劇はすべて視聴率30%を上回っているのも重要な要因の一つだ。カム・ウソンの『百済の王 クンチョゴワン(近肖古王)』(首都圏最高視聴率13.2%、AGBニールセン・メディアリサーチ調べ、以下同じ)、イ・テゴンの『広開土太王』(同21.5%)を大幅に上回る数字だ。

■「韓国特有のブラック・コメディー的配役」

 一部の専門家は「KBSにもそれなりの事情はあるだろうが、『チェ・スジョン再登板』は結局、数字が保証されている俳優だから楽に視聴率が稼げるだろうというKBSの安易さと、苦労せずに人気とギャラを手に入れたがる一部出演者の現状に甘んじている姿勢が生み出した韓国特有のブラック・コメディー的配役」と指摘する。

 出演者について、コ・ヨンタクKBSドラマ局長は「1話当たりの実質放映時間は大河ドラマで50分、ミニシリーズドラマで70分だが、時間当たりの出演料契約などの関係で、ミニシリーズの出演料は大河ドラマのそれよりも2倍近く高い。また、大河ドラマは制作費の問題で1話当たりの出演料が1000万ウォン(約70万円)以下の俳優をキャスティングしなければならない。結局、1話当たりの出演料が数千万ウォンというスター俳優は時代劇に出ない」と話す。あるテレビ局のプロデューサーは「木村拓哉や妻夫木聡のような日本のトップ俳優は自負心を持ってNHKの時代劇に出ているが、韓国のスター俳優たちにそうした自負心や歴史的な意識はなく、カネの論理だけでドラマを選ぶケースが多い。だから結局はおなじみの俳優ばかりが時代劇に出ることになり、視聴者が不満を感じるのだろう」と分析した。

 制作会社イギム・プロダクションのチョ・ユンジョン代表は「失敗を恐れず、幅広い役に挑みたいという俳優はあまり多くない。同じようなキャスティングを繰り返すテレビ局の安易さも問題だ」と言った。ドラマ評論家でもあるユン・ソクチン忠南大学教授は「(KBSは)公共放送局なら新しい俳優や演出を思い切って発掘・養成すべきなのに、最近は視聴率という強迫観念にかられてそうしたチャレンジが少なくなった。KBSも安定性重視のキャスティング方針を捨て、型破りな試みをいろいろとしていくべき」と批判している。

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