▲40歳を過ぎても10代の少年のような遊び心も、20代の若者のような恋に対する初々しさも伝わってくる目。映画『光海、王になった男』で王と大道芸人の1人2役を演じているイ・ビョンホンは「特定の姿だけを見せるような演技はしたくない」と言った。/写真=李泰景(イ・テギョン)記者

 イ・ビョンホン(42)は少年と男の境界線に立っている俳優だ。体と頭の中はすっかり大人の男だが、その瞳だけはいつも子どものように揺れている。映画『悪魔を見た』(2010年)のように強く冷たい男の役でも、『我が心のオルガン』(1999年)のように恋に夢中の純粋な青年の役でも、いつもそうだった。そんなイ・ビョンホンがチュ・チャンミン監督の『光海(クァンヘ)、王になった男』(19日公開)で鋭く狂気に満ちた朝鮮の王「光海」と、純朴で正義感あふれる大道芸人「ハソン」の1人2役を演じることになったのは、ある意味自然なことなのかもしれない。

 ソウル市竜山区のカフェで先日、イ・ビョンホンにインタビューした。今月中にブルース・ウィリス、ヘレン・ミレンらが出演する『RED 2』撮影のため韓国を離れる。イ・ビョンホンは「映画館に行ったら、自分が出ている映画とそれを見るお客さんを見るのがとても楽しみだったが、今回はそれができなくて残念。以前は自分が出ている映画を30回くらい見たこともある」と語った。

-わい談をする大道芸人の役というのは意外だ。特に「梅花器(朝鮮王朝時代の王の便器)」にしゃがむシーンは「イ・ビョンホン」だけに余計に面白い。

 「意外だと思われることが意外です。俳優以外に歌手や司会などのほかの活動をしていれば、いろいろな面をお見せできますが、僕はそれを演技だけできちんとお見せしなければならない。演技をするときは、特定の姿だけを見せるようなことはしたくありません」

-この作品を選んだ理由は?

 「小説の読者の気持ちになって台本を読みます。自分が演じる役を気にしながら読んでいたらきちんと読めません。『光海』は面白かった。『自分が一国のリーダーになったらどうなるだろう』とか『今、自分が置かれている環境は嫌だ。この国のリーダーになって変えたい』と誰しも一度は思ったことがあるのでは? 映画に自分を当てはめて痛快感や満足感を得るようになります。そして『梅花器』のシーン、あれがあるからこの映画を選んだのもあります」

-映画『G.I.ジョー』でハリウッド映画デビューを果たしたが。

 「最初は台本を3ページ読むのに1時間かかりました。辞書を引きながら読んでも、意味が分からないせりふや部分が多かったです。そのときは原作が漫画だということを知らなかったため『こんな漫画みたいなストーリーで、覆面をかぶって二刀流で飛び回る役なんて』と考え、断ろうと思っていました」

-それでも演じたのはなぜ? ハリウッドでずっとアクションの演技をしていたが…。

 「ハリウッドで知名度が全然ないのに『この役をやりたい』と言ったら、それは正気の沙汰ではありません。しかも僕は全くの新人。今は自分で作品を選べるほどの自力が付くまで、知名度を高めるための戦略的な選択をすべきです」

-ハリウッド進出のためさまざまな努力をしていたようだが。

 「皆さん、そう思っているようですが、計画したこともないし、ハリウッド進出にも受け身でした。『地上満歌』(97年)を撮ったときは、こんなことがあろうとは想像もしていませんでした(イ・ビョンホンはこの映画でハリウッド進出を夢見る無名の俳優を演じた)。運がいいのでしょう」

-小憎らしい優等生が言いそうな言葉だ。

 「本当です。僕は作品のたびに20キロも減量して演じるようなことはできません。もちろん努力はしますが、ほかの俳優たちもみんな一生懸命にやっているのだから、取り立てて話すほどではないし」

-本紙が昨年行った専門家アンケートでは「恋愛物の第一人者」と評価された。

 「本当にうれしい言葉です。恋愛物の演技こそ、繊細な表情や言葉では説明できない感情を観客に伝えなければならないから。せりふを言わなくても思っていること、感じていることをお客さんが受け止めてくださるというのがいい」

-映画以外ではあまり表に出ない方では?

 「俳優を始めたころ、先輩方に保守な姿勢を教わりました。先輩方は『俳優は普通の人としての面をたくさん見せてはいけない』と言っていました。観客が映画を見るとき、『人間イ・ビョンホン』から映画の役に入り込むまでの時間が短くなければならないから」

-最近は恋の話(女優イ・ミンジョンとの交際)が大きな話題を呼んでいる。刺激的な記事やインターネット上の書き込みも多い。

 「自分自身と、周りの人たちが知っているイ・ビョンホンと、『俳優イ・ビョンホン』の距離はかなりあると思います。自分でも、自分の記事やその下に書き込まれたコメントを読むと、自分ではない『誰か』を思い描きます。台本を読みながら役を頭に描いていくときのように。ふとそれが自分のことだと思うと…(ため息)。あまり気にせずに暮らしてきたのですが…」

-それは今は気になるということ?

 (しばらくの間、考え込んで)「人間ですから気にならないということはありません」

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