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「選手の息遣いが聞こえる」 仁川サッカー競技場ルポ
19世紀半ばまでは小さな漁村にすぎなかったが、現在は世界的な港湾都市に成長した仁川で、アジア最大のスポーツの祭典、2014年仁川アジア大会が開催される。チョソン・ドットコムはアジア最大のイベントの成功を祈り、大会参加国・地域の人々に仁川のことを知ってもらう機会を設けた。
5月は「家庭の月」に当たることから、取材対象を「家族」とした。韓国人男性と結婚し韓国で暮らすハティディエム・ウィンさん(25)=以下、ウィン=の家族がその主人公だ。ウィンさんは韓国在住3年以上になるが、普段は2人の子どもの育児に追われ、旅行を楽しむ余裕もない。そんな忙しい妻のために、夫のチャン・フンスンさん(43)は先日、家族と共に仁川を訪れることにした。
普段から、朴智星(パク・チソン)が所属するイングランド・プレミアリーグの試合をテレビで観戦しているウィンさん夫妻は、今年3月に新たに誕生した仁川サッカー専用競技場を訪れた。1号線の桃源駅に直結している同競技場は、まるで鳥が空を飛んでいるかのように屋根が流線型に開いており、力強い印象を受ける。
競技場に入ると、ウィンさんは「選手たちの息遣いが聞こえるくらい、観客席とピッチが近いですね」と言って驚いた。収容人数2万910人を誇る大型競技場だが、ピッチと観客席が近く、その間隔は5メートルも離れていないように感じた。
この日は、同競技場をホームとしているKリーグ仁川ユナイテッドが、釜山アイパークと対戦した。仁川は、大企業を母体とする企業球団ではなく、地方自治体が運営する市民球団だ。
子どもたちを連れてやって来たウィンさん一家は、リラックスしながら観戦するため、テーブルのある座席に座った。
仁川の看板スター、ソル・ギヒョンと金南一(キム・ナミル)がピッチに姿を現すと、ウィンさんは「2002年ワールドカップ(W杯)では韓国の試合に感動したが、そのときの英雄たちが目の前にいるなんて、夢のようだ」と言って喜んだ。
試合が始まって会場の熱気が高まると、観客の歓声はいっそう大きくなった。小学生から中年男性までさまざまな年齢層のサポーターたちが、力強い掛け声とともに選手たちを応援した。この日は日差しが強く暑かったが、競技場はアウェーの応援席を除いて大半の座席が屋根で日陰になっており、観戦に支障はなかった。
ウィンさんは「気温の高いベトナムでは、サッカー観戦は大変だが、韓国のサッカー場は座席や施設が整っており、観戦するのが楽しい」と語った。夫のチャンさんも「普段はテレビでしか試合を見ておらず、今回サッカー場に初めて足を運んだが、とても面白く、子どもたちも大喜びだ」と話した。
試合では仁川と釜山の激しい攻防が繰り広げられたが、結局0-0の引き分けに終わった。残念な気持ちで競技場を後にしながら、ウィンさんは「2年後にはここでアジア大会が開かれるので、ベトナムも本大会に出場して、このような素晴らしい競技場で試合をしてほしい」と語った。
10年に行われた広州アジア大会で、ベトナムは金メダル1個、総合24位に終わった。ベトナムはこれまで1度もアジア大会を開催したことがないが、19年大会の招致に向けて準備を進めている。
ベトナムではまた、人気の韓国ドラマが毎日テレビで放映されるなど、韓流ブームにも沸いている。韓流人気のおかげで、ベトナムの四年制大学のうちすでに12校で韓国語学科が新設され、2000人以上の学生が韓国語を専門的に学んでいる。
ベトナムは国民全体の70%以上が農業に従事する農業国家で、コメ、コショウ、コーヒーは世界3大生産国・輸出国となっている。韓国との貿易も活発で、10年には貿易額が130億ドル(現在のレートで約1兆円)に達している。