視聴率40%という大記録を目前にした『太陽を抱いた月』。同ドラマが人気を呼んでいるのは誰の力かと聞かれれば、まず「キム・スヒョン」の名前が浮かぶ。キム・スヒョン以外のイ・フォン(キム・スヒョン演じる朝鮮王朝時代の仮想の王)はもう考えられないほど、キム・スヒョンの人々を魅了する力はすさまじいものだった。愛する人に向かったイ・フォンの切ない悲しみは、ドラマの回が進むほど、視聴者たちの恋煩いならぬ「キム・スヒョン煩い」を深めているが、ドラマを見ることでしかその痛みを和らげる特効薬もない。『太陽を抱いた月』=キム・スヒョンといわれるほどの「キム・スヒョン・シンドローム」は、新しい俳優アイドルの誕生と成長を予感させている。

■大木になる芽…子役人気の元祖

 キム・スヒョンの子役を演じたヨ・ジングに、視聴者たちが「中学3年生の男の子にこんなにときめいていいのだろうか?」と夢中になったように、キム・スヒョンも子役時代、同じような話を耳にタコができるほど聞いたという。主人公の水泳部の友人役を演じたデビュー作『キムチ・チーズ・スマイル』の後、ドラマ『ジャングルフィッシュ1』『クリスマスに雪は降るの?』『ジャイアント』に出演したが、これは現在のキム・スヒョン・シンドロームを巻き起こす予告編だったといえるだろう。

 『クリスマスに雪は降るの?』はコ・スの除隊復帰作ということ以外にも「リトル・コ・ス」ことキム・スヒョンの演技で話題を集めた作品だ。出演したのはわずか2話だけだが、哀愁を帯びた瞳がコ・スよりもいいという評価もあったほど。将来有望ということにこの時から気が付いた視聴者も多かった。

 『ジャイアント』では、父の死を目撃した後、「絶対悪」のチョ・ピルヨンと対立する幼いソンモの怒りを見事な演技で表現したが、大先輩チョン・ボソクにも引けを取らない堂々とした演技だった。このころから、キム・スヒョンの名前の後には「名演技」「名子役」という修飾語が付くようになった。キム・スヒョンの熱演が、ドラマ自体を引っ張っていく役割をしたのは言うまでもない。「子役シンドローム」の元祖だったといえるかもしれない。

■『ドリームハイ』、俳優アイドルの誕生

 視聴者にキム・スヒョンの存在感を感じさせたのはやはり『ドリームハイ』だ。アイドルを夢見る若者たちの物語を描いたドラマだったこともあり、前半はテギョン、ウヨン(共に2PM)、スジ(miss A)、ウンジョン(T-ARA)、など、アイドルスターたちにスポットライトが当たった。しかしドラマが始まるとすぐ、立場は逆転した。視聴者たちは「キム・スヒョン一人で演技をしている」「恋煩いの気分」などというコメントが相次いだ。ドラマが終わった後も、慶尚道の方言をつい口にしてしまうほど、演技にどっぷり浸っていたというキム・スヒョン。歌やダンスを習うために、3カ月にわたり芸能事務所JYPのレッスン生として生活しながら頑張ったという。「俳優アイドル」はこうして努力に努力を重ねて誕生したといえる。

 キム・スヒョンが生み出す話題もアイドル以上だった。ネットユーザーたちはキム・スヒョンの学生時代の卒業写真から、ロックバンドの元ボーカルという父親の履歴、大学の友人とのエピソード、CMに出演していたときの姿、あらゆる過去の写真などを見つけ出し、それをネットに掲載した。そんなキム・スヒョンに関する写真や話題は、いつも検索ワードのトップを飾った。そして、キム・スヒョンの過去の出演作品をもう1度見直すようになったのだ。このような状況は、現在放送されている『太陽を抱いた月』でも再現されている。

■初めての大人の演技、本格的なラブストーリーもばっちり

 初めて制服を脱いだキム・スヒョンは「男」になって戻ってきた。ドラマが始まる前は、初めての大人の演技に加え、初の時代劇ということで、心配する声も多かった。前半に出演した子役たちの演技が素晴らしかったため、大人の俳優たちにプレッシャーがかかったのも事実だ。しかし明るかった王子の時代とは違う、暗く孤独な王は、独特のオーラを放ち、一挙に視聴者を魅了した。

 同ドラマは舞台が過去であるだけで、普通のラブストーリーとまったく変わらないといえる。そしてキム・スヒョンは、いつの間にかそんなドラマの重みを十分に消化できるだけの力量を見せ付けている。演技では大先輩といえるハン・ガインとのロマンスをリードするのもキム・スヒョンの役割だ。このためキム・スヒョンは、ほとんど家に帰れないほどハードな撮影スケジュールの中でも、時間を割いて一人で演技を研究するなど、ドラマに全力を注いでいる。

 このドラマが終わると、初の映画『泥棒たち』の公開が控えている。マカオを舞台に繰り広げる泥棒たちのスリルあふれる物語を描いたこの作品では、チョン・ジヒョンとロマンスを繰り広げる。キム・スヒョンはいつの間にか、こんなに素敵な大人になって視聴者を魅了している。

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