「大きな公園は都会的な要素も持ち合わせていなければならない」

 これは、世界の大都市を研究した作家兼環境運動家、ジェーン・ジェイコブズの言葉だ。「都市と公園の連携が活力を保つためには、強い吸引力を持つ境界部分の活動が必要となる。米ニューヨークのセントラルパークは、周辺地域を最大限活用した良い例」と説明した。

 ニューヨークのマンハッタンにある都心の公園セントラルパークは、1平方キロにわたる芝生と0.6平方キロの湖に、2万6000本ものさまざまな木々が植えられ、砂漠の中のオアシスのような空間となっている。現在は年間2500万人が訪れる、世界で最も有名な都市公園だ。

 韓国でこのセントラルパークに匹敵する存在といえば、ソウルの南山。人為的に作られた都市公園のセントラルパークとは違い、南山はソウルの土台となった原生の自然だ。

 2.9平方キロの広さを誇る南山には、年間1200万人が訪れる。世界的に、南山ほど大きい山を持つ大都市は珍しい。南山には2.45平方キロの原生林が広がり、南山の象徴である松をはじめ、105万本以上の木が生い茂っている。これらの木々が1年間に発する酸素の発生量は、大人約1300人が1年間に呼吸する量に相当する。

 南山は1970年代後半まで、ほとんど人の手が加えられていない未開拓の山だった。62年から運行を開始したケーブルカーは、南山を代表する施設だった。

 80年代に入ると、南山は人々にとって退屈な場所となった。南山タワーも、ソウルに遊びに来た観光客以外は見向きもしなくなった。さらに、南山には国家安全企画部(現・国家情報院)や首都警備司令部など、権威的な施設があったため、暗く孤立したイメージを持たれていた。



 このような南山が、90年代に入ると徐々に脚光を浴び始めた。ソウル市は91年、南山を活性化させるための企画に乗り出し、92年に同企画の名称を「南山を美しく」に変更した。単純な開発や整備といったレベルではなく、歴史や文化、生態、市民の参加までを含めた初めての試みだった。94年には40億ウォン(現在のレートで約3億4000万円、以下同)の費用をかけて、外国人用マンションを買い取り、市民の前で爆破解体作業を行った。96年には安全企画部や首都警備司令部もほかの地域に移転した。

 20年間、少しずつ変化してきた南山は昨年3月、「南山ルネッサンス事業」をきっかけに大きくリニューアルした。ソウル市は昨年、3号トンネルの入り口側に傾斜型のエレベーターを設置し、南山ケーブルカーも38人乗りから48人乗りのゴンドラに変えた。また、既存の6.5キロの散策路を整備し、7.3キロの歩道に拡張した。

 4月15日からは、南山韓屋村から北側散策路(1.1キロ)、奨忠地区から北側散策路(1.5キロ)までを全長2.6キロの小川が流れている。雨水や渓谷の水以外にも、地下鉄の線路から地下水を引き、1日100トンの水がいつでも流れるよう整備された。



 2011年3月からは南山循環バスを、環境に優しい電気バスに変え運行する予定だ。

 また、2012年までにソウル市は、歩行者と車のの通行を円滑にするため、明洞・忠武路の交通システムと南山へのアクセスを大幅に改善する方針だ。さらに、道路を渡らずに明洞から南山まで行くことができるよう、歩行者専用のグリーンゾーンも設ける計画だ。

 ソウル市の南山ルネッサンス担当者は、「ソウル市民だけでなく、国内外から1日平均5000人の観光客が南山を訪れている」と説明した。

 詳しい情報は、南山ルネッサンス(http://namsan.seoul.go.kr/)、または南山ルネッサンスのブログ(http://blog.naver.com/namsanstory)でもチェックすることができる。

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