冬は海が見たくなる季節だ。夏でもないのに海が見たくなるのはどこか矛盾しているようだが、冬の海には独特の魅力がある。

 冷たい海の風を思い切り吸い込むと、胸の中がスッとする。人けのない海岸では、思わず物思いにふけってしまう。そんな冬の海の魅力を探しに、仁川・長峰島へと向かった。

 暗い空に雪が舞い、肌を切るような冷たい潮風が吹き抜ける仁川・永宗島の三木船着き場。待合室では長峰島行きの旅客船を待つ人たちが、ストーブの前で体を温めている。定刻に近づくと、長峰島行きの旅客船がカモメの群れと一緒にやって来た。


 長峰島行きの船の上を吹く風が旅の興奮をかき立てる。波が船にぶつかっては、白い泡となって崩れる。島を訪れた人たちは、海を眺めながら、長い間胸の中にため込んだ心配事を、海に吐き出しているかのように見えた。

 雲の間からそっと顔を出した太陽の日差しが作り出す金色の海の道に従って約40分進むと、ついに長峰島に到着した。

 船から降りると、船着き場の前に緑色のバスが止まっていた。本土で買った荷物を抱えた島民たちの後について、そのバスに乗った。長峰島の唯一の交通手段である「長峰農漁村公営バス」は、船の到着時間に合わせ、1時間に1本運行されている。


 「どこまで行かれますか」と聞くバスの運転手に、「終点まで」と答えると、バスはすぐに出発した。バスには一人旅を楽しむ数人のほか、島民らが乗車していた。

 5年以上、長峰島でバスの運転手をしているキム・チャンスさん(47)は、「冬の長峰島は一人旅の客が多い。写真を撮りに来る人もたくさんいる」と話す。

 長峰島には広い4車線の道路はないが、山と村を渓流のように流れる素朴な2車線の道路が島を網羅している。道の両側には大きな針葉樹林がそびえ立ち、影を落としている。木影に包まれた道を10分ほど走ると、あっという間にバスは甕岩海水浴場に到着した。

 バスから降り、引き潮で干潟になった海岸を歩いてみた。緩やかな傾斜の砂浜と、樹齢100年を超える松が生い茂る森が見える。屏風のように広がる景色を写真に収めるため、干潟の中に入った。湿った砂に足を取られないよう気をつけていたが、案の定、ズボッと足が泥の中にはまり、靴が脱げてしまった。つくづく、長靴を持ってくるべきだったと後悔した。


 「ビュー」。広い干潟の真ん中で、遠吠えのような風の音が話しかけてくる。時間が止まったような長峰島の豊かな自然の中で、生きている自分の存在を再発見した。その記憶を写真に収め、海岸の上に残った足跡を波が消していく。

 再びバスに乗り込み、「ハンドゥル海水浴場」を通って、終点の長峰3里「鎭村海水浴場」に到着。バスから降りると、遠くに腰を曲げてカキを採っているおばあさんたちの姿が見えた。

 「たくさん採れましたか」と声を掛けると、「午前8時から始めて、7時間ずっとこの姿勢で採り続けている」と言いながら、手でトントンと自分の腰をたたいた。70歳という年齢を忘れたかのように、厳しい寒さの中で作業しているおばあさんが可哀そうでもあり、頼もしくも見えた。


 「一人で旅行しているのかい? ご飯は食べた?」と聞かれた。まだ食事はしていないと言うと、採れたての新鮮なカキを幾つか口の中に入れてくれた。おばあさんの優しさで胸がいっぱいになった瞬間だった。

 午後4時。海の向こうから雨雲がかかったと思うと、やんでいた雪が雨になって再び降り始めた。雨宿りも兼ねて、昼食を取るため、急いで鎮村海水浴場近くの食堂に入った。

 冬の長峰島では、島で採れた新鮮なマナガツオやテナガダコを味わうことができる。温かいスープを飲みたかったため、オキシジミガイが入ったカルクグス(めん料理の一種)を注文した。貝とめんを食べ、貝の出汁で白く濁った熱々のスープを飲むと、寒さで冷え切った体が解けていくようだった。


 食堂の主人は「長峰島ではマナガツオ、サッパ、テナガダコ、ハマグリ、ホンビノスガイ、オキシジミガイがおいしい」と説明してくれた。

 たくさんの人で賑わう海岸より、静かな海を散歩したいという人には、仁川甕津郡北島面長峰島がオススメだ。手つかずの自然が残っている上に交通も便利なため、日帰り旅行にはぴったりだ。

 仁川市が主管する仁川シティーツアーを利用すれば、手軽に船着き場まで行くことができる。仁川シティーツアーの空港コースは、松島新都市内のトゥモローシティーより、毎日午前11時から1時間間隔で1日8本運行している。

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