長い年月をかけて荒波に削られた巨大な岩がびょうぶのように広がっている。その横にはゾウやライオン、昇天する竜の形をした岩もある。

 自然が作り出した「神秘」が随所に見られるこの地は、韓国の西海(黄海)最北端の島、ペンニョン島だ。


 5月23日午前8時、京仁高速道路を走り、仁川沿岸旅客ターミナルに到着すると、朝から数百人の観光客でにぎわっていた。

 船に乗り波に揺られること約4時間。午後1時近くになって、ようやくペンニョン島の竜機浦船着場に到着した。船着場の前には「ヒョンビンがペンニョン島に来たことを甕津郡民は歓迎します」という大きな横断幕が掲げられていた。おそらく「人気俳優ヒョンビンが海兵隊の一員として守っているペンニョン島」ということをアピールしているのだろう。


 そして、横断幕の裏手に輝く砂浜が目に止まった。そこは沙串海水浴場。海岸だが、世界に2カ所しかない天然の飛行場でもあり、天然記念物第391号に指定されている。

 全長3キロ、幅250メートルの海岸は細かい砂からなり、乾くと飛行機が着陸できるほど地面が固くなるという。実際に海水浴場に入り、海岸を歩いてみると、足跡さえつかないほど固かった。


 次の目的地へ向かおうとしたとき、海岸に着陸していた軍用ヘリコプターが見えた。海水浴場が実際の飛行場として使用されている場面を目の当たりにし、あらためて驚いた。

 次に、海水浴場を取り囲む頭武津に向かった。景勝地第8号に指定されている頭武津は、まるで将軍たちが頭を突き合わせ会合をしているかのように見えることから付けられた地名だ。


 「西海の海金剛」とも呼ばれる頭武津には珍しい岩がある。その名は頭武津ソンデ岩。この岩は、朝鮮第15代王・光海君の時代(在位1608-23年)に帰郷した李大期(イ・デギ)という将軍が「古い神の最後の作品」と称賛した岩という言い伝えがある。

 海から突き出た岩が空に向かってすっくと立ち並ぶ姿は、まるでびょうぶを広げたかのように見える。なぎの日は下に降り、間近で鑑賞することもできる。


 その後、沈清閣に向かった。北朝鮮に最も近いこの地には、韓国の昔話『沈清伝』のヒロイン「沈清」の銅像があり、沈清が身を投げた海「印塘水」、ここから北方の北朝鮮黄海道にある「長山串」が見える。また『沈清伝』にまつわるパンソリ(唱劇)・映画・古書・レコードなどを集めた展示館もあり、観光スポットになっている。

 このほか、沈清閣では望遠鏡を使いアザラシ岩を鑑賞することもできる。アザラシ岩は、海水に入った馬のような形をした岩で、アザラシ約300頭が生息している。


 潮の満ち引きの時間帯に合わせれば、アザラシをじっくり観察できる。万一タイミングを逃してしまっても、頭武津で運航されている観光遊覧船に乗ればアザラシに出会うことができる。

 最後に向かったのは大豆石海岸。ここは、豆ほどの大きさの小石が海岸に無数に敷き詰められている。船着場前にある細かい砂からなる沙串海水浴場とはまた違った趣の風景だ。海岸沿いを一歩一歩踏みしめるときの砂利の音が何とも心地よい。


 海岸を通り過ぎて宿に向かう途中、淡水湖を彩る赤い夕焼けが目に入った。さらに湖のほとりを歩いていくと、湖の上に浮かぶ夕日も私の歩調に合わせ、山の峰々の間にゆっくりと姿を消していった。

■ペンニョン島へのアクセス
公共交通機関を利用する場合
-各地域の鉄道駅-ソウル駅-東仁川駅-仁川沿岸埠頭(ふとう)旅客ターミナル
-各地域のバスのターミナル-仁川総合ターミナル-仁川沿岸埠頭旅客ターミナル

■海上交通のご案内(気象条件などにより変更になる場合があるため各船会社にお問い合わせください)
仁川沿岸埠頭旅客ターミナルから出港
-マリンブリッジ号(エースマリン)、デモクラシー号(清海鎮海運)、プリンセス号(ウリ高速フェリー)で約4時間

■観光案内
仁川広域市甕津郡観光文化課観光計画チーム、観光開発チーム、民宿支援チーム
ペンニョン面事務所

■ペンニョン島の名物料理と特産品
名物料理-そば、天然物の魚の刺し身、冷めん、黒ヤギなど
特産品-イカナゴの魚醤、カニ、ヨモギ、ワカメ、昆布、ナマコ、カキなど

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