▲ハン・ヒョジュは7日、釜山市海雲台区のホテルでインタビューに応じた。「『ただあなただけ』は大人のための童話。こんな切々とした恋をしてみたいですね」。/写真=キム・ヨンウ記者

「わたしが優等生? 普通の25歳が知ってることは全部知っています」

 釜山国際映画祭(BIFF)オープニング作品となったソン・イルゴン監督の『ただあなただけ』(20日公開)でハン・ヒョジュが演じるヒロイン・ジョンファは、事故で両親を失う。自身も目に傷を負い視力が落ちていくものの、底抜けに明るく素直な女性だ。ソ・ジソブ演じるチョルミンはかつて名の知れたボクサーだったが、ボクシングをやめてからは駐車場の管理人として生計を立てている。どん底の暮らしをしてきたチョルミンだが、ジョンファと恋に落ちたことで新たな人生を始める力がわき、一度はあきらめたボクシングを再開する。ところが、チョルミンはジョンファに視力回復手術を受けさせようと危険な試合をすることを決心、二人の愛の前に大きな壁が立ちはだかる…。

 7日、釜山のあるホテルでハン・ヒョジュ(24)に会った。ジョンファ役はハン・ヒョジュにとって自分の服のようにぴったりの役だ。すでにドラマ『華麗なる遺産』や『トンイ』で苦難の中にあっても愛らしく清純さを失わないヒロインを演じ、成功している。しかし、インタビューでは、清く明るい女性のトレードマークである「声が出ない笑顔」ではなく「ハハハ」と声を上げてよく笑った。

 『ただあなただけ』は、最近の映画では珍しい、泣ける恋愛映画だ。ハン・ヒョジュは「百パーセント愛だけをテーマにした映画をやりたいと強く思っていました。誰もが『お決まりのラブストーリー』と思っているもので感動を与えたいと…」と話す。「みんな口では『永遠の愛なんて現実的ではない』と言いながら、このような愛に憧れたり夢を見たりするでしょう?」。

 釜山国際映画祭の開会式(6日)にこの映画が上映された時、世間の注目は映画の完成度や出演者の演技よりも、トップスターであるハン・ヒョジュとソ・ジソブのベッドシーンに集まった。この映画のベッドシーンは二人が肌をあらわにするものではなく、二人の情の交わりを悲しくも切々と描いている。「思いもよらない世間の反応に寂しい思いをしたのでは?」と聞くと、ハン・ヒョジュの声は大きくなり、言葉の調子が硬くなった。「映画、ご覧になりましたか? 皆さんが期待なさるようなベッドシーンではないでしょう? 映画を見てもまだあんな記事が出るのは本当に理解しがたいですね」。

 ハン・ヒョジュは、これまでもジョンファのように清く明るい役を演じ続けてきた。演技面で「変身」といえるようなこれまでと違った役を演じたことがないという意味だ。これについて「ドラマでは今後も今のように清く明るい役が続くでしょう」と話した。「『華麗なる遺産』を撮影していた時、通りがかりのおばあさんがわたしの手を握りしめ『ありがとう』と言ってくださり、鳥肌が立ちました。以前は自分のために演技をすると思っていましたが、前向きなヒロインは苦労して暮らしている方々にとって大きな力になるということを知りました」

 その代わり「『演技面での変身』は映画でお見せします」と語った。「がらりと一気に役柄を変えるのは大変そう。皆さんが考えるような一般的な悪役ではなく、わたししかできないような悪役を一度やってみたいですね」

 ハン・ヒョジュはドラマ『春のワルツ』の直後に出演したイ・ユンギ監督の『アドリブ・ナイト』について、自分にとって最も意義のある作品だと話した。「与えられた仕事ができないのがとても嫌なんです。女優になったばかりのころ、わたしは(演技が)できないとは思っていませんでした。ですが、『春のワルツ』では自分で思ったほど演技ができなくて、次から次へと限界にぶつかりました。『わたしはこの程度しかできないの』という恥ずかしさを感じました」。だが、『アドリブ・ナイト』の撮影では「さまざまな方法で演技にアプローチできることを知り、自信を取り戻せました」と話す。

 ハン・ヒョジュにはスキャンダルもなければ、アンチもいない。演技の秘訣(ひけつ)については「台本を一生懸命分析するだけ」と答えた。「優等生のよう」と言うと、「正しい道を進もうと思っています。一つ分かればすべてが分かります」と語った。「何を知っている?」と重ねて尋ねると「普通の25歳が知っていることは全部知っていますよ。この年で、わたしが演じてきた役のように純真なほうが変でしょ? わたしは純真ではありませんが、純粋に生きようと頑張っています」と笑った。

 インタビューが終わるころ、ハン・ヒョジュは「自分に関する記事は全部読んでいますし、記者の方のお名前もすべて書き留めています」と語った。記者が驚くと、ハン・ヒョジュはちゃめっ気たっぷりの目で「冗談ですよ。記事は全部読みたいと思っています」と言い直した。「この仕事(女優)が変わっているのは、売れている時は周囲の人々が盛り上げてくれるから気持ちも舞い上がってしまいますが、こうした状態が続くような気がして、自分を客観的に見ることができなくなることです。ほかの人たちがわたしに向ける視線に気付かなければ、自分自身を失ってしまうかもしれませんから」。

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