▲写真=キム・テファン記者

 晴れた春のある日、ソウル・新村にある大学のキャンパスで、ノーメークながら笑顔がまぶしいシム・ウナの姿をキャッチした。大学に入り直したのかと思ったら、キャンパス内にある幼稚園に2人の娘を通わせているという。「女優」シム・ウナから「妻」シム・ウナとなり、時折公の場に姿を現すたびファンの渇きを癒やしてくれたが、今ではすっかり「母親」シム・ウナになっていた。

 引退から12年がたったが、常に気にかかり、いつでもまた会いたくなる「トップ女優」シム・ウナ。今年4月の国会議員総選挙で夫チ・サンウク元自由先進党広報担当が正式に出馬するかもしれないと報じられ「内助の功」を発揮する姿が見られるのではと期待されたが、同氏は党に公認されず、シム・ウナの姿を目にする機会も消えた。そうしたいきさつで残念に思っていたところ、新村にある大学にシム・ウナが姿を現すという話を聞いた。夫の母校でもある、この大学の付属研究機関に、娘2人が通っているという。いつも「内助に徹し、育児に専念している」と近況が紹介されているが、「育児に専念している姿」を確めようと足を運んでみた。

■高水準教育が行われている研究中心の教育機関

 シム・ウナの娘たちが通うが大学付属研究機関では、子どもたちが中心となり、遊びを核にした開放主義教育が行われている。幼稚園児はもちろん、小学生や保護者、教師を対象にした教育プログラムが実施されているが、大学が運営しているため一般の幼稚園とは外観からして異なる。小さな丘にある赤レンガの2階建ての建物は、まるで大学の研究所のようだ。

 記者はここに勤めていた臨時スタッフからシム・ウナについて話を聞くことができた。ここではシム・ウナは自分の名前ではなく「○○ちゃんのママ」と呼ばれており、娘たちは母親によく似てかわいいという。2人は現在6歳児クラスと4歳児クラスに通っているが、小さいころから通っているため家族同然だそうだ。元スタッフは「シム・ウナさんを見掛けることもよくある」と語った。シム・ウナが保護者会に出席するかどうか聞くと、出席するのはもちろんのこと、普段から送り迎えもするほどだという。親が有名人の場合は家政婦が子どもを送り迎えするケースが多いが、シム・ウナは(毎日ではないが)自分で娘2人を迎えに来るなど、子どもの教育に熱心とのことだ。「化粧をしたり着飾ったりしていることはほとんどないが、元女優だからか、飾り立てなくてもとてもきれい」と元スタッフは語った。
■ママ友とあいさつ、普通の生活送る

 正式な授業終了時間は午後2時だが、1時を少し過ぎるころから車が1台、また1台と駐車場に入ってくる。ここは幼稚園バスを運行していないため、保護者が子どもの送り迎えをする。車から降りた母親たちは、毎日顔を合わせる仲なのであいさつし、子どもたちが出てくるのを待つ。世間の普通の母親たちと同じように、ここに来る母親たちも育児や教育という共通の関心事があり、自然に会話を交わしていた。授業が早く終わった子どもたちは遊び場や裏山で遊び、母親たちが来るのを待っていた。

 授業時間が終わり、子どもたちが次々と出てくると、駐車していた韓国製スポーツタイプ多目的車(SUV)からシム・ウナが降りてきた。化粧っ気が全くなく、ナチュラルで安らぎを感じるたたずまいだ。スキニージーンズにダークブラウンのロングカーディガンを合わせ、シンプルなベージュのトレンチコートを羽織る姿はまさに、動きやすい「ママ・ファッション」。華やかな女優だったことをおくびにも出さない素朴な装いは、その場にいたほかの母親たちと比べても質素で目立たなかった。

 三々五々集まってきた「ママ友」たちと親しげにあいさつを交わす様子から、ここがシム・ウナにとってよく来ている場所だということがあらためて分かった。娘の迎えのため幼稚園のドアを開け、つかつかと入って行く様子は、映画『美術館の隣の動物園』でときめきを胸いっぱいに抱えていたヒロイン、チュニに見えた。ほかの子どもたちにも気軽に声を掛けるシム・ウナは、心豊かで温かい母親そのものだった。

■『お姫様風』は吹かせない、シム・ウナそっくりの娘たち

 シム・ウナは幼稚園の中に入ったきり、しばらく出てこなかった。母親が迎えに来ても、子どもたちは友達ともっと遊びたがっているようだ。迎えに来ていた車はかなり少なくなったが、シム・ウナは急いで家に帰ることなく、子どもたちが友達と走り回るのを見守り、ほかの母親たちと話しながら過ごした。

 明るい春の日差しの下、遊び場のそばで子どもたちを見詰めるシム・ウナは幸せそうだった。子どもたちの遊びが長びきそうだったからか、シム・ウナは子どもが脱いだコートや、子どもの物がいっぱい詰まったバッグを持って出てきた。車に荷物を積んでいるときも、シム・ウナはママ友たちとあいさつし、話し続けた。とても親しげで、話す間も笑顔のまま。かなり時間がたち、迎えの車がほとんどいなくなると、シム・ウナは幼稚園に入り、子どもを連れて出てきた。娘たちと一緒に歩く顔からは笑みが絶えない。手をぎゅっと握りしめて話しながら歩く母娘の姿は美しかった。

 話に聞いた通り、娘たちはシム・ウナにそっくりでかわいかった。いわゆる「お姫様風」とはほど遠い子どもたちの服装も印象的だ。楽そうなスニーカーにズボンをはいており、質素なものを好むシム・ウナのセンスが感じられる。ジーンズ好きで知られるチ・サンウク氏のシンプルなスタイルもかいま見えた。

 芸能界トップの座を捨て、普通の主婦の道を選んだシム・ウナは、このように特別でも華やかでもない、だが大切な日々を送っていた。もうすぐ満40歳を迎えるシム・ウナだが、その顔から輝きが消えないのは、こんなにもかわいい娘たちがいて、平和で美しい日常があるからだろう。

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