▲300億ウォン(約20億円)かけて制作された超大作『マイウェイ 12,000キロの真実』の主演オダギリジョー。独特のファッションで有名な彼はこのほど、頭の半分をそり上げた。韓国では『揺れ動く青春』のシンボルとして、多くの女性ファンを抱えている。写真提供=SKプラネット株式会社、CJ E&M

 映画『血と骨』の崔洋一監督は、俳優オダギリジョー(35)について「彼の美しさは演技が終わった直後の2-3秒に現れる。この世ではない所にいるような表情、空(くう)を見つめる姿、紅潮したほおは非常に魅力的だ」と言った。25日、カン・ジェギュ監督の『マイウェイ 12,000キロの真実』(以下、『マイウェイ』)PRのため訪韓したオダギリジョーにソウル・江南のホテルで会った。オダギリジョーは途中で話を止めたり、言葉を考えたりする時、静かに視線を移した。崔監督が言った「この世ではない所にいるような表情」を目撃した瞬間だった。

 岡山県出身、2000年にテレビドラマでデビューしたオダギリジョーは、犬童一心監督の『メゾン・ド・ヒミコ』(06年)に出演、韓国でブレークした。女性客は特に、彼の人生から一歩下がったところにいるような表情や細い手脚、投げやり感のある動きにため息をついた。また、ドラマ『時効警察』(同)ではモジャモジャ頭に黒縁メガネでコミカルな演技を披露、映画『東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン〜』(07年)では病にかかった老母と切ないやり取りを交わす息子役で、観客の涙をさらった。「僕が見たい映画、『この監督にしか撮れないだろう』と思う映画に出演します。映画の個性や芸術性も重要です」と話す。

 「『マイウェイ』は僕が目指している映画ではなく、好きで見る類の映画でもありません。でも、『マイウェイ』の台本を見たら、地獄のような撮影現場が思い浮かびました。人生で地獄を体験できることがあるでしょうか。もともと韓国が好きで、ここに8-9カ月間滞在できるということにも心が引かれました」

 オダギリジョーは女優イ・ナヨンとキム・ギドク監督の『悲夢』(08年)に出演。キム・ギドクとカン・ジェギュは、商業性などで韓国映画界の両極にある監督だ。「韓国映画や韓国の俳優について評すると?」と聞くと、「『悲夢』も『マイウェイ』も一般的な韓国映画ではないので、今までの経験だけで韓国映画について語るのは難しいです。でも、韓国で映画を撮影して一番良かったのは、キム・ギドク、カン・ジェギュの両監督やチャン・ドンゴンさんなどと知り合ったことです。これからは韓国に来るたび連絡するでしょう」と答えた。

 オダギリジョーは、『マイウェイ』の序盤で、日本軍に徴兵された韓国人をいじめる悪役を演じている。日本人が否定的に描かれている役だが、負担に思わなかったのか聞いてみると、「俳優がそんなことを気にする必要はありません。いい人、優しい人に見せる必要があるでしょうか? それよりも悪く見える方がいいと思います。善良なイメージが付いてしまったら、少し失敗しても悪い所が目に付くじゃないですか。僕は実際にいい人、優しい人ではないから、そんなイメージが付くことを望んではいません」と言った。

 オダギリジョーと言えば、「自由奔放な魂」というイメージだ。社会の価値観に反旗を翻す役を多く演じ、普段も難解な服装でみんなをアッと言わせる。「僕の価値観に従って好きなことをして、所属事務所から怒られたこともたくさんあります。昨日も、日本で記者会見の時に『ガムをかんでいた』とマネジャーにひどくしかられました。俳優は大勢の人々に見られる仕事だし、(みんなに)僕のことを常識がない人だと思われるかもしれないから、それをコントロールしようとする所属事務所やマネージャーの立場は十分分かります」。

 「小さいころから芸術で自己表現したくて、写真・音楽・絵などいろいろやりましたが、どれもあまり才能がありませんでした。でも、そうしているうちにこのすべてを融合できる映画監督になりたいと思うようになりました。それなのに、今どうして俳優をしているのか分かりませんね。いつまで俳優をするのかはっきりは言えませんが、面白くなくなればやめると思います。面白くなくても続けるのは、観客に失礼です」

 インタビューの終わりに、彼は突然「最近は陶磁器作りに関心があります」と言った。「家にある食器を見ると、すごくシンプルなものしかないんです。実用的ですからね。僕が(自ら陶磁器を作り)少し個性のようなものを吹き込みたい。同じように、エンターテインメントもシンプルなものが大衆に愛されます。僕がそのような作品に参加して(作品の)何かを変えられたらいいなと思っています。芸術的な、想像以上のものになればと。それが一瞬だとしても」。

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