チャン・ドンゴンとオダギリジョーは似ている点が多い。韓日を代表するイケメン演技派俳優と呼ばれていること、夫婦共に有名俳優だということ、そしてほぼ同じ時期に初めての子供が生まれたこと…。「うちの子はまだ『あんまん』みたいだよ」「うちの子はやっと少しシュッとなってきたよ」と、ベビー用品のプレゼントを交換し合う2人は、世界一の「親バカ」だ。

　互いを褒め合う言葉を聞いていると、友情以上のものも見えてくる。映画『マイウェイ 12,000キロの真実』（以下、『マイウェイ』）撮影のため、韓国で8カ月間、ラトビアで1カ月間過ごし、築いてきた信頼も厚い。第二次世界大戦の渦中、日本軍からソ連軍、そしてドイツ軍の軍服を着て1万2000キロの道のりを共にした朝鮮人キム・ジュンシクを演じたチャン・ドンゴンと、日本人・長谷川辰雄を演じたオダギリジョーに会った。

■チャン・ドンゴン「息子ミンジュンはパソコン見て『パパ』…」

　「結婚前には感じなかった家族に対する思いが、苦しいほど強くなって」。幸い、妻で女優のコ・ソヨンは息子ミンジュンにチャン・ドンゴンの写真を何度も見せながら「パパですよ」と教えたので、父親の顔は分かるという。「パソコンの映像チャットでミンジュンとたくさん話しました。そのためか、赤ちゃん向けの『物の名前カード』でパソコンの絵を見せると『パパ』と言って喜ぶそうです」

　早く家族と過ごす日々に戻りたいというチャン・ドンゴン。映画『ブラザーフッド』以降、戦争映画には出たがらなかったが、カン・ジェギュ監督のために再び軍服を着た。

　男たちの厚い信頼で固く団結した撮影現場にも、伏兵はいた。それは、特に厳しかった昨冬の寒さ。「氷点下17度、体感温度マイナス25度まで下がりました。今思い出しても歯がガチガチと音を立てるよう。日本の軍人は軍服の下に服を重ね着することができませんでした。映画の撮影では根性が必要な時がありますが、この映画はあらゆるシーンがそうでした」

　もともとはマラソン選手だったという設定のため、クランクイン前にひざの手術を受け、同じ役の10代のころを演じたト・ジハンと共に専属コーチの指導の下、マラソンのトレーニングを受けた。結婚後に増えた体重も8キロ減量。このように徹底的に鍛えて臨んだ撮影だったが、日本語の演技は今振り返って見ても無念さが残る。

　オダギリジョーは、チャン・ドンゴンにとって最高のパートナーだった。あまりにも個性が強いので先入観を持っていたのも事実だが、実際に会ってみるととても礼儀正しく、人間味にあふれていた。「辰雄役を演じるのは誰がいいかと話し合っていたときから、僕はオダギリジョーさんがいいと思っていました。彼の映画『血と骨』（2004年）を見てどんな俳優なのかと気になり、会ってみたいと思いました」
　最後に、チャン・ドンゴンは力を込めて言った。「韓国戦争（朝鮮戦争）にも第二次世界大戦にも『参戦』したので、もう戦争映画は出たくない」と。「その理由は？」と問うと、「『マイウェイ』で戦争映画の頂点が撮れたと自負しています。だから、観客の皆さんに見ていただき、気に入ってもらえれば」と答えた。

■オダギリジョー「一度もカン・ジェギュ監督の映画を見たことがないのに…」

　オダギリジョーはカン・ジェギュ監督が有名だということは知っていたものの、映画は1本も見たことがなかった。チャン・ドンゴンを知ったのも、キム・ギドク監督の『コースト・ガード』（02年）を通じてだ。では、なぜ『マイウェイ』に出演する決心をしたのかと尋ねると、オダギリジョー自身も首をかしげた。「この映画には朝鮮の京城、モンゴル、ロシア、ドイツ、フランスのノルマンディー、イギリスのロンドンなどが舞台として登場しますが、全て現地でロケをすると思っていました。いろいろな所へ旅行できるので面白そうだと思ったんです。ところが、撮影は韓国とラトビアだけでした」。そして「詐欺だ」と冗談を言い、みんなを笑わせた後、まじめな顔で「カン・ジェギュ監督が誠意と熱意を持ってオファーしてくださった姿にとても感動しました」と本当の答えを聞かせてくれた。

　この作品では軍国主義的な人物を演じなければならないというプレッシャーがあったようだが、オダギリジョーは全く気にしていなかった。「当時の日本の状況では、国と家族のためにそうした道を選択するのが自然なことでした。韓国映画で韓国の軍人が悪く描かれないように、日本映画もそうです。韓国映画で日本の軍人を演じるという点で、この映画になおのこと魅力を感じたのだと思います」

　辰雄はキム・ジュンシクと出会い、捕虜として戦争を経験し、独善的で残酷だったかつての自分の姿に気付く。大きな変化を説得力を持って表現したその演技に賛辞を贈ると、オダギリジョーは逆にチャン・ドンゴンを称賛した。「僕とは違い、チャン・ドンゴンさんは最後まで信念がブレない人物を演じなければなりませんでした。僕がセリフを間違って理解し、違う演技をしたとしても、辰雄が変わっていく課程の一部だと観客の皆さんは思うでしょう。しかし、チャン・ドンゴンさんは少しでもブレてしまえば目に付くので、その方がはるかに大変だったと思います」。チャン・ドンゴンに対するオダギリジョーの称賛は尽きなかった。そして「韓国で撮影した8カ月間に日本で大地震が発生しとても心配しましたが、共演俳優たちやスタッフが自分のことのように親身になって心配してくれたのは、とてもありがたかったです」と語った。

　「戦争映画は僕にとって今回が最後になると思います。演技についてどのような評価を受けても大丈夫です。悪者に見える日本の軍人役に対し、悪意を持つ方々にののしられさえしなければ…」