スターインタビュー
インタビュー:ソン・イェジン「作品は直感で選ぶ」
女優ソン・イェジンがスイートなホラー作品で戻ってきた。映画出演は3年ぶりだ。今回の映画はラブコメディーにホラーの要素をミックスさせた、一風変わったジャンルの作品。
新作『不気味な恋愛』は、霊能力のためなかなか恋愛ができない女性と、幽霊が大嫌いなホラーマジシャンの恋を描いたもの。
ソン・イェジンは主人公「ヨリ」のように、人にはない能力でも持っているのだろか。演出はファン・インホ、見慣れぬ名前だ。ソン・イェジンはまたも新人監督の作品に出演することになった。
監督が作り上げる「芸術作品」ともいえる映画の世界で、まだ実力の程を検証されていない新人監督。俳優にとってはそれだけで負担に感じるはずだ。にもかかわらず、ソン・イェジンのフィルモグラフィーの半分は、無名の新人監督のデビュー作ばかりだ。『永遠の片想い』『私の頭の中の消しゴム』『白夜行』『ファム・ファタール』などがふと頭をよぎる。
ソン・イェジンも「悩まなかったと言えばうそになる。決めるのは決して簡単なことではなかった」と正直に打ち明けた。今回『不気味な恋愛』を選んだのは、シナリオが非常に魅力的だったからだという。自分の感をもう1度信じてみたというわけだ。
「監督、ストーリー、キャラクター、相手役、もちろんすべて大切。でも結局、最後の決め手はやっぱり感。心の動く作品を選んでしまう。これまでの結果を見れば、私の直感もまんざらではないのでは(笑)」
自分の年齢を意識したのか「初々しい演技はもうそろそろできなくなるから」とつぶやいたが、目を細めて笑う顔は、まだ愛らしいという言葉が似合う。
考えてみると、二人の夫を手に入れようとする挑発的な妻(『妻が結婚した』)のときも、ぶりっ子100%の軟派のプロ(『ナンパの定石』)のときも、甘い雰囲気を忘れたことのなかったソン・イェジン。白い肌に長い髪、これまで清純派女優の代名詞と呼ばれてきたソン・イェジンだが「全部過去のこと」と首を横に振る。
すました女優のイメージはもう完全に消えていた。目の前に座ったソン・イェジンは、器用なキツネというよりはどっしり構えた牛のイメージに近かった。高校3年のとき、CMモデルとしてデビューしたころからの付き合いだという所属事務所代表とは、現在まで13年間、ずっと手を組んでいる。これだけ見ても、一般的な女優とは少し違う。
ソン・イェジンは「所属事務所だけでなく、スタイリストとも10年以上の付き合い。学校に通っていたときも、親友とばかり仲良くしていた。人間の性格はあまり変わらないようだ」と話す。
ソン・イェジンを発掘したパルンソン・エンターテインメントのキム・ミンスク代表は、業界では「女優調教師」と呼ばれている。ファン・シネ、イ・ミヨン、キム・ハヌルなどが、キム代表が育てた女優たちだ。ソン・イェジンの後には、イ・ミンジョン、ムン・チェウォンなどのトップスターを育ててきた。
「清純派美人の座を同じ所属事務所の後輩に譲ることになったが、寂しくはないか」という質問に、ソン・イェジンは「寂しいというよりは不思議な感じ」とし、これまで10年間の女優生活を振り返った。
「最初に所属事務所に入ったときは私が最年少だったのに、当時いらっしゃった先輩たちは皆いなくなり、今では私が先輩という立場になってしまった。昨年からは相手役も年下(『個人の趣向』のイ・ミンホ、『不気味な恋愛』のイ・ミンギ)で、最近は撮影現場に行っても、私より若いスタッフがほとんど。何だかぎこちない感じで不思議」
デビュー当時の初々しい写真を見て驚くこともあるという。でも、当時に戻りたいかという質問には、はっきり「ノー」と答えた。
「やっと仕事を楽しめるようになったところ。20代のころは本当につらかった。自分にえさも与えず、ただむちばかり打っていじめていた。隙を見せるのが嫌な性格なのでなおさらだ。芸能界の先輩や後輩たちと心を開いて付き合えるようになったのも最近のこと。次回作『タワー』でもスタッフと仲良くなって、撮影が終わった後、家に帰りたくないほどだった。わたしは気持ちに余裕ができた、今の自分の方が好き。だからこれからがもっと楽しみ」
『不気味な恋愛』はソン・イェジンが20代に別れを告げる作品であると同時に、新しい出発を知らせる作品だ。ソン・イェジンの言葉を借りれば「悲しいと思ったら怖くなり、さらに怖くなりそうだと思っていると何だかおかしい、意外性の多い作品」だとか。公開は12月1日。