■ドラマも「音楽」で自己実現

 ドラマでも、音楽や歌はさえない現実から脱出し、夢を実現する「ツール(道具)」になった。「韓国中年女性の成長ストーリー」とも言えるSBSの月火ドラマ『私は伝説だ』のヒロイン、チョン・ソルヒ(キム・ジョンウン)は、冷たい有名弁護士の夫に離婚宣言し、セレブ妻という特権を捨て、バンドでマイクを握る。女子高時代、一緒にバンドをしていた同級生たちをかき集め、クラブを転々としているうちに、若者の街・弘益大学通りで「カムバック・マドンナ・ライブ」を成功させ、涙ぐむ。

 クラブを舞台にしたMBCの週末ドラマ『グロリア』も、息の詰まるような現実にがんじがらめになっていた30代のヒロインの成長を「歌手になること」を通じ描いている。知的障害を持つ姉を養い、新聞配達員や宅配便職員など職を転々としていた「みすぼらしい」ナ・ジンジン(ペ・ドゥナ)は、ひょんなことからクラブのステージにボーカルとして立ち、音楽の魅力にすっかりはまる。そして、ねたみやライバルといった数々の試練を乗り越え、メーンボーカルとして成長していく姿が描かれる。

 バラエティー番組の『男の資格』も『スーパースターK』も、表面的には「歌手」を選ぶものだが、それを通し伝えようとしているのは「夢の実現」というメッセージだ。さまざまな事情を抱え上京してきた歌手志望者たちは、著名な審査員たちのダメ出しやつらいトレーニングに耐え、優勝(または受賞)を目指す。

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