『いかさま師~タチャ』(以下、『いかさま師』)の「チョン・マダム」が『10人の泥棒たち』の 「ペプシ」になって帰ってきた。この二つの役を演じた女優キム・ヘスは「チョン・マダムが世俗的な欲望の化身だとしたら、ペプシは誰もが欲し、守りたいと思っている本能的な欲望を表す人物」と語った。役は違うが、キム・ヘスはやはりキム・ヘスだった。映画の中で強烈な存在感を示し、視線をさらう。現在公開中の映画『10人の泥棒たち』に出演しているキム・ヘスにインタビューした。
■「『トップスター軍団』との仕事、私も初めて」
 『10人の泥棒たち』にはキム・ヘスをはじめキム・ユンソク、イ・ジョンジェ、チョン・ジヒョン、キム・ヘスク、オ・ダルス、キム・スヒョンらトップスターたちが総出演している。このようなトップスターたちが1作品で一堂に会するのは珍しいことだ。キム・ヘス自身も「初めて」という。そして「余韻が長く続きそうな仕事」と当時を振り返った。
 「それぞれの魅力や才能を持つ俳優たちが同じ目的で集まったが、わたしとしては彼らの個性や普段の姿を観察できたのが良かった。キム・ヘスク先輩から一番年下のキム・スヒョン君まで、俳優として一流なのはもちろん、人間としてもとても立派な方々ばかり」
 トップスターが勢ぞろいしたが、自分1人で目立とうとしたり、摩擦が起きたりするようなことはなかったそうだ。
 「皆、共通の目標とそれぞれの役割をきちんと分かっていた。自分がすべきことは何か、逆にタッチすべきでないことは何かをよく分かっている。心が通じ合ったのだと思う。それぞれの俳優たちの激情や孤独はあっただろうが、それが見えないようにお互いにそっと背中を押し合った。そうした現場に再び巡り会うのは難しいだろう」
 『いかさま師』で一緒だったキム・ユンソクと再び共演したのも感慨深い。「素晴らしい俳優だと思う。作品を見抜く洞察力は俳優以上。監督としての視点も、プロデューサーとしての視点も持っている。そうした俳優は多くはない」
■「チョン・ジヒョンのことは前から好きだった」
 公開前からキム・ヘスとチョン・ジヒョンのライバル関係が話題になっている。韓国を代表する人気女優二人が同じ作品に出演するというのだから当然だろう。キム・ヘスは「わざとではないだろうが、監督さんもそうしたこと(ライバル関係だと話題になること)はお分かりになっていただろう」と言って笑った。
 「(チョン・)ジヒョンのことは前から好きだった。彼女ならではの才能や魅力があり、ほかの俳優とは明らかに違っていたし、それがうまく発揮されるだろうと楽しみな人の一人だった。そうした点で、今回の映画の『エニーコール』役を見事にこなしてくれたのはうれしいし、拍手を送りたい。そして本人もそうした喜びを十分に味わってほしい」
 そう言うと、キム・ヘスは先輩らしくチョン・ジヒョンに関する「深くていい話」を教えてくれた。
 「ああいう女優はなかなか出てこないし、彼女が演技を続け、伸びていくのはあらゆる人にとって喜びだと思う。今回本当にハマリ役に巡り会ったが、彼女がそうしたときのための準備ができていなかったら、あのような役はこなせなかっただろう。ジヒョンは準備をしてきた女優で、チェ・ドンフン監督はそれを見抜く目があったということ」
 キム・ヘスがチョン・ジヒョンとライバル関係といわれる理由は「変わらぬ美ぼう」にもある。だが、本人は「以前とは変わった。でも目に見えては変わっていないということだろう。やはり仕事をするときは敏感になろうと頑張っている。しかし、それ以外では同年代の皆さんと同じ」と言って笑った。

■「私は進歩のスピードが遅い女優」
 キム・ヘスはしっかりした演技力を土台に独自のカラーを鮮明に打ち出した女優の1人だ。そんなキム・ヘスを支持するファンが多いのも当然だろう。だが、本人は「わたしのファンがどこにいるのか分からないが…」という。
 「俳優というのは、必要とされなければ仕事ができない非正規職。華やかだが不安定な職業。でもわたしは自分が持っているものを考えると、随分長い間仕事をさせていただいていると思う。とても成長がゆっくりで、進歩するスピードが遅くてもわたしを見守ってくださるのだから、本当に感謝の言葉しかない」
 「謙遜(けんそん)では」と言うと、キム・ヘスは首を横に振り「これは本心」と言った。それでも『10人の泥棒たち』に対する自信は固かった。
 「『10人の泥棒たち』は観客の皆さんも満足していただける映画だと思う。お客様によってこの映画から得る満足度は違うだろうが、あらゆるものが綿密な計算の下で描かれている映画のため、満足度も確実に高いだろう。チェ・ドンフン監督の『ビッグスウィンドル』はドラマチックな逆転劇やしっかりとしたプロットが良かったし、『いかさま師』はそこに映画的で洗練された美しさが加わった。そして『チョン・ウチ 時空道士』は観客からすれば全く別の試みとして受け入れられた可能性のある映画だった。『10人の泥棒たち』は監督が一番得意なジャンルで、シナリオも豊かで深くなった気がする」

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