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旅コラム:テディベアと一緒に歴史の旅 /慶州
慶州といえば、韓国の歴史と遺跡に触れることのできる代表的な場所というイメージがある。復元されたソウルの伝統家屋や古宮。慶州に残る本物の伝統は、そんなソウルの再現された家屋に対する“解毒剤”のような役割を果たしているといえるかもしれない。
慶州の小さな骨董(こっとう)品の店で見掛ける素朴な土器、崇高な古代の遺物、遺跡など、新羅王朝千年の首都を代弁する歴史的な情緒があちこちにそのまま残っており、慶州を訪れる旅行者たちの胸をときめかせている。
子どもたちを連れてそんな慶州の歴史をよりダイナミックに感じてみたければ、慶州のテディベア博物館に足を運んでみるのはいかがだろうか?古代新羅王朝の全てが分かりやすく理解できる展示館だ。
テディベア博物館といえば、テディベアの歴史がひと目で分かるよう、テディベアの変化の過程が展示されていると想像する人が多いだろう。まるで人間の進化の過程をたどるかのように、綿を丸めて作った最初のテディベア人形から、iPhone(アイフォーン)を手にした最先端のテディベアまで、さまざまなテディベアが展示されているという想像は、博物館の入り口をくぐるとすぐに的外れだということに気付くだろう。
もちろん、そのような展示がないわけではないが、この博物館のテーマは完全に違うところにある。パリのルーブル博物館の縮小版を連想させるピラミッド型の建物を通り過ぎ、展示室に入ると、奇抜な想像力と斬新な演出で作り出された童心の世界に浸ることができる。
テディベア博物館は慶州以外にも、済州島、坡州、南山、雪岳山、そしてハワイにもあるが、それぞれ違うテーマと展示内容で運営されている。中でも慶州のテディベア博物館のメインテーマは「天才科学者」ロバート・グラント・エイトケン博士が作ったタイムマシーンに乗って、慶州の過去へタイムスリップするテディベアの家族、というもの。
テディベアの家族は慶州の遺跡を回りながら、歴史を一つ一つ体験する。旅の途中でクマ集団の攻撃を避けたり、恐ろしい恐竜たちと対決する場面もある。テディベアを登場人物に仕立て、新羅の歴史を物語として再構成しているコーナーもある。
このほか、子どもたちに人気のスリル溢れる恐竜館、鼈主簿伝や人魚姫などの童話をアレンジした海底館、瞻星台・雁鴨池・石窟庵などを舞台にテディベアが新羅の歴史を聞かせてくれる新羅館などもあり、2時間かけて全ての展示室を見て回ると、慶州の名所と遺跡を全て観光したような気分になれる。少なくとも子どもならば、実際に遺跡を回るよりも、テディベアがたくさん並んだ模型の方が楽しめるかもしれない。
さらに、有名な芸術作品と同じポーズを取っているテディベアも目を引く。また、世界のデザイナーたちが手掛けたテディベアの作品を見ながら、テディベアの由来と歴史を調べる知ることもできる。展示館を全て見学した後は、3D(立体)映画館で短い映画を見てみよう。想像以上に楽しめるはずだ。
博物館を出る前には、たくさんのテディベア商品で溢れるお土産ショップも要チェックだ。慶州でしか見られない新羅時代の伝統衣装を着たテディベアを抱いて家路に着いたなら、一味違った慶州の旅の余韻を味わえることだろう。慶州の古い遺跡は、子どもたちにとって多少難しく退屈に感じられるかもしれない。そんな場合には慶州テディベア博物館にぜひ足を運んでみよう。子どもたちの目線に合わせた展示で、新羅の歴史を楽しく学ぶことができるはずだ。
マイケル・エリオット記者(オンラインブロガー、放送人)