「日本社会で感じた違和感が映画を作らせた」
昨年、日本の映画賞を総なめにした『悪人』
韓国で9日から公開


 昨年、日本の映画評論家たちは「映画『悪人』で、新たな希望を見いだした」と口々に絶賛した。「テレビ局が制作する軽い大衆映画が主流となっていた日本映画界に、作品性と大衆性を兼ね備えた映画らしい映画が登場した」というわけだ。

 『悪人』は昨年、19億円の興行収入を記録した大ヒット作品だ。日本アカデミー賞では主演男優・女優賞など5部門で受賞し、主演の深津絵里はモントリオール映画祭でも主演女優賞を受賞した。さらに映画専門誌『キネマ旬報』で「2010年日本最高の映画」に選ばれたこの作品は、吉田修一の同名小説を、『69 sixty nine』『フラガール』の李相日(リ・サンイル)監督が映画化したものだ。

 映画は、殺人を犯した悪人と、その周囲の人々を通じ、人間の本性と人間関係に対する疑問を投げ掛ける。祖父母の下で孤独に育った祐一(妻夫木聡)は、インターネットのチャットサイトで知り合った女性、佳乃(満島ひかり)を殺害する。その後、祐一は同じサイトで知り合った別の女性、光代(深津絵里)と恋に落ち、逃避生活を始め、祐一の祖母は孫を待ち続ける。

 『悪人』の韓国での公開(9日)を目前に控えた今月2日、韓国を訪れた李監督にソウル・往十里の映画館でインタビューした。

―小説のどんな点に魅力を感じたのか。

 「08年の春に小説を読んだが、登場人物と日本の社会に対する生き生きとした細かい描写が良かった。作家が共にシナリオを作りたいと言ってきたので、一緒に書いた」

―主演・助演俳優の演技が素晴らしい。

 「小説を映画化するという話を聞いて(トップスターの)妻夫木聡が男性主人公をやりたいと連絡してきた。主役を誰にしようかと悩んでいる時、彼のことは思い浮かばなかったので、少し意外だったが、私の知らない意外な面があると思いキャスティングを決めた。深津絵里は小説を読んだ後、女性主人公として一番最初に思い浮かんだ俳優だった」

―社会の中心よりも周辺部を主に扱っているようだが。

 「元々興味があるというよりは、興味を持とうとしている。われわれが生きていく中で見逃したり、通り過ぎてしまうことが多い中で、立ち止まってそのようなこと(社会の周辺部)に目を向けるべきではないか。皆が『当然こうではないか』と断定すると、違和感を感じる。日本社会に違和感を感じ、違う視点から解釈する上で、在日韓国人だというアイデンティティーも影響しているのではないかと思う」

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